ゲーマー!(長編小説・連載中)
1979年(5)
そして十二月二十五日の朝。いつものように目覚めた修也は、枕元に大きな箱を認めた。どきどきしながら包みを破り、中から出てきたのは……。
「学研のインベーダー」だった。
サンタさんの洞察力を持たぬ両親がそれを買ってきたのは、無理からぬことであった。「インベーダー」という単語は登録商標になっており、おもちゃ屋にあった電子ゲームの中で「インベーダー」を探そうとすると、商標の使用権を手に入れた「学研」の製品しかなかったからだ。
修也が落胆しなかったといったら嘘になる。やたらと大きな図体に、三列しかない単色の画面、二匹しか出てこないインベーダー、199点でストップしてしまうカウンター。
そしてなによりも、修也をがっかりさせたのは、「学研」の二文字だった。あの「学習」と「科学」を出しているまじめなところが作ったゲーム! 面白いわけがない! 修也は反射的にそう感じた。まだそうした言葉はないが、「ダサい」というのが正直な感想であった。
しかし文句は、実際に遊んでみてからいうものである。修也は寝床で、適当に付属の電池を入れ、スイッチを入れて、初級のモードで遊んでみた。
面白かった!
修也はすっかり興奮してしまった。
公平な目で見て、「学研のインベーダー」には「ミサイルベーダ―」を上回る点がいくつかあったことは事実である。まず、ミサイルベーダーがボタン式のコントローラーだったのに対し、学研のインベーダーはレバーでコントロールするようにできていた。どちらが操作性が上かは語るまでもないだろう。次に、修也は後で知ったことだが、ミサイルベーダーは、四列の移動ラインは存在したが、「インベーダーが四列縦隊で襲ってくる」わけではなかったのだ。画面上に登場するインベーダーは一匹だけであり、その点でも「学研のインベーダー」は優位を保っていた。
199点で終了してしまうゲーム自体も、かえってプラスに働いていた。勝つにしても負けるにしてもすぐに終わるため、軽く何度も遊ぶには適していたのである。
「学研のインベーダー」を手に入れた修也には、もうひとつどうしてもやってみたいことがあった。
クリスマス前に買ったコロコロコミックの「ゲームセンターあらし」にそれは載っていた。修也はそれを見たときの衝撃をまだ生々しく覚えていた。
……手が、手が、消えた!
驚愕する一平太やさとるが叫んだその言葉とともにあらしが見せた必殺技、「炎のコマ」! コンピュータの処理速度を超えてレバーを動かすことにより、自機が敵の攻撃をすり抜け、さらには瞬間移動するというゲームの秘技である。
「学研のインベーダー」だった。
サンタさんの洞察力を持たぬ両親がそれを買ってきたのは、無理からぬことであった。「インベーダー」という単語は登録商標になっており、おもちゃ屋にあった電子ゲームの中で「インベーダー」を探そうとすると、商標の使用権を手に入れた「学研」の製品しかなかったからだ。
修也が落胆しなかったといったら嘘になる。やたらと大きな図体に、三列しかない単色の画面、二匹しか出てこないインベーダー、199点でストップしてしまうカウンター。
そしてなによりも、修也をがっかりさせたのは、「学研」の二文字だった。あの「学習」と「科学」を出しているまじめなところが作ったゲーム! 面白いわけがない! 修也は反射的にそう感じた。まだそうした言葉はないが、「ダサい」というのが正直な感想であった。
しかし文句は、実際に遊んでみてからいうものである。修也は寝床で、適当に付属の電池を入れ、スイッチを入れて、初級のモードで遊んでみた。
面白かった!
