東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ37位 あなたに似た人 ロアルド・ダール

     ←閑話休題1 →1980年(1)
     どうでもいいことから恐るべきサスペンスを生み出す。これをやり遂げるのはミステリにとどまらず、小説を書こうとするものの永遠の夢であり目標である。少なくともわたしはそうだ。そしてこの作品集ほど、そのサスペンス、足の裏をとろ火であぶられているかのような濃密な時間を味わわせてくれるものもほかにない。だって名作といわれている「味」なんて、単に酒飲むだけの話じゃないか。「南から来た男」なんざ、ライターがつくかつかないか、それだけの話である。たったそれだけのことに、「ギャンブル」という要素をからめるだけで、あんなおっかない世界が作れてしまうのだから、ギャンブルというものは怖いものである。

     ダールのこの本を評するに、「奇妙な味」という文句がよく使われている。奇妙な味、というよりは、あっさり目な素材なのにおそろしく濃厚でとろみまでついている肉料理のソースだ。そこにシェフのアイデアがひとつ加われば、その味は奇妙ではなくてまさに絶妙となる。

     「味」「おとなしい凶器」「南から来た男」以外は弱い、という意見もあるが、わからなくもないけれど、それはこの作品集について失礼ないいかただと思う。ダールのほかに、誰が「列車のなかで相席になった男に自己紹介する」だけの話をここまでサスペンスフルに書けるやつがいるというんだ!

     わたしが図書館で借りて読んだ本は、早川文庫の旧版だが、そこに書かれている解説は泣ける。特に児童文学がらみの、奥さんと子供たちとのエピソードは泣ける。で、涙をハンカチで押さえながらもっと詳しく知りたいとウィキペディアで検索したら、「ダールのひどい浮気癖のために奥さんがキレて離婚」って、こういうことがあるからどんなジャンルであれアーティストというのは油断ができない。もっともこれは奥さんのほうもそれなりに原因をこしらえていたとは思うけど。

     ティム・バートンで監督でついこのあいだ映画にもなった、児童文学史上に残る傑作として名高い「チョコレート工場の秘密」はまだ未読である。なにしろ、小学生のときに「名作」と聞かされて図書館で借りようとしたら、間違って大石真「チョコレート戦争」をつかんでしまい、ものすごく「権力」だの「世間」だの「戦争」だのがイヤになって、こんなひねた人間になってしまったトラウマが。いや、「チョコレート戦争」もいい作品なんだよ。社会派で。そういえば昔、社会派系統の児童文学に今思い出しても最低な作品があって、読んでいて本気で腹を立てたことがあったなあ。タイトルを晒してやろうかと思ったけれど、タイトルを忘れてしまった。幸福なのか不幸なのか。とほほ。
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    ~ Comment ~

    Re: limeさん

    血の季節、喜んでもらえたようで胸をなでおろしています。なんとなく、主人公の幼少年時代がlimeさんの登場人物のそれとよく似ているような気がしまして。さらに、それが現代の事件と幻想性を保ったままリンクする、というところにもlimeさんの最近のサスペンスホラーと似たものを感じましたし。それで、おすすめしたわけですが、もしつまらないなどということになったら責任を取って腹を切らねばならぬ! とまで思い詰めて(^^;)

    あの本の最初に書かれた「ひとつの真実」というのは、最終ページに出てきて弁護士を驚かせたたあの記事のことだろうと思います。そうだとしたら、小泉喜美子先生の掌の上で踊りっぱなしだったということだなあ、と、鮮やかな幕切れに喝采を……。

    信者を増やしたいのでlimeさんのレビューも読みたい(^^)

    長編ファンタジー、なんだろう。「指輪物語」ですか「エルリック・サーガ」ですか(←発想が古い男)

    NoTitle

    いや、小説を読むポールさんの姿勢はとっても純粋だと思います。わたしなんて、つい先入観で読む読まないを決めてしまうから。チョコレート工場・・・も、映画のジョニー・デップがどうも怖くて(笑)、それがトラウマできっと読まないと思うし。
    ポールさんは、ちゃんと読んでその評価を決めるから、純粋な読者さんです。

    あ、血の季節、読みました。とても雰囲気づくりと構成が素晴らしくて、ぐいぐいと引き込まれて行きました。あまりオカルトチックな展開になってほしくないと願いながら読んだのですが、そこは読者の想像力を掻き立てるに終始したのが嬉しかった。(最後のひと声もいいですよね!)
    時代背景もあって物語全体が物悲しく重厚でしたが、そこに夢見がちの子供の憧れや幻想、果ては狂気が混ざって、遊園地の廃墟から抜け出した後のような、不思議な読後感がありました。
    教えてくださって感謝です。
    いまちょっと、初めて長編ファンタジーを読み始めたのですが、さあ、最後まで楽しめるかなあ。レビューがすごく良いもんだから^^
    またお風呂読書、がんばります。

    Re: ひゃくさん

    この本は中高生のころ読みましたが、その年のガキが理解できる話じゃないですね。いい歳になった今読んで面白さを痛感してます(^^)

    NoTitle

    ダルビッシュじゃなかった、ダールの…、というか、ダールというとインド料理になっちゃうんで、ロアルト・ダールは、実は結構好きだったりします。
    といっても、読んだのは大学生の頃か、社会人になったばかりの頃なんで、内容を憶えているというよりは、好きだと思ったのを憶えている…、みたいな(笑)

    アマゾンとかで出てくるたび、読み返したいなーとは思うんですけど、短編って読むのメンドクサイんだよなーなんて(笑)
    そうして結局読まないままあの世行きっていうのも魂魄この世に留まっちゃいそうだからそのうち読みたいな!(爆)

    Re: かえるママ21さん

    「チョコレート戦争」は面白い児童文学ですよ。「ペンは剣よりも強し」を地で行く物語でした。

    でも現実はこうはいかないよなあ、と考えると暗澹としてくる作品でもあります……。

    someone like you

    ちょうどAdeleのsomeone like youを聴いてたところです。

    なんだか今日の記事は、面白かったです。
    社会派のかえるままとしては、「チョコレート戦争」が気になります。探してみよう。^^
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