映画の感想

    「切腹」見た

     ←海外ミステリ46位 喪服のランデヴー コーネル・ウールリッチ  →1981年(7)
     ハンバーグを喰いに行ったついでにレンタル屋でDVDをレンタル。二十年前に読んだ映画ベスト100でランクインしていたから気にはなっていたが、陰鬱すぎるストーリーに見るのをためらっていた。ここにあるのもなにかの縁、と怖いもの見たさで借りたのだが。

     いや、ものすごい映画だった。面白い。もうムチャクチャ面白い。文芸作品としてだけではなく、エンターテインメントとしても最高の時代劇である。

     仲代達矢演じる老いた浪人もいいが、「体面」に異様にこだわる井伊家の家老を演じた三国連太郎もよく、「こいつらいったいなにを考えているのだろう」というひとくせもふたくせもある男の対話が無類のサスペンスで、もうたまらん。

     これには脚本を書いた橋本忍の功績が大きいだろう。単純なはずだった話がどんどんと様相を変えて行き、特に中盤で話がひっくり返るところなど下手なミステリよりミステリしている。

     決闘シーンも、悲壮感あふれる最後のアクションシーンも迫力満点。小林正樹監督、のりのりで演出している。カメラワークも質感も美しいのひとこと。

     それでいてこの映画を一貫して流れる「日本社会で美徳とされるうわべだけのもの」に対する批判精神の苛烈さは、21世紀の現代においても通用するところが多々なのだ。

     ラスト、もめごとをなんとか解決した家老があんなに暗い顔をしていたのは、起こった事件の陰惨さを反省しているわけではなく、

    「武家のならいにのっとって、これだけの不始末を犯した自分も、責任者としてそう遠くないうちに『病死』しなければならなくなる」

     ことがありありとわかっているからだろう。

     とにかく最初から最後まで異様な迫力が充満していた映画だった。

     おすすめの一本である。

     ところで、レンタル屋には小林正樹監督と仲代達矢主演の代表作といわれる全六部計9時間31分の超大作「人間の条件」が全作揃っているのだが……見たほうがいいだろうか……友人の映画マニアがいうには「救いが全くない陰鬱にもほどがある映画」だそうだが……うむむ……。
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    ~ Comment ~

    Re: ひゃくさん

    そりゃあ当時のベストセラー作家の一人ですからね。

    乱歩は英語も読めたから、海外のミステリの文章の影響もあるんじゃないのかな。

    NoTitle

    アマゾン(仮面ライダーの方じゃないアマゾンね)見てたら、創元文庫のヤツがお話いっぱい入ってて、安かったんでそっちを買っちゃいました。
    二銭銅貨、心理試験、屋根裏の散歩者、人間椅子、鏡地獄、パノラマ島奇譚と読んで、次はいよいよおススメの陰獣です。

    読んで、まず思ったのは、こんなに読みやすかったんだーって(笑)
    もっと、小難しい文章のイメージがありました。
    ただ、読みやすいには読みやすいんだけど、やたら、読点(、)で文章を続けるんですね。
    前に、『人間失格』を読んだ時にも、そんな印象がありましたけど、なんだろ?その頃(江戸川乱歩と太宰治って同時代なのか知らないけど)の文章の流行りだったりするのかな?

    あとは、この創元文庫のヤツって、どこかテイストが似ているお話を順々に並べているようなところがあるせいなのか?
    江戸川乱歩って、こんなにストーカー気質だったのかなーって(笑)

    小学生の頃って、江戸川乱歩(というか明智小五郎と少年探偵団)ってポピュラーな印象があったけど。
    70年代の横溝ブーム以降、世間的には江戸川乱歩って(どっちかといえば)マイナーなイメージでしたよね。
    (ま、天地茂のドラマはともかくwww)

    でも、最近は、結構(本を読む人には)一般的なイメージがありますよね。
    ま、それはネットのバンドワゴン効果というのはありつつ。
    もしかしたら、あのストーカー気質的なところが、今の人の感覚にフィットするのかな?って(笑)

    そんなことを思いました。

    Re: ひゃくさん

    たしかテレビでもリメイクやってなかったっけ。もっとも見たことはありませんのでおぼろげな記憶ですが(^_^;)

    Re: ひゃくさん

    続刊については存じませんでしたが、新潮のあの選集は、寿司屋でいったら「にぎり上一人前」みたいなもので、味を知るには最適です。よりマニアックなものを楽しみたければ追加注文すればいいので。

    いきなり「盲獣」とかだと腹をこわす(笑)

    NoTitle

    そうそう。
    「切腹」、レンタルビデオで検索したら、リメイク版もあるんですね。

    NoTitle

    やっと見つけた!(笑)

