ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1981年(2)

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     修也はお年玉の残りを握りしめて階段を駆け上がった。エスカレーターはうっとうしかったからだ。

     息を切らせておもちゃ売り場にたどり着き、「海外旅行ゲーム」を探した。

     十分後、修也に突き付けられたのは、「その商品なら品切れになりました」という、店員の無情なひとことであった。

     売り切れてしまったものは、もう、しかたがないとあきらめるしかない。そういう時代だった。インターネットでアマゾンに頼めば翌日には送ってくれる現代と違い、メーカーとつながっている取寄せ口はデパートしかなく、注文してから届くまで、一ヶ月二ヶ月はざら、というのが、当時のおもちゃの常識だった。

     修也はくらくらと、雷でも脳天に直撃したかのような思いでおもちゃ売り場をふらふらしていた。

     一緒に来ていた父親は、そんな修也に苛立ったのか、「買うのか買わないのか!」と鋭くいった。

     何か買わなければ、ここまで来たのが完全に無駄骨になる、と修也は恐慌にかられた。恐慌にかられるまま、修也は海外でなくても、国内でいいから旅行のゲームはないか、と探しに探した。

     幸か不幸か、旅行のゲームはあった。

    「これください」

     と修也はレジの前でいって、店員さんに包んでもらった。

     そのゲームは、日本国内を鉄道で旅行するスゴロク形式のゲームだった。

     メーカーはエポック社。タイトルを、「いい旅チャレンジ20,000キロゲーム」といった。

     修也はにこにこしながら、ゲームを家まで持って帰った。

     エポック社は、当時の大手おもちゃメーカーのひとつだった。たぶん、このゲームも、有能なデザイナーがデザインしたのだろう。そして、有能なデザイナーがデザインしたゲームが陥りがちな罠が、「ゲーム慣れしていない人間にはかなり、ないしはそうとう複雑」というところである。

     修也はまず、盤を広げた。広い割には、思ったよりもマスの大きさが小さく、そして無数の路線が盤上に走っていた。

     内容物だが、カードとコマとルーレットはわかった。だが、一緒に入っているこの穴だらけの箱は何に使うのだろうか。それと、この無数のプラスチックのピンは……。

     修也はルールを読んだ。

     わからなかった。

     首をひねり、もう一度ルールを読んだ修也は、青くなった。

     どうしよう。何が書いてあるのかすらさっぱりわからない!

     修也のさらなる不覚であった。
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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    やりこむとみっちり遊べるゲームではあるのです(^^;)

    小学校中学年以上向けのゲームでしたね。

    湖西線とか宇部線とか、新発田駅とか、寝台特急はくたかとか、いろいろと覚えました。思い出深いゲームです。

    Re: LandMさん

    なくなったらそれで終わりだから、おもちゃ屋のレジの前には長い列ができたもんです。

    後のドラクエⅢでは社会問題にまでなりましたしねえ……。

    NoTitle

    このゲーム、持ってたー!!!(笑)
    そして、出来なかったーーー!!!(笑)

    そうなんですよね、ルールが複雑すぎて。自分が覚えても、一緒にやってくれる奇特な人がいないんです!
    うちは確か、父が「これ面白そうだぞ」と買って来てくれたのですが、その父すらやらなかったという思い出……www

    NoTitle

    そうですよえねえ。
    昔はあんまり予約とか、ネットとかがないですからね。
    はやく行って買う!!
    ・・・っていう時代でしたね。
    相変わらず懐かしい気持ちにさせる小説ですね。
    (*´ω`*)
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