ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1978年(3)

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     修也は熱中した。修也はまだ知らなかったが、アブストラクトゲームであり、完全情報ゼロサムゲームというタイプのゲームである。相手の状況も自分の状況も完全にわかっており、自分が有利になっただけ相手が不利になり、相手が有利になるとそれは自分の不利になるゲームなのだ。

     つまり、負けるといいわけのしようのないゲームである。それは修也の「負けず嫌い」な側面を刺激してやまなかった。

     だが。それが、修也の性格に致命的な欠陥をもたらすことになる。

     修也の父親はこの手のゲームでは手を抜かない人間だった。よほどの神童でもなければ、大人に幼児が勝てるわけがない。

     負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、もう嫌になるほど負けた結果、「自分は父親に対してなにをやってもかなわない」という結論に達してしまったのである。

     成長すれば、とか、鍛錬すれば、とかいう考え方もあったであろう。修也の思考はそちらには向かわなかった。代わりに、「父親がカバーしている範囲外のゲームを見つけ、そこで勝利する以外に、自分が父親に勝てる方法などあるわけがない」という思い込みが、修也の心には形成されていく。

     フロイトだったら喜んで症例にしたであろうが、今の修也には自分が病的な人間だという自覚はない。

     ただ盲目的に石をひっくり返し、ひっくり返し、ひっくり返し……そして負け続けるだけだった。

     修也に必要だったのは、同程度の頭脳と同程度の技量と、文句をいわずどこまでもゲームにつきあってくれる友人だったろう。あまりにも贅沢な望みだったが、後に人類はそれを手に入れることになる。いついかなる時でも遊び相手を務めてくれる便利な『友人』、家庭用ゲーム機とパソコンの時代は、もう、すぐそこにまで来ていた。そして、修也の頭脳も、年相応に成長していくのだった。

     小学校に上がるまでに、修也は人生ゲームに触れ、積み将棋に触れ、回り将棋に触れ、七並べに触れ、様々なすごろくに触れた。すごろくやトランプで修也の特にお気に入りだったのは『ウルトラシリーズ』の怪獣やウルトラ戦士が描かれているものだった。時おり一家で遊びに行く親戚の家で、従兄たちが遊び飽き、読み飽きてしまった小学館の学習雑誌、そこから拝借してきたものなどである。そこに使われていた現実のごときスチール写真は、遊ぶ修也の心を、本当にウルトラ兄弟とともに怪獣と戦っているかのように錯覚させるのだった。そしてかかる時間の長短はどうあれ、修也は勝つのであった。最下位でも、「ゴール」に到達したら、それだけで修也は満足だった。友達には負けても、怪獣を倒して地球の平和を守ったのだから!

     先にゴールした友達が自分をどう思っているかに、修也はあまりにも鈍感すぎた。
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    ~ Comment ~

    Re: フラメントさん

    テレビゲームはファミコンを除けばやはり「あれ」がいちばんの功労者でしょう。「あれ」の精神を理解しなかったから他の会社は任天堂に膝を屈したのだと思われます。

    衝撃的だったもんなあ、「あれ」……。

    ボクも一通りやりましたが

    段々とボッチになっていったので 相手がおらず

    一人でできる TVゲームにのめりこんでいきましたww

    ウルトラマンは世代なのでよく見てました

    この間 安いDVDを買ったりしてww

    Re: 椿さん

    子供のころは誰だってかわいいですよ(^_^)

    これがどうしようもないズブズブなゲームオタクになっていくのをどうぞご期待ください(笑)

    NoTitle

    修也くんがめちゃ可愛いんですが。
    あーお父さん……。それやられると大概は子供の心折れますよね(^-^; かといって下手に手加減されても子供歪みますけど。
    子育て難しい(一番の無理ゲーかもしれないと今思いました)

    Re: blackoutさん

    オセロは、6×6盤までは必勝手順が解析されているそうですね。

    アルファ碁の活躍とか見ていると、あれよりはるかにパターンの少ない8×8盤でも必勝手順が解明される日も近いかもしれません。

    昔、月刊アスキーで読んだギャグですが、

    「コンピュータオセロです。 先手か後手かを選んでください」
    「後手」
    「思考中……読み切りました。わたしの勝ちです。もう一度挑戦しますか?(y/n)」

    近い将来ギャグでなくなるかも(^^;)

    NoTitle

    まぁ、めんどくさいっていう以外にも、その手のコツは、教えてすぐに会得できるわけでもない、っていう意味合いもあったかもしれませんね

    ただいかんせん、人間相手のゲームだと、対処法はなきに等しいですからね(汗)

    オセロだと、いかに自分が先に4隅を取るかが勝敗を分けますし、当然相手も同じことを考えてるわけで(汗)

    Re: ダメ子さん

    今のわたしには、修也くんの父親の気持ちがよくわかります。

    「物わかりの悪いやつにコツを教えても疲れるだけでなんにもならず、ただめんどくさいだけ」

    と考えたのだろうと思います。

    あくまでもこの小説はフィクションです(^^)

    Re: LandMさん

    それができたら苦労はしないのが修也くんみたいな人間で(^^;)

    NoTitle

    そんなにオセロが強いならコツぐらい教えてくれればいいのに
    でもオセロが強いとそれはそれで友達をなくしそうにも…

    NoTitle

    楽しむのが一番だとは思いますけどね。
    どうあれ、子供は良くも悪くも無邪気ですからね。
    人とのルールの中で、遊びを覚えるのも発達課題で大切なことではありますよね。
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