    なるほど!
    やっぱり、新潮文庫のヤツなんですね。
    そういえば、最近続巻(というのか?)が出てましたね。

    「孤島の鬼」…。
    ふーん、なるほど!
    ていうか、その後にある「緑衣の鬼」って、私のアマゾンの欲しいものリストに入ってるんですけど、なんで入ってるんだろ?(笑)

    > もしもひゃくさんが小学生だったら、迷うことなしに「怪人二十面相」なんだけどなあ。残念だなあ(笑)。

    何をおっしゃいます。
    僕は、まだ小学5年生だよ(爆) ←自分で書いてて怖気が走った
    ♪BD7 BD7は、しょーねーんたんてーだん
    って?(笑)

    ちなみに、♪一人だけ、ろーじん、はドリフ(爆)
    知ってたかな?



    Re: ひゃくさん

    乱歩の代表作と呼べるものがなんなのかについては、ファンでもいろいろと意見が分かれてるんですよね。

    まず、初期のバラエティ豊かな作品群が楽しめるよくまとまった短編集が新潮文庫の「江戸川乱歩傑作選」でしょう。理知的作品あり、サスペンスあり、変態小説あり(笑) 短編だから入門用には最適です。「押絵と旅する男」「パノラマ島奇譚」などの幻想的な傑作が漏れているのが残念なところですが。

    次に、「波乱万丈の長編冒険スリラー」としては、「孤島の鬼」が挙げられるでしょう。これがもう面白いのなんの、という小説で。明智は出てきませんが、これを乱歩の代表作に挙げる人もいます。

    シリアスな謎解きにこだわった長編探偵小説としては、「陰獣」でしょうね。わたしとしては「アンチミステリの元祖」と呼びたい実験作でもあります。

    もしもひゃくさんが小学生だったら、迷うことなしに「怪人二十面相」なんだけどなあ。残念だなあ(笑)。

    ちなみに乱歩が没してかなり経つので、作品のいくつかが「青空文庫」でタダで読むことができます。情報は共有財であるとはいえ、タダで読んでいいのだろうか、とも思いますが……(^^;)

    あと、ヒネクレ者の山口雅也先生は、乱歩の作品で面白かった長編は「緑衣の鬼」「幽鬼の塔」「三角館の恐怖」だな、とどこかで書いておられました。たしかに面白いのですが、うーむ……(^^;)

    NoTitle

    メシ日記の方で書かれてたんで、気になってこっちも見てみたんですけど、『切腹』ねー。
    ふーん。
    なんか、とっても見てみたくなりました。

    そういえば、『切腹』を検索していて気がついたんですけど、
    切腹と接吻って、一字違いなんですね(笑)

    うん。
    私は、接吻の方がいいかなー(爆)


    上のコメント横入りで、申し訳ないですけど、「人間椅子」「押し絵と旅する男」「蟲」って、そんな感じなんですか。
    そんな感じって、お二方の意見は微妙に異なってたりするわけですけど、いやー、実は江戸川乱歩って読んだことがなくって。
    前々から読んでみたいって思ってたんですけど、おススメ…、というか。
    それらをまとめて読める、お手軽な本ご存知でしたら教えてください。
    (おススメをまとめて読める、お手軽な本でもOKですwww)

    Re: blackoutさん

    「人間椅子」は草食系かなあ、と思います。あれって、「人間の精神を気づかれないうちに味わいコントロールしたい」って妄想の具現化ですからねえ。結婚できるものならヒロインと結婚しているだろうからめちゃめちゃ欲望あります。隠蔽された肉食系です(^^;)

    「蟲」は草食系かなあ、と思います。あれって、あの主人公って、ああいうプレイを実は楽しんでいたのではと思います。それが唐突に終わって、絶望したうえでの井戸だと思ってますので、これも完全に隠蔽された肉食系です(^^;)

    「押絵と旅する男」は、うん、これは、現世の異性に何の魅力も感じない男、まさに草食系だ(笑)

    Re: 宵乃さん

    だって、「死者四人、切腹三人、重軽傷者多数、家宝蜂の巣」という結果を一人の男に出されてしまったんですよ、武を持ってなる譜代の雄が(^^;)

    こんな不始末しでかしたらもう、現代でも責任者は「詰め腹」ものですよ(^^;) 当主がかばっても、藩になお残る犠牲者の一族の恨みを思えばもう腹を切るしかないですよこの家老(^^;)

    と、わたしはそう見ました。あのときの浪人の「明日は我が身」という言葉がひしひしと重く感じられるラストシーンでした。

    NoTitle

    ありますよね
    時代を超えて観られるもの、読まれるものって

    最近読んだものの中では、乱歩先生の「人間椅子・押し絵と旅する男・蟲」あたりが、現代の増殖が止まらない草食系男子の象徴かなって思ったりしました

    NoTitle

    本当に現代にも通じる