ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1979年(6)

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     学研のインベーダーは、三列の表示しかできなかったのは先ほど説明した通りである。しかも操作はレバー式。反応自体も良好であった。

     修也は自分にできる最大限の速さでレバーにかけた親指を左右に動かした。残像が見えるほどの速さで。別に不思議ではない。十円玉を二枚、指で挟んで素早く擦り合わせるだけでも、残像は見える。

     修也がレバーを左右に動かすスピードに反応して、画面上の砲台も左右に動いた。同じように残像を残して!

     修也は心が震えるほどに感激した。「炎のコマ」だ! ぼくは「炎のコマ」をやっている!

     ゲームシステムとしても、この「炎のコマ」は有効な手段だった。三列しかない画面ではあったが、画面上にミサイルは一列に一発ずつ、計三発まで表示可能であった。すなわち、「弾幕」を張ることができたのである。動きののろいインベーダーが、その「弾幕」から逃れることはめったにできなかった。

     面白いようにインベーダーは駆逐され、UFOは撃破された。

     朝食前までに、修也は初級ゲームで199点を取り、インベーダーに勝利をおさめることができた。散っていったインベーダーは修也の破壊衝動を満足させ、199点のスコアは修也の自尊心を満足させた。

     ゲームには、さらにモードがふたつあった。「中級」と「上級」である。

     朝食ができた、と母親が呼んでいた。修也は、わくわくしながら服を着がえ、台所へ駆け出していった。

     疑問がなかったわけではない。

    『どうして「炎のコマ」を使ったはずなのに敵の光線爆弾にやられてしまったんだろう……きっと、手を動かすスピードが遅かったからだ。もっと早く動かして、あらしの「炎のコマ」に近づければ、あんなインベーダーなんか!』

     その日は修也にとって最高のクリスマスだった。

     前日の残りのシャンメリーを飲み、どこか大人の仲間入りをした気分だった。シャンメリーだけではなく、インベーダーゲーム自体に、修也を幼稚園児的な気分から小学生に変えるだけの力があった。

     修也は思った。

     ぼくは小学生なんだぞ……インベーダーだって殺したんだぞ……UFOだって壊したんだぞ……虫捕りができないことがなんだ……そりゃぼくは虫が嫌いだ……だけど、虫はぼくを殺そうとして襲ってくるか? ぼくは、ぼくを殺そうとする敵と、正面から戦って、殺し返してやったんだぞ……。

     修也にとって、インベーダーゲームは「戦争」だった。誰にも迷惑のかからない、ロマンあふれる戦争。平和で幸せな戦争。修也にはそれだけでよかったのである。
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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    なんせシューティングゲームの元祖ですからねえ。いまだにアクションゲームはあれの呪縛から解放されていないのではとすら思います。

    まあインベーダー自体は「ギャラクシアン」の登場とともに駆逐されていくわけでありますが、21世紀になってもあの「インベーダー」の筐体が稼働しているゲーセンに行くとちょっと感動を覚えますね。

    Re: 椿さん

    昔のゲーム機だからです。なにせ光電管方式で、「左」と「右」と「真ん中」の三列しか存在しないときている(^^;)

    夢中になってやりすぎた結果どうなったかですが、レバーは折れることはありませんでした(笑)

    ぼっちプレイはわたしもよくやりましたねえ。パーティゲームのぼっちプレイはつらかったですな(笑)

    Re: ダメ子さん

    わたしは小学生のころはクラスで流行っているものについていくのが精一杯でした。

    中学で、「ああ、流行っているものについていかなくてもいいんだ」とようやく悟ってラブクラフトとか読んでいたクチでしたねえ。

    NoTitle

    確かにインベーターは燃えるゲームでしたね。
    あれ以上に日本を震撼させたゲームも・・・そこまでないでしょうね。少年が燃えるのも無理がないですね。

    NoTitle

    『炎のコマ』出来たんですねーそれは良かった! 
    昔のゲーム機だからこそ出来たのかな……?

    この頃の自分は……ひたすら人生ゲームと億万長者ゲームをやっていた気がします。基本は妹を巻き込むが1人3役くらいのぼっちプレイもよくやりました……(´▽`) 将来の性格……?

    NoTitle

    子供のころはまるゲームで将来の性格が多少は予測できそうな気もします
    私は流行に疎いので、クラスで流行っていたものを一人だけ(?)持っていない感じでしたが…
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