ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1980年(4)

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    「ゲームができないの?」

    「ラジオはできるけど」

     ラジオじゃないのだ。自分が欲しいものは、あくまでもゲームなのだ。「自分で自由に作ることができる」ゲームのための機械なのだ。

     修也は裏切られたような気がした。



     修也のパソコン熱は激しくなる一方だった。その年のI県の産業祭。連れられて行った修也は、迷うことなく、パソコンの置いてあるブースに走った。

     人がわんさと集まっていた。修也は列のいちばん最後に並んだ。

     そこにあったのは、シューティングゲームのような、しかしシューティングゲームとは呼べないようなものだった。

     自機を左右に動かし、迫ってくるUFOを撃墜するというゲームだったのだが、UFOを撃墜するためには、UFOに書かれた「計算式」を暗算で解き、その数字を入力する必要があったのである。

     修也はふた桁の足し算を一生懸命暗算した。キーボードから数字を入力すると、数字がUFOに飛んでいき、見事UFOは撃墜された。

     修也は思った。

     なんて面白いゲームなんだ!

     皮肉やあてこすりではなく、修也は本当にそう思ったのだった。反射神経が鈍く、ゲームコーナーのゲームでは三十秒もすればゲームオーバーになってしまいかねない修也にとって、このゲームはまさに福音のようなものだった。

     UFOの数式が四桁になって、ミスが重なり、ようやくゲームオーバーになったときには十分もの時間が過ぎていた。

     またやろう、と修也は列の最後尾に並び直した。

     それを延々繰り返し、修也はまさに至福の時間を過ごしていた。

     母親が呼びに来た。

     修也は名残惜し気にそのパソコンから立ち去った。

     修也は空腹感を覚えた。

    「おなかすいた」

     修也は母親に訴えた。

     母親は目を大きく見開き、ヒステリックに叫んだ。

    「修也、何も食べてないの!」

     産業祭である。食品メーカーも山ほど来ていた。両親としては信じがたい思いだったろう。ケーキにもお好み焼きにも目もくれず、息子がパソコンにひたすら張り付いていたなどとは。

     修也はそのとき初めて、ある聖句の意味を理解した。聖句など、まだひとつも知りもしなかったが。

    「人はパンのみにて生くるにあらず」

     それがその聖句だった。
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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    あのころはまだゲーム自体が手探りでしたしね。

    でもそんなゲームがキラキラ輝いて見えたもんです(^_^)

    Re: 椿さん

    というより、1980年代当時のパソコンのハードでは、

    「そこらへんが限界」だったというのがほんとうのところで……。

    パソコンをメモリの限界まで使い尽くすスタープログラマーたちが「ゼビウス」を移植したりするにはまだ3年以上の時間が必要なのです(^_^;)

    NoTitle

    懐かしいですね~~。
    パソコンでゲームを作る・・ということもありましたね。

    テキストがあって、それをプログラミングすると、ゲームが完成してプレイする・・・というのをやってましたね~~。

    NoTitle

    勉強ゲーム的な……? PCでもそういうゲームがあったんですね。何度も並んじゃった気持ちわかります。

    関係ないですが、うちの親はお祭りの屋台で何も買ってくれない人だったのを思い出しました……。
    お祭りって、神社にお参りした後屋台を横目で見ながら帰って来るだけなのですごくつまらなかった!(笑) 
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