東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ34位 オリエント急行の殺人 アガサ・クリスティ

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     誰もが認めるであろう掟破りもいいところの作品。明晰な推理によって真相に到達し事件を解決するポアロもポアロだが、小説を書いた作者も作者だ。よくもまあこんなバカな趣向とアイデアを考えつけるものである。クリスティおばさん、いったいどんな脳みそしてるんだ。

     結末を知らない人には、「とにかく読め」でいいのだが、おおかたのミステリファンには、本を渉猟するうちどこからともなく「トリックとオチ」が聞こえてきて、せっかくの読書が台無しになってしまうのが名作のつらいところ。「アクロイド殺し」もそうだが、「トリックとオチ」を知っていてなおも面白いのがクリスティのうますぎて嫌いなところだ。無論、知らないにこしたことはないので、未読のかたは「とにかく読め」である。

     というわけでどうでもいいことを書く。デヴィッド・スーシェ主演のテレビシリーズ「名探偵ポワロ」で、いちばん楽しみにしていた作品が実はこれだった。なにせオリエント急行である。異国情緒満載。映画でも定番。テレビシリーズでどこまでできるか、期待しないわけがない。

     ところがいつまで経ってもいつまで経っても放送しない。予算がないからだろうか、でもエジプト舞台の作品はやってたし……などと首をひねっていたが、長いこと待たされたあげく、ようやく見ることが出来た。

     見終わって、なるほど、と思った。これはこの段階でないと放送できないわけである。第一話の時点で、ここまで考えてシリーズを作っていたとしたら、製作サイドの構成の巧みさと、なにがあろうとどれだけかかろうと、必ず全作品映像化するぞ、という不屈の執念にただ脱帽だ。原典のある部分を意識的に改変して、この作品自体をポアロの物語のいわばキーストーンみたいにしてしまうとは、天上にいるクリスティも納得の脚色ではないだろうか。

     うむむ。こう書いていると無性にクリスティが読みたくなってきた。行動範囲にある図書館は、なぜかクリスティに冷淡で、それほど置いてないのだが……本屋か……一冊千円くらいするし……買いだしたらまた家が本で……。

     電子書籍というやつは古本屋よりも恐ろしい存在だなあ。なにしろメモリやストレージに余裕があれば何冊でも買えるもんなあ。Kindleストアを見て思わずため息。金が貯まらないわけである。とほほ。
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    ~ Comment ~

    Re: こみさん

    そういうすれっからしのマニアのこみさんは、キャメロン・マケイブでも読んでなさい(笑)

    国書刊行会のあのシリーズは、トリックに飢えたミステリファンにはよだれがでるような傑作ぞろいです。「空のオベリスト」なんて最高ですね。すっかり騙されてしまいました。でもあれで満足するのはよほどの中毒者かもしれないなあ(^^;)

    ロバート・エイディーの「これが密室だ!」というアンソロジーもいいですよ。よくもまあこんなに変な作品をそろえたものだと驚くこと請け合い。マーテル「裸の壁」なんぞ怪作中の怪作ですね。わたしは好きだけど、みんなバカミスっていうんです(^^;)

    とりあえず贈った「怪盗ニック」はトリックと趣向の宝庫です。お昼休みに軽く一篇読めば、その日一日ハッピーですよ(^^)

    Re: 椿さん

    土浦市立図書館には利用者サービスのつもりか、「刑事コロンボ」と「名探偵ポワロ」が全巻おいてあります。

    ちびちび見てます。やっぱり面白いなあクリスティおばさん。

    Re: えぐさん

    わたしはドラマだと生々しくてダメなほうですね。

    見れば面白いのでしょうが、視聴者にストレスを加えて楽しんでいるとしか思えない演出、見ててつらいです。妙なところで絶叫したり。

    メンタルが豆腐なんでしょうね。(^^;)

    Re: 面白半分さん

    クリスティおばさんもリアリティに乏しいことなど百も承知ですよ(^^)

