ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1978年(1)

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    1978年



     修也は退屈しきっていた。「幼稚園」という生活は、修也に「社会性」とはなんなのかを一年かけて叩き込んでいたが、それは修也にとっては、生きていくために折り合いをつけねばならない「面白くもなんともない、むしろつらいだけのゲーム」の煩瑣なルールブックに過ぎなかった。

     修也は「だらしのない存在」として周囲から見られていた。修也にしてみれば、だからなんだ、である。本を開き、ブロックを重ね、ときには落書きなどをし、修也は自分自身のルールに従い自分自身のゲームを遊んでいた。

     それで自分は楽しい、ということが、他の人間にはどうにも理解しがたいことだ、と、修也が悟るには長い時間が必要だった。

     例えば……スイミングスクールで、初めて泳ぎを習ったとき。プールには浅いプールと深いプールがあった。まず、浅いプールで水に親しんでから、深いプールに移って泳ぎの初歩を習う。ごく当たり前の話である。

     だが、修也はそれが理解できなかった。浅いプールで自適して楽しいのに、どうしてわざわざ深いプールに行かなければならないのか?

     幼稚園児の修也は移動を拒否し、その他全員が深いプールに移動した後も、ただ一人、浅いプールで飽きずに遊んでいた。

     次の週から修也はその水泳教室に通わなくていいことになった。「楽しいのになぜだろう」と修也は思った。背後で親がどれほど頭を下げなければならなかったかに修也が気付くのには実に二十年以上を必要とすることになるが、それは別の話である。

     テレビや本や紙芝居は、たしかに修也を楽しませたが、それはまったく別なことも修也に教えた。

    「世の中のルールは複雑かつ理解不能なもので、どんな目的であろうとも、すべての行動は必然的に失敗し、行動者は再起不能なまでの肉体的、精神的、社会的な傷を負って破綻する」

     という教訓である。

     教訓が正しいことは毎日の生活で実証されていた。

     傷を負ううちに、修也は傷を恐れるようになっていった。何かをしようとすると常に最悪の形で自分が罰を受け傷を受ける可能性が頭に浮かぶのだ。それならば、なにもしないでいたほうがいい。

     そして修也はなにもしない、だらしのないままの幼稚園児として生活を続けていた。

     そんな中、「あれ」が突如として現れた。テレビのニュースに映る「あれ」を、修也は食い入るように眺め、すぐにでも「あれ」と戦えると思うだけで、胸が高鳴った。

     スペース・インベーダーの登場である。
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    ~ Comment ~

    Re: フラメントさん

    水泳はスイミングスクールに5年間くらい通わされましたから人並みには泳げますが、土浦に引っ込んでからこの20数年泳いでいないってどういうことよであります。暑い夏など、蛇の生殺しや(^^;)

    水泳もだめww

    今でも辛うじて浮くことと

    プールで20メートルくらい進むくらいw

    海や水遊びなど 大人になってから行ったことありませんw

    Re: 椿さん

    賢いんじゃありません。

    小賢しいだけ(^_^;)

    それがわかるまでに四十年かかった。

    でもこの小賢しさ、間違ってはいないんだよなあ。

    Re: LandMさん

    ゲームってものは楽しむためにやるもんで、苦しむためにやるものではないです! 
    ……って歌丸さんがいってました。
    ウソです。(^_^;)

    NoTitle

    修也くん、この年でそれに気付いたなら賢い子だなあ。
    面白くない、つまらないだけのゲーム……
    ゲームだということに気付かずに生きられる人もいるのかもしれないし、面白くするのがゲームだと思う人もいるかもしれませんが、初期スペックと運がかなり結果を左右するから厳しいですね。
    あ、あと課金か(笑)

    NoTitle

    確かに人生そのものがゲームであり、
    結構無理ゲーなところがありますからねえ。
    これほど精密で圧迫感のあるゲームもない。
    社会派ゲームですね。
    それにゲームオーバーすると生きていけないという・・・結構なきついゲームですね。。。
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