ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1981年(3)

     ←1981年(2) →黄輪さんより暑中見舞いGIF!
     修也には「いい旅チャレンジ20,000キロゲーム」は早すぎた。少なくとも、持ち主として友達にルールを教えて遊ぶには、もう少し簡単なゲームのほうがよかったであろう。

     このタイトルのゲームにはエポック社版とバンダイ版があるが、エポック社版は、「鉄道マニアの夢」を描いたゲームといえる。スタートからゴールまでたどり着く速さを競う、単純なすごろくではないのだ。ポイント制のこのゲームで、最も重要なポイント源は、「どれだけの数の路線を踏破したか」だというところからして、小学二年生向けのゲームではなかった。

     まずは「いい旅チャレンジ20,000キロ」という旧国鉄の企画がどんなものであったかについて説明しなくてはなるまい。それは「一定期間内に、全国の鉄道路線を列車で移動し、その合計キロ数を競う」という企画であった。国鉄が定めた目安が、その二万キロメートルである。挑戦者は出発駅と到着駅で写真を撮って、路線を踏破した証拠とするのだ。

     このゲームはそれを完全シミュレートしていた。路線を踏破するためには、いちいちその両端の駅で止まらなければならないのである。

     春休みと夏休みと冬休みの間に、日本全国のそうした路線をひとつひとつ乗っていっては、修也が混乱した穴だらけの箱に、踏破の証をひとつひとつピン止めしていく。この作業を面白いと思うか煩雑だと思うかで、このゲームに対する評価は完全に分かれるだろう。ゲームにアクセントをくわえるアクシデントカードは鉄道マニアにしかわからないネタが山のようにあり、より素早い移動ができる「特急カード」には、その一枚一枚に美麗なその列車のカラー写真が載っているというこだわりようだった。そしてこのゲームをやった人間にはわかるが、休みの期間がものすごく長く、がんばれば本当に全国の主要路線を踏破することができるのである。膨大なプレイ時間と引き換えに。

     修也には難しすぎた。鉄道にも列車にも、それほど興味がなかった。スマートに、さっと目的地に行ってさっと戻ってきてお土産を買ってくる、くらいのゲームを予想していたのに、まさかこんな「鉄道マニア養成ギプス」のようなゲームだとは。

     三日のうちにこのゲームは押入れにしまいこまれ、修也は両親からからかわれることになる。



     クリスマスとお年玉、ふたつのチャンスを棒に振った修也だが、さらなる不覚の事態が、その夏には待ち受けていた。

     ひとつのゲーム機が現れて、平和なお茶の間を熾烈な闘争本能の支配する戦場へと変えてしまったのだ。

     カセットビジョンの登場である。
    関連記事
    スポンサーサイト



    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    【1981年(2)】へ  【黄輪さんより暑中見舞いGIF!】へ

    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    やりこむと楽しいのです。北海道の路線とかけっこう覚えました。目的地カードで「稚内」とか「那覇」とか引くと、引いたプレイヤーの顔が青ざめるという(笑) 目的地が稚内で、特急カードの「ひかり」を引いた時には泣きそうになりますね。旅のプランが、「まず新幹線で博多まで行って、そこから山陰本線まわりで乗り継いで北海道へ」という涙ぐましい具合になったりして。それでそんなときに、アクシデントカードで医務室へ運ばれて小倉あたりで新幹線を降りるはめに(笑)

    いまネットで見てみたら、中古の美品に11万円とかいう値段がついてました。ちくしょう、どうしておれは中学に入るときに親戚にあげてしまったんだ。とほほ。

    NoTitle

    あー……そんなでしたっけ。(もうどんなゲームだったかほぼ思い出せない)
    とにかくやたら面倒くさかったのだけ覚えてます。母と妹にルールを説明しようとしたら、二人ともちょっと聞いただけで逃げていきました(^-^;
    ぼっちプレイ2回くらいして自分もしまい込んだ気が。

    そうか、そんな鉄道マニア御用達仕様だったのか……
    それは一般受け、というか子供受けしないですね(^-^;
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【1981年(2)】へ
    • 【黄輪さんより暑中見舞いGIF!】へ