    リアリティを踏み越えた徹底的に造り物の世界であることこそが、黄金時代のゲーム性の楽しいところなんですから。

    マケイブ「編集室の床に落ちた顔」まで行ってしまうと行き過ぎですけど……。

    Re: blackoutさん

    ミスターブラウンは、「茶色い服の男」ですね。ノン・シリーズ作品です。

    まだ読んだことはないのですが、やっぱり面白いんだろうな。あの人を読みだすとどこまでもずぶずぶ泥沼にはまっていきそうで。

    Re: 山西 サキさん

    原作ではもっと明るかったですよね。ポアロさんも犯人への同情を隠そうともしてませんでしたし。

    しかしあの真相は……クリスティおばさん、天才だとしか呼べんよなあ。

    Re: miss.keyさん

    あの葛藤ぶりはナイス改変だと思います。それによって最終回の展開に無理がなくなりました。最初からそれを狙ってストーリー構成していたなら、制作会社の不屈の根性はすごいものがりますねえ。だって途中で番組が打ち切られたらその試みには誰も気づいてくれないわけですから……。

    NoTitle

    私が初めて読んだ翻訳ミステリーです。
    オリエント、アクロイド、ABCを無垢で読めた幸せ。
    汚れた大人になってしまったワタシは、もうあの衝撃を楽しむことはできないのね。

    NoTitle

    「アクロイド~」もそうですけど、クリスティは他の人だったらばかばかしくて書けないと思うようなネタを平気で書いちゃうところがあるのですよね。

    ドラマ版、好きだったのですが見る時間がなくて途中で脱落してしまい、後期は全然見ていないのです(-_-;)
    見てればよかったな~。

    NoTitle

    2015年1月11日と12日の二夜連続で
    クリスティー叔母さんの役を野村萬斎さんが「名探偵 勝呂武尊」としてやっていましたよ。
    今年だったかなぁ~再放送もされてました。
    昔映画の方を見たことがありました。
    私はどうも本より映画で見たほうが楽しめます(^^;)
    本は…活字を見ているとどうも眠くなってしまって…
    ダメですねぇ~トホホ


    NoTitle

    テレビでの映画(アルバート・フィニーのやつ)を先に見ました。
    ミステリとしての驚きとは別に
    そこまで主のために忠誠をつくすものなのか、というところにも驚きました。
    私は当時より人間が出来てないようです。

    NoTitle

    クリスティおばさんは確かにとんでもないオバハンですな(汗)

    オリエントもそうですが、ABCとか、あとタイトル忘れたんですが、ミスターブラウンが出てくるやつとか

    オリエントは、だいぶ前に読んだので記憶が曖昧ですが、やる側にもやられる側にも、それ相応の理由があった気がしました

    そういうのを描けるのも、クリスティおばさんがスゴイと言われる所以かもですね

    NoTitle

    この作品、幸いなことに全く予備知識無しで読みましたが、唖然としましたね。
    ポアロが2つの回答を示したのは、やっぱり葛藤があったんでしょう。

    ポアロの葛藤が秀逸でした

     ドラマの方はポアロさんが葛藤の末に目を瞑ると言うラストでした。一方、原作はサラッと解決しましたよと言って終わり。どっちが良いかと言えばドラマの最後の方が好きです。原作のビジネスライクな態度も悪くはないのですがね、やはり元警察。法を守ってきた人間ですから少しは悩んだ方がいいだろー。と思ったものであります。

    Re: 宵乃さん

    トリュフォー監督ですか。不勉強につき未見ですが面白そうですね。

    さっそくツタヤかゲオの宅配サービスに登録して借りよう……と思ったのですが、スマホは家族割していて実家が払っているし、かといってクレジットカードも持ってないし!

    しかたがないので近所のゲオになかったら、通販で買おうと思っています。千円ちょっとなので。今は送料を無料にするための抱き合わせになにを買うか検討中……(^^;)

    NoTitle

    「オリエント急行殺人事件」ですか~。今、ポワロさんの再放送を最初から観ているところですが、仲間に囲まれている時と、この事件の時ではやはり雰囲気がかなり違いますよね。
    原作は読んだか読んでないかも覚えていないです。結構改変してあったとは。本当にドラマスタッフに恵まれた作品だと思います。

    ところで、6月もブログDEロードショーを開催します。
    作品は『映画に愛をこめて アメリカの夜』
    問題だらけのスタッフたちを抱えて始まった、映画撮影の風景を描いたフランソワ・トリュフォー監督の作品です。
    よかったらまた一緒に映画を楽しみましょう♪
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