東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ49位 ドーヴァー4/切断 ジョイス・ポーター

     ←1982年(1) →荒野のウィッチ・ドクター(23)
     大学時に図書館で読んだ。その悪魔のような趣向が今でも忘れられない。ミッシング・リンクというかホワイダニットというか、いつまでも印象に残る好編。このアイデアと設定を思いついたジョイス・ポーターは天才だ。

     とはいえ、メイントリックの印象が強すぎて残りの部分、ユーモア小説としての側面が薄味に思えるのがつらいところ。再読してみると、史上最低の迷探偵、ドーヴァー警部が、これだけ読むと意外とおとなしいのだ。やっていることはひどいのひとことなのだが、訳がおとなしいのか原文がおとなしいのか、「よくいる普通の困った人」に思えてしかたがない。

     ミステリ史上最悪とも最低ともいわれる主人公ドーヴァー警部は、身長190センチメートルくらいで、体重は110キロという大男であるが、その肉の大半は、ダブダブで締まりのない腹にぶら下がっている。顔は大きくて腹同様にダブダブ。小さなボタンのような目、小さな団子鼻、皺くちゃのおちょぼ口で歯は総入れ歯。黒い髪は薄く生えている。トレードマークはあのアドルフ・ヒトラーそっくりのチョビ髭。色あせた出来合いの服の下に二重顎に隠れて見えないよれよれのネクタイを締め、靴も山高帽もいざという時は武器になるようなごつくて堅いもの。性格は陰険で神経質で嫉妬深いうえに怠け者。趣味は大食いと深酒と眠ること。さらにはとんでもない間抜けで、つまらないことで悪態ばかりついている、とまあこういう男でいながら今読むとおとなしいことこのうえないのだ。

     今さらだけど、基本的に怠け者のドーヴァー警部に比べ、後発のウィングフィールドのフロスト警部のほうが、あまりにワーカホリックすぎて、ドーヴァーよりもパワフルかつ下品かつ迷惑に見える、というのは時代だからなのかなあ。ドーヴァーの最大の犠牲者で、ワトスン役を務めることになるマグレガー部長刑事もそれほどひどい目にあっているわけでもないからなあ。「切断」においては。

     ドーヴァーのシリーズは、一度通して読んでみたいとつねづね思っているのだが、ポケミス版を全巻集めるのはつらそうである。文庫で一挙再刊とかやらないものだろうか。それよりも図書館に頼むべきだろうか。悩ましいところではある。なにしろ十冊もあるのだ。早川書房は、一度、リチャード・スタークの「悪党パーカー」といっしょに、この「ドーヴァー警部」も、版権問題をクリアしたうえで改訳し文庫化するべきではないだろうか。待っている人間は大勢いると思うのだが。それとハリイ・ケメルマンの「ラビのスモール」シリーズと、トマス・チャスティンのカウフマン警視シリーズと、それから、それから……本を買い逃したミステリファンの根性は、たいていひねくれるもんで……。
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    ~ Comment ~

    Re: こみさん

    アマゾンでいくらするんだろう……。

    待て。レックス・スタウトの『毒蛇』、早川版の訳でグーテンベルグ21からKindle版が出ておる(^^;)

    タブレットを買わずしてもスマホやPCで読めますので、ちょっと登録してみては如何(^^;)

    電子書籍になったのなら、ポケミスの本として再刊される道理がないなあ(^^;)

    ほかにもウルフものがごろごろ。

    うわー宝の山だあーいいなあー(^^;)

    NoTitle

    読んだはずだけど覚えてない~
    それはともかく、版権を持っている出版社は読者に読ませる義務がありますよね。
    版権持ってて絶版なんて犯罪ですよ。
    私が読みたいのはネロウルフの『毒蛇』
    たのみますわ~
    できたら文庫で。

    Re: ひゃくさん

    なぜ買わぬ(笑)。

    NoTitle

    かろうじて、タイトルくらいは目にしたことがあります(笑)

    Re: 面白半分さん

    まあとんでもないところをスッパリ行く趣向ですからねえ……。

    思い出せないのならぜひ再読を(^^) 結末の三行がすごいです(^^)

    NoTitle

    「切断」読んだはずだ。
    少ないお小遣いからハヤカワ文庫を買った。
    表紙は覚えているんだけど中身は全く思い出せないんです。
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