ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1981年(4)

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     夏休み。デパートのおもちゃ売り場には人だかりがしていた。中央にあるのはテレビで、映っていたものは、これまでゲームセンターでも見たことがない、ユニークかつユーモラスなビデオゲームだった。

     荒いにもほどがあるドットで映っていたのは、斧をかついだひとりの男、二本の木、空を飛んでなにやら落としていく鳥、地面から這い出して来る蛇、そして突進してくるイノシシ。男、『与作』は斧を振って木を切り倒し、左右の移動やジャンプでイノシシや蛇を避け、さらには隙をついて斧でイノシシや蛇を殴り殺すのである。返り討ちにあったときは、与作の身体は青くなり、天へと召されていくのであった。集まった老若男女はそれを見て笑い、われもわれもとそのゲームを遊ぼうとした。

     そしてそのゲーム、「きこりの与作」と、動かすための機械、「カセットビジョン」は飛ぶように売れたのである。

     カセットビジョンは、国産テレビゲーム機に革命をもたらした。それまで当たり前だった「ブロック崩し」や「カーレース」などといった、遊べるゲームが固定されたテレビ接続型のゲームと違い、『カセットを交換することにより、同じ機械で幾種類ものゲームが遊べる』という画期的なシステムが、14800円という廉価でお茶の間にやってきたのである。テレビには毎日のようにコマーシャルが流れ、日本国中のおもちゃ屋ではデモプレイが行われていた。

     ゲーム内容もすばらしかった。初期に発売された「きこりの与作」と「ギャラクシアン」は、文字通りのキラーコンテンツだった。

     「ギャラクシアン」は、名前だけをナムコのゲームから借用していた、まったく別のゲームだった。たぶん、開発陣としてはスペースインベーダーをこの「カセットビジョン」で再現しようとしていたのだろう。だが、低価格で、スペースインベーダーを再現できるグラフィック能力がある機体を開発するには無理があった。

     削れるところはひたすら削る。その産物として生まれた「ギャラクシアン」は、スペースインベーダーに比べるとおそろしく少ないキャラクター、貧弱な画面と効果音しか持ってはいなかった。それがゆえに、ゲームバランスは素晴らしく良好だった。要するに、プレイヤーをピンチにさせるだけの攻撃と防御のバランスが取れていさえすれば、広い画面も多数のキャラクターも必要ではないのだ。

     エイリアンは、キャラクターごとに違う個性ある動きでプレイヤーの宇宙船に体当たりしてきた。それだけでも興奮するのに、このゲームにはボーナスステージまであった。上方を飛ぶ宇宙船と自機がドッキングさせるというまったく違ったゲームが、ひとつのカセットでできるのだ!

     だが修也は……修也は不満だった。
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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    ファミコンの印象が強すぎたのと、カセットビジョンが戦わなければならなかったライバルたちのせいでしょうね。詳しくは明日の更新。

    NoTitle

    伝説の「与作」……!(笑)
    と言っても自分はプレイしたことないんですけれど。マンガとかでネタにされてるのを見たことあるくらい。

    私、何でカセットビジョンのこと全然覚えていないんだろう……。
    びっくりするくらい記憶にありません。買ってもらえないと最初からあきらめていたのかなあ。(もちろんファミコンも持ってなかった)

    Re: LandMさん

    2~3年の違いがけっこう大きいんです。

    あの頃のハードウェアの技術はそれこそ日進月歩でしたから。

    ソフトウェアの技術も同様ですけどね。

    今の人がカセットビジョンのゲームをやったらあまりに原始的すぎてクラクラするんじゃないかな(^_^;)

    NoTitle

    うん・・・この作品は知らないですね。
    世代がちょっと違う・・・わけないか。
    1981年ですものね。私はふぁみこんをずっとやってましたねえ。。。
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