映画の感想
「チップス先生さようなら」(1939年版)見た
今月のブログDEロードショーは「ファミリー映画」だそうである。なにかないかとブックオフの百均棚を探していたら、このDVDがあった。そういや中学のころヒルトンの原作を読んだけど、おだやかでけっこう笑った小説だったな、と買うことにした。ストーリーの細かいことは忘れているのでさらに好都合である。
というわけで見た。
なんというか滋味豊かな映画であった。主役のチップス先生を演じるのはロバート・ドーナットであるが、この作品でアカデミー主演男優賞を受賞している。まあそうだろうな、とも思う。当時34歳で、20歳の若い新任教師だったところから83歳で亡くなるシーンまでを演じきった演技力はすごい。そもそも映画の半分くらいはすでに年老いた状態なのだから、すごい老けメイクである。持病の喘息で早逝したのがまことに惜しい。
チップスの妻となるキャシーを演じたグリア・ガースンも、後にアカデミー主演女優賞やゴールデングローブ賞を獲ることになる大女優なのだが、この映画ではまだ新人である。そしてこのキャシーという人ができた奥さんで、規律重視一筋でやってきたため生徒に憎悪されていたチップスのほんとうの心を見抜いて、ユーモアと寛容で生徒に接するように勧め、チップスを学校になくてはならない人気者の名物先生にしていくのだ。心が洗われるようないい人なんだよなあ。この奥さんによりチップスが変わっていく過程はこの映画の前半の見どころである。この映画見て、グリア・ガースンを嫌いになる人がいたら見てみたい。
チップスの生徒たちも、チップスの半生を描くこの設定を逆手に取り、うまいこと子役を配している。60年も教師をやっているという設定だから、同じ子役が、「成長した子役の子や孫」として再登場してくるのだ。最初は混乱するが、大丈夫だすぐに慣れる。「一族」とつきあっているみたいで見ていると楽しくなってくる。
そして驚いたのが後半、年老いたチップスが引退し、のんびりとした生活に移ってからである。第一次世界大戦が始まるのだ。教師が志願して戦地へ赴き、その穴埋めとして引退したチップスが代理の校長として招聘される。チップスはユーモアと寛容で校長としての責務を果たしていくのだが、そこからがもうなんというか。
戦地からの広報を読み上げる、という形で、これまで教えてきた生徒や同僚たちがばたばた死んでいくのを突きつけられるのだ。これがきつい。前半で子供たちの悪ガキぶりがこれでもかとばかり描かれているので、「ああ、こいつはたしかこんな悪ガキだった」とか「こいつも死んだのか」とかもう聞いていてつらい。淡々としているのがかえって効果を上げている。なにしろ第一次大戦は4年も続いて、一日に一万人の割合で死んでいったような大戦争なのだ。
ツェッペリン飛行船によるドイツ軍の空爆の中でも授業は行われ、そんな中でもチップスはユーモアを忘れない。生徒にラテン語の一節を訳させるシーンなど思わず笑ってしまった。しかしそんな中でも人は死んでいくことを考えると、反戦映画を撮るつもりで撮ったのだとしたら大成功である。
派手なVFXだのやかましい絶叫だのを使わなくても、面白い映画は撮れるという見本みたいな作品。見終わった後、なんともいい気持ちになれる「うれしい佳作」として勧めたい作品であった。
しかしこのDVDが108円だからなあ。どこかぶっ壊れているんじゃないのか日本、と思わぬでもない。
というわけで見た。
なんというか滋味豊かな映画であった。主役のチップス先生を演じるのはロバート・ドーナットであるが、この作品でアカデミー主演男優賞を受賞している。まあそうだろうな、とも思う。当時34歳で、20歳の若い新任教師だったところから83歳で亡くなるシーンまでを演じきった演技力はすごい。そもそも映画の半分くらいはすでに年老いた状態なのだから、すごい老けメイクである。持病の喘息で早逝したのがまことに惜しい。
チップスの妻となるキャシーを演じたグリア・ガースンも、後にアカデミー主演女優賞やゴールデングローブ賞を獲ることになる大女優なのだが、この映画ではまだ新人である。そしてこのキャシーという人ができた奥さんで、規律重視一筋でやってきたため生徒に憎悪されていたチップスのほんとうの心を見抜いて、ユーモアと寛容で生徒に接するように勧め、チップスを学校になくてはならない人気者の名物先生にしていくのだ。心が洗われるようないい人なんだよなあ。この奥さんによりチップスが変わっていく過程はこの映画の前半の見どころである。この映画見て、グリア・ガースンを嫌いになる人がいたら見てみたい。
チップスの生徒たちも、チップスの半生を描くこの設定を逆手に取り、うまいこと子役を配している。60年も教師をやっているという設定だから、同じ子役が、「成長した子役の子や孫」として再登場してくるのだ。最初は混乱するが、大丈夫だすぐに慣れる。「一族」とつきあっているみたいで見ていると楽しくなってくる。
そして驚いたのが後半、年老いたチップスが引退し、のんびりとした生活に移ってからである。第一次世界大戦が始まるのだ。教師が志願して戦地へ赴き、その穴埋めとして引退したチップスが代理の校長として招聘される。チップスはユーモアと寛容で校長としての責務を果たしていくのだが、そこからがもうなんというか。
