映画の感想

    「アメリカの夜」見る

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     買って視聴。借りることも考えたのだが、見ない月も入れると毎月900円をツタヤなりゲオなりに払うのはきつい、という結論に達したので。

     ヨーロッパ映画、それもヌーヴェル・ヴァーグの旗手たるフランソワ・トリュフォー作品ということで、どんな小難しい映画か、とどきどきしてみたら、もうなんというか映画バカしか出てこない群像劇だった。ストーリーが「映画の撮影」ということで、まあ、映画バカ以外の人間が出てくるはずもないことは予想しておくべきだったが。

     のっけから、映像に圧倒された。迫力ではなく、やたらと目につくように出てくる「赤・白・青」のコンポジション。序盤なんかどのシーンを見ても、「赤・白・青」、「赤・白・青」と刷り込まれるようにやられて、くらくらしてくる。さすがフランス人。

     そんな中で、エキセントリックな登場人物があちらこちら動き回っては、スタイリッシュにバカをやってくれる。主役は、ジャクリーン・ビセットなどではなく、どう考えてもフェラン監督を演じるフランソワ・トリュフォー監督その人だ。次から次へと無理難題が彼のもとにもたらされてきては、それを解決するはめに。そんな監督の苦労など知らず、周囲の人間はもう勝手なことをいって勝手な恋愛にふけり勝手なノイローゼに陥り……たぶんここで使われたネタは、大部分が監督の「実体験」だろう。そうでなくとも、友人知人の監督たちが漏らすぼやきやゴシップを忠実に脚本化したのではないだろうか。(終盤でジャクリーン・ビセット演じる、女優のジュリーがノイローゼに陥ったときにフェラン監督が行った行動にそれは集約されている。たぶん、「あの野郎」と思った映画人は多いだろう)

     この「アメリカの夜」という映画の中での劇中劇「パメラを紹介します」という低予算の恋愛映画(これがつまらない映画なのである。たぶん意図的につまらなくしたのであろう)を期日内にどうしても仕上げねばならない監督の胃痛がじかに伝わってきて実に楽しい。そしてこの映画は、皆が眉をひそめる「つまらないにもほどがある低予算のB級映画」でも、その裏にはこれだけの苦労とそれに比した面白さと生きた人間たちがいるのだ、ということを逆説的に語りかけ、粛正であるべき映画の裏舞台をさらに別の形で「祝祭」に変えてしまっているのである。

     まあそういうわけで、笑いながら2時間を楽しんだのであるが、パッケージにあの映像を持ってきたやつ、バカだろ……と思わざるを得ない。これじゃこの監督の屈折が詰まったコメディが普通の恋愛映画に見えるではないか。

     中学や高校のころ自作映画の世界に片足を突っ込みかけた人間は必見。病がひどい人ほど陽気になれる映画である。
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    ~ Comment ~

    Re: かえるママ21さん

    注意して見ると面白いですよ。どこにもかしこにも「赤」か「白」か「青」が目立つように出てくるんです。フランスの国旗の色でしょうね。トリュフォー監督の政治的メッセージでしょうか。

    それにしても、映画界、とんでもない人間しかいませんね~。芸術家というものはみんなああなのかもしれませんけど。

    こんばんは

    「赤白青」には気が付きませんでした。
    こういう別の視点の見方を知ることができるという点がブログdeロードショーの良い点ですよね。^^

    「監督の実体験だろう」は同感です。

    Re: 鉦鼓亭さん

    この映画のネタはいまだに高校を舞台にした学園マンガの定番イベントですね(^^)

    ある意味アニメ版涼宮ハルヒの(見てないけど(^^;))

    「あるある」とか思ってしまいますよねえ。いかにもいそうな人だもんなああいう人たちって。

    最後にセットをヘリで裏から撮影するカットにはちょっと物悲しくなってしまいました。

    このノリでトリュフォー監督に「げんしけん」を撮影してもらいたかった(笑)。もっと祝祭感が出たのではと思います(笑)。

    しかしああいう映画撮れる人がヌーヴェルヴァーグ初期には最も過激な論客のひとりだったというのだから世の中は面白いですね。

    また何か見ようかな。

    Re: 宵乃さん

    スポットレンタルやるにしても、クレカ持ってない……(^^;)

    貧乏人はつらいであります(^^;)

    びっくりしたのはトリュフォー監督の計算しつくされた色彩感覚ですね。監督、あなたはモンドリアンかと。そんな凝った映像を使って撮られる映画があんなB級なんだから、ギャップがまた笑いを生む。

    リリアン・ギッシュとドロシー・ギッシュにささげられていますから、いつぞやの「イントレランス」、監督もファンだったんだろうなあ……。

    NoTitle

     ポール・ブリッツさん、こんばんは

    たぶん意図的につまらなくしたのであろう
    >仰るとおりだと思います。
    つまらない映画を一生懸命作ってる喜劇というアイデアは、この作品以前に既に世に有ったようです。
    そこに自分のテーマと「映画好きで何が悪い!」という開き直りを溶かし込んだのが、この作品なのかもしれません。

    「祝祭」>まさしく「祝祭」そのものでした。

    病がひどい人ほど陽気になれる映画
    >はい、僕が生き証人です。(笑~初見来40年経っても、この作品から抜けられません)

    NoTitle

    わざわざ購入してまで観て下さってありがとうございます。気に入って頂けたようでよかったです。
    ちなみに、楽天レンタルなら定額プランの他にも、借りたい時にレンタル料と送料のみで借りられるスポットレンタルというのがあって、しょっちゅう配布される旧作10本無料クーポンと併せれば送料だけで借りられますよ。1~2枚なら320円、6~9枚なら620円みたいな。

    >映画バカしか出てこない群像劇だった。

    ですね~(笑)
    愛すべき映画バカたちによる、映画バカたちのための作品でした♪
    この作品を再見できて、トリュフォー監督が好きになりましたよ。

    >劇中劇「パメラを紹介します」

    これも実際に起こった事件をモデルにしてるらしいです。詳しいことは分かりませんでしたが、Wikipediaにちょろっと書いてありました。
    ホントこの映画はつまらなさそうで、それが余計に制作現場のアレコレを楽しく見せてましたね。

    今月も一緒に映画を楽しめて嬉しかったです。ご参加ありがとうございました♪
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