ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1981年(1)

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    1981年



     1981年の正月、修也は猛烈に後悔していた。

     学研の「2年の科学」の巻末広告に載っているゲームのうちのいずれをクリスマスに願うか決めかねていたのは事実だ。いちばん面白そうな、電子ブロックにしよう、と修也は考えていたが、まさかのあの「電子ブロックでゲームはできない」という発言で、修也の頭の中は混乱してしまった。

     悩んだ挙句選んだのが、「ラジホーン」……トランシーバーであった。

     電波で遠くと直接話ができる、というのは、考えるだけでもわくわくするゲームのように思えた。しかし、そのためには、長時間にわたって話す相手が必要である、ということに修也は気づかなかったのである。

     トランシーバーは手に入ったが、ひとりっ子の修也にとっては、よくいっても「無用の長物」でしかなかった。しかもこのトランシーバー、電波がろくに遠くに飛ばないのである。9ボルトの角型乾電池で、電波を隣の家まで飛ばそうというほうがどだい無理な話なのではあったが。

     修也の家庭はあまり親戚周りをしなかったため、得られるお年玉の量にも限界があった。そもそも、「お年玉は貯金しましょうね」というのが家庭の方針であったため、修也の自由になるはずもなかった。

     それでもなんとか自由裁量権をもぎとった三千円で、修也はなにか面白いものはないか、と、お年玉を吸い取ろうとするデパートが新聞にはさんでくる分厚いおもちゃの広告を見ては考えていた。

     その中で、ひとつ、とりわけ目を引くものがあった。

     大きく描かれた世界地図。張り巡らされた複雑な路線。さまざまなカードと、特徴的なルーレット。

     『海外旅行ゲーム』とそれには書いてあった。値段も何とか折り合いがついた。

    「これだ!」

     と修也は思った。

     一九八〇年代はじめ、海外旅行はそれだけでステータスシンボルであった。なにしろ、ハワイ旅行はクイズ番組の優勝賞品の定番であったし、ハワイを超えてアメリカ大陸へ、ともなると、それはもうファンタジーの世界へ行くも同然だった。日本テレビがぶち上げた特別番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」が、毎年視聴率三十パーセントに届くような数字を叩き出していたころである。

     そういう、夢のような海外旅行が、日本の、自分の家で楽しめる。しかも、ゲームとして!

     修也は次にデパートに行く日を指折り数えて待った。両親の予定がなかなか合わなかったのである。

     そしてその日が来た。
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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    大事にとっておいて高校の部室棟に持っていき、生徒会役員の秘密会議とかに使ったらよかったな、とか高校のころ思いました(笑)

    同期のやつは中学の技術の時間に作った有線のインターホンとか持ってきて部室どうしをつないで話したりしていて、まあ、リベラルな高校だったであります(^^;)

    NoTitle

    トランシーバー!!
    懐かしい!!
    もうこれは懐かしい!!
    私も記事を読んでようやく子どもを思い出した!!
    ・・・というぐらいの感激ですね。
    いやあ、遊びましたねえ。
    トランシーバーで子ども同士で連絡ごっこを。

    Re: 椿さん

    いや、昔からゲームは「趣味」でしたし(^^;)

    まあたしかに、今ではボードゲームは「好事家」のやるものになってしまいましたが(笑)

    日本から一度外へ出たことはありますが、船だった……。その地獄のような航海については思い出したくもありません。

    NoTitle

    修也くん、無事ゲームを手に入れることが出来るでしょうか?
    思えば昔はいろいろなボードゲームがありましたね。
    今ではすっかり『趣味でやるもの』みたいになってしまって寂しいです。

    といまだに日本から一歩も外に出たことのないヤツが言う。
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