吸血鬼を吊るせ 2-23

２３

「早かったじゃねえか」
　ミラにもたれてペプシ・ツイストを飲んでいた坂本開次は、わたしたちに向かって藍色の缶を掲げて見せた。
「まあね」
　わたしは遥美奈の前でビートルのドアを開けた。
「遥さん、どうですか。ミラ並みに狭いですが」
　遥美奈は無言で助手席に乗り込んだ。
「目的は果たせたのか、桐野」
「イエスかつノーだ。求めていた情報は手に入ったが、それが本当に目的に対して役に立つ情報なのかどうかはわからない」
「まだ話してくれる気はねえのか」
「警察が野村香さんを見つけたら喜んで話す」
「確かに聞いたぞ」
　わたしは運転席に乗り込み、キイを回した。そのそばに坂元開次が寄って来る。
「どこへ行く」
「ふられに」
「ついて行っていいだろ」
「遥さん？」
「そういうことになると思っていました」
「いいんだな」
　そういって、坂元開次はミラに乗り込んだ。わたしはため息をつき、やつがエンジンをかけるまで待った。