東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ40位 黄金虫 エドガー・アラン・ポー

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     貴様ポーのことをなにも理解していないだろう! と怒られるかもしれないが、わたしがポーの作品中一番好きなのがこの「黄金虫」である。「モルグ街」の悪夢めいた世界よりも、「盗まれた手紙」のスライハンドマジックを思わせる鮮やかさよりも、この「黄金虫」の全編より立ちのぼる「ワクワク感」のほうがわたしには魅力的に映るのだ。

     もっとも、それは一度予備知識なしに読んで、どんな怪奇と恐怖が、とたっぷりとぞくぞくしてから、二度目に読んだときに抱くだろう感想ではある。怪奇小説として読んだ場合、狂気に陥った主人公ルグランが、ヒステリックな声で黒人の従僕に繰り返し命ずる「髑髏の左の目だ! 左の目だぞ!」というシーンなどスリルとサスペンスに満ち満ちている。こんなのポーしか書けん。

     で、あるからして、その後の論理的な謎解きが冴えに冴えて見える。真相としては、「モルグ街」や「盗まれた手紙」ほど先鋭的なものではないが、あれもこれも意味があったのか、と悟らされる快感はたまらないものがある。

     だから、その部分を先にネタ割れさせてしまう「東西ミステリーベスト100」の解説は「そりゃないだろう」と思うのだが、まあ、そこまで書かないとこの短編がミステリ界においてどういう位置づけにあるのかがまったくわからないというのも事実で、ああもどかしい。

     自分もブログに上げた作品のひとつで、この小説の露骨なまでのパロディをやった。わかってくれる人さえわかってくれれば、それでいい。個人的にも気に入っている作品なので、あえてタイトルは伏せておく。暇な人は探してほしい。

     わたしは小学生の時、ポーか、怖いのはやだなあ、でも図書館の推理小説、だいたい読んじゃったからなあ、と観念して読み、明晰そのもののような謎解きを読んでこの作品の大ファンになった。ある意味、小学生向けにリライトする作品としては、ポーではこれがいちばんかもしれない。「ハンス・プファアルの無類の冒険」を絵本にして小学生向けリライトした岩崎書店(「ハンス月へいく」1969年)なんていう例もあるが、やなせたかしが絵を描いていなければかなり怖いと思う。よりによって「黒猫」や「跳び蛙」や「陥穽と振子」まで小学生向けリライトしたあかね書房に至ってはなにをいったらいいか。ものすごく怖かったじゃないか!

     やっぱりわたしはポーについてなにもわかっていないのであろう……なあ……。
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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    おすすめですよ「陥穽と振子」。

    自分が拷問されている気になれるトラウマ案件です(^^;)

    NoTitle

    『黄金虫』面白かったですね!
    中学の時に読みましたが、この作品が一番印象に残っています。
    『黒猫』は……トラウマ案件……(-_-;)
    モルグ街は読んだはずなんですが思い出せないですね、面白かったのは覚えているのでまた読みたいです。

    Re: ひゃくさん

    青年時代のポーですか。借金背負って大学を追い出されたころかな、陸軍士官学校で上官にいじめられていたころかな。筆一本で生きようとして極貧生活に苦しんで毎日毎日四六時中酒浸りになっていたころかな(^^;)

    「こがねむし」と訳者はしたかったのかもしれませんが、たいていの人間はもったいぶって「おうごんちゅう」と重々しく読みます。「黄金蟲」となるとそうとしか読めんし(^^;)

    NoTitle

    ポーは…
    ポーは……

    あぁもしかして、読んでないかも。
    あぁ、でも、読んだような気も…
    うーん。
    確かなのは、何年か前に青年時代のポーが主人公のミステリ小説を読んだことかな!(笑)
    その後に読んだよな気もするし、読まなかった気もするなぁ…

    ちなみに、『黄金虫』は、おうごんちゅう?こがねむし?(笑)
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