ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1981年(6)

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     いずれにせよ、買えないものは買えない。いくら「スペースインベーダー」が動いても、いくら何十本もソフトが出ていようとも、「アタリVCS」をヒットさせるための地盤が日本ではまだできていなかったのである。

     いろいろと文句はあったが、「タダで」こうしたビデオゲームが遊べるとなれば、修也が、幸運にもカセットビジョンを買うことができた友人の家に日参するということになったのもごく当たり前の帰結である。

     ゲームのためならば自転車に乗って小学二年生にはあるまじき距離を移動することもためらわない修也であった。修也はある日は「ギャラクシアン」で遊び、またある日は「きこりの与作」で遊び、ある日は「ギャラクシアン」で遊び、ある日は「きこりの与作」で遊び、ある日は「ギャラクシアン」で遊び、ある日は「きこりの与作」で遊び……当然の帰結として、『飽きた』。カセットビジョンを買った家庭において、同様の光景がみられたらしい。

     カセットビジョンは、「草創期の機械」がかかえる問題点から自由になれていなかった。すなわち、ハードウェアの売れ行きについていくだけのソフトの開発能力が備わっていなかったのである。これについては制作側を責めるのは酷だ。カセットビジョンの15,000円を切る本体価格は、機械のメインともいえるCPUを、本体ではなく、ゲームのカセットのほうに搭載することで得られたものなのだから。当然、新作ソフトを作ることは、新作ハードを作ることと同様だった。1981年の間に発売されたソフトはわずか4種類であり、そのうちオリジナリティがあるといえるのは、「きこりの与作」と「ギャラクシアン」のみといってよかった。

     対して、カセットビジョンと市場を争う電子ゲームは、百花繚乱の趣があった。LEDや液晶といった表示システムを駆使して、カセットビジョンの荒すぎるドットでは不可能な、かわいらしく親しみをもてるキャラクターを画面に表示することができた。横にしかキャラクターを移動させることができなかったカセットビジョンとは違い、おおかたのゲームは四方向移動など当たり前で、演出もアクションも音楽も凝っていた。

     そして重要なポイントとして、いちいちアンテナ線を探してテレビの裏をごそごそしなければならないカセットビジョンと違い、電子ゲームは電池さえあれば自分で友達の家に持っていって、そこで遊ぶことが可能なのだ。この携帯性は大きかった。ビデオ端子など普通のテレビには存在しない時代である。

     値段もものをいった。CPUをカートリッジに組み込むというシステムがあるかぎり、会社はゲームのカートリッジを安くするわけにはいかなかった。カセットビジョンのカセットは、一本につき4,980円。ほぼ同価格帯で対する電子ゲームは、どんどんと「お買い得」な品物になっていったのである。
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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    今ではアナログな遊びはTCGとなって子供たちの財布を食い荒らしています(^^;) 個人的にはドイツゲームに流れてきてほしいんだけどそうもいかんし。

    小学生の間で「誰の家に行けばどんな電子ゲーム/テレビゲームがあるか」はそのころからの必須情報でしたからねえ(笑) そこら辺を語り出すとまた長くなるのでやめますが。

    Re: 椿さん

    1982年7月に出たカセットビジョンオリジナル作品「パクパクモンスター」がすばらしい操作性の作品で……(^^;) あれを見てカセットビジョンというゲームマシンには「ああ、無理があるな」としみじみ実感しました(^^;) あれはあれで総合的に見ればバランスが良くて面白いゲームという噂も聞かないこともないので、まあ個人の好みというやつでしょうねきっと。ドンキーコング風の「モンスターマンション」は面白かったのですが。

    NoTitle

    家庭用ゲームが出来るまでは、普通にアナログな遊びがまだ流行っていた時代でもありますからね。
    私もやりたいゲーム欲しさに友達の家まで行く・・懐かしい記憶だなあ。。。

    NoTitle

    なるほど……。
    家庭用ゲーム機が普及するまでには各メーカーの努力と試行錯誤があったのですね。

    それでも『飽きた』は最強かつ最凶の言葉(^-^;
    玩具メーカーはこの言葉が永遠の敵なんでしょうね(笑)
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