戦地からの広報を読み上げる、という形で、これまで教えてきた生徒や同僚たちがばたばた死んでいくのを突きつけられるのだ。これがきつい。前半で子供たちの悪ガキぶりがこれでもかとばかり描かれているので、「ああ、こいつはたしかこんな悪ガキだった」とか「こいつも死んだのか」とかもう聞いていてつらい。淡々としているのがかえって効果を上げている。なにしろ第一次大戦は4年も続いて、一日に一万人の割合で死んでいったような大戦争なのだ。
ツェッペリン飛行船によるドイツ軍の空爆の中でも授業は行われ、そんな中でもチップスはユーモアを忘れない。生徒にラテン語の一節を訳させるシーンなど思わず笑ってしまった。しかしそんな中でも人は死んでいくことを考えると、反戦映画を撮るつもりで撮ったのだとしたら大成功である。
派手なVFXだのやかましい絶叫だのを使わなくても、面白い映画は撮れるという見本みたいな作品。見終わった後、なんともいい気持ちになれる「うれしい佳作」として勧めたい作品であった。
しかしこのDVDが108円だからなあ。どこかぶっ壊れているんじゃないのか日本、と思わぬでもない。
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子役の使い方
はおっしゃる通り上手かったですよね~。子供に孫に、チップス先生が一族を長年見守ってきたことが伝わってきて、最後の「子供ならいたよ、何千人も」というセリフも効いてきます。
教え子たちや同僚の訃報を読む下りは涙なくしては見られません。実際にチップス先生のような思いをした教師はたくさんいたんでしょうね…。
今回観られて、ポールさんとお話しできて本当に良かったです♪
教え子たちや同僚の訃報を読む下りは涙なくしては見られません。実際にチップス先生のような思いをした教師はたくさんいたんでしょうね…。
今回観られて、ポールさんとお話しできて本当に良かったです♪
Re: miss.keyさん
いや、この108円っての、レンタル代じゃないから(^^;)
中古DVDの販売価格だから(^^;)
土浦の商店街はシャッターがばりばり下りてます。しかしそんな中でも頑張っている大衆食堂とかありまして、そこらへんを順次食べ歩きたいものだと思っております(^^)
中古DVDの販売価格だから(^^;)
土浦の商店街はシャッターがばりばり下りてます。しかしそんな中でも頑張っている大衆食堂とかありまして、そこらへんを順次食べ歩きたいものだと思っております(^^)
まだ良いほう
七泊八日で70円とか、それ商売になるん?と言うレベル。店は次々シャッターを下ろしている。土浦の商店街、まだ大丈夫?
Re: 椿さん
わたしも昔読んで以来ですから。
第一次大戦のくだりなんかすっかり忘れてましたし(;・д・)
読み直すには体力がなあ。
第一次大戦のくだりなんかすっかり忘れてましたし(;・д・)
読み直すには体力がなあ。
Re: 宵乃さん
オトゥール版はミュージカルだそうですね。
見てみたいけれどやっぱり入手困難なんだろうなあ。
TSUTAYAの会員になろうか迷ってます。在庫検索しても面白そうな映画が……。(^_^;)
見てみたいけれどやっぱり入手困難なんだろうなあ。
TSUTAYAの会員になろうか迷ってます。在庫検索しても面白そうな映画が……。(^_^;)
NoTitle
原作は確か若いころ読みましたが、あんまり印象に残ってない……むしろ淡々とした印象だった気が。
気になる! 古本屋にないか探してみよう。図書館まで足をのばそうか?
気になる! 古本屋にないか探してみよう。図書館まで足をのばそうか?
ピーター・オトゥール版なら観た事があります
>同じ子役が、「成長した子役の子や孫」として再登場してくるのだ。
これは面白いですね。私が観たのではどうだったかな?
顔を覚える苦労が減るし、ホント先生視点で一族と付き合ってる気分になれそうです。
しかし、後半はこの子たちが戦争で…結構重い話しだったんですね。泣けたのは覚えていたものの、もうストーリーはすっかり忘れていて。
いつか機会があったらロバート・ドーナット版も観てみたいです。
今回もご参加ありがとうございました♪
これは面白いですね。私が観たのではどうだったかな?
顔を覚える苦労が減るし、ホント先生視点で一族と付き合ってる気分になれそうです。
しかし、後半はこの子たちが戦争で…結構重い話しだったんですね。泣けたのは覚えていたものの、もうストーリーはすっかり忘れていて。
いつか機会があったらロバート・ドーナット版も観てみたいです。
今回もご参加ありがとうございました♪
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Re: 宵乃さん
訃報のシーンは、淡々としているのが、かえって恐ろしいですよね。「現実」としてのしかかって来るし、現に当時の欧米人には現実だったわけですし。大ざっぱにいって、あの戦争では一日に一万人くらいの割合で戦死者が出ていますから……。
そしてこの映画が封切られた翌年の1940年12月8日に真珠湾があるわけで、そんな緊迫した中でロバート・ドーナットに主演男優賞のオスカーを渡した米アカデミーはなんだかんだいってやっぱり根性が座っていると思うであります。ちなみにロバート・ドーナットに負けて主演男優賞で三位に終わったのが「風と共に去りぬ」でレット・バトラーをやった誰でも知ってるあの人だという(^_^;)