修也はすっかり興奮してしまった。
公平な目で見て、「学研のインベーダー」には「ミサイルベーダ―」を上回る点がいくつかあったことは事実である。まず、ミサイルベーダーがボタン式のコントローラーだったのに対し、学研のインベーダーはレバーでコントロールするようにできていた。どちらが操作性が上かは語るまでもないだろう。次に、修也は後で知ったことだが、ミサイルベーダーは、四列の移動ラインは存在したが、「インベーダーが四列縦隊で襲ってくる」わけではなかったのだ。画面上に登場するインベーダーは一匹だけであり、その点でも「学研のインベーダー」は優位を保っていた。
199点で終了してしまうゲーム自体も、かえってプラスに働いていた。勝つにしても負けるにしてもすぐに終わるため、軽く何度も遊ぶには適していたのである。
「学研のインベーダー」を手に入れた修也には、もうひとつどうしてもやってみたいことがあった。
クリスマス前に買ったコロコロコミックの「ゲームセンターあらし」にそれは載っていた。修也はそれを見たときの衝撃をまだ生々しく覚えていた。
……手が、手が、消えた!
驚愕する一平太やさとるが叫んだその言葉とともにあらしが見せた必殺技、「炎のコマ」! コンピュータの処理速度を超えてレバーを動かすことにより、自機が敵の攻撃をすり抜け、さらには瞬間移動するというゲームの秘技である。
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Re: フラメントさん
小学館の学習雑誌は、それなりに読んでましたが、あるとき母方の実家の蔵で、昭和40年代半ばごろの「小学一年生」を見つけて読んで、そのボリュームと漫画の質量、さらに子供向けヒーロー番組のフォローのすさまじさに衝撃を受け、購読をやめてしまったであります。
特撮ファンのわたしにとってはそこがターニングポイントでしたねえ……。
特撮ファンのわたしにとってはそこがターニングポイントでしたねえ……。
Re: 鍵コメYさん
よろしくお願いします。
HDDレコーダで、「日本映画専門チャンネル」版を去年だかおととしだかに録画したので、それを見ないで消去する気にもなかなかなれず、という……。でも一人で見るのは怖い(笑)
HDDレコーダで、「日本映画専門チャンネル」版を去年だかおととしだかに録画したので、それを見ないで消去する気にもなかなかなれず、という……。でも一人で見るのは怖い(笑)
Re: LandMさん
LSIゲームの草分け的存在でしたな。翌年の「あれ」の登場とともに、LSIゲームは百花繚乱状態になるわけですが、それは後の話。
今にして思うと短い天下……。
今にして思うと短い天下……。
Re: 椿さん
逆をいえば「学研の」とついていたから親の財布も緩んだので、ビジネスとしては間違ってませんね(^^)
「科学}の内山安二先生の漫画と、「学習」の山根赤鬼先生の漫画が大好きで。コロコロの「名たんていカゲマン」の山根青鬼先生のマンガも面白かったなあ(^^)
「科学}の内山安二先生の漫画と、「学習」の山根赤鬼先生の漫画が大好きで。コロコロの「名たんていカゲマン」の山根青鬼先生のマンガも面白かったなあ(^^)
ゲームセンター嵐はゲームセンター荒しであった
あないな事したらゲーム機が壊れるやないか。レバーの壊れたアーケードゲームの多かった事多かった事(笑
NoTitle
ふうむ。学研も出していたのですね。
それは知らなかったのですが。
まあ、私が子どものころはどこもかしこもインベーダーがありましたからね。懐かしいですね。
\(◎o◎)/!
それは知らなかったのですが。
まあ、私が子どものころはどこもかしこもインベーダーがありましたからね。懐かしいですね。
\(◎o◎)/!
NoTitle
学研は何にでも『学研の』を付けるのをやめてくれたらもう少しカッコ良くなる気がします(^-^; あ、今もそうかは分かりませんけど。
「学習」と「科学」は買っていたけど結構面白かったな~。読み物と付録目当てでしたが(笑)
しかし修也くん……その技は練習しない方がいいぞ! きっと……
「学習」と「科学」は買っていたけど結構面白かったな~。読み物と付録目当てでしたが(笑)
しかし修也くん……その技は練習しない方がいいぞ! きっと……
- #17352 椿
- URL
- 2016.06/09 11:26
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Re: miss.keyさん
しかしここでの修也くんはまだ純情なのでありました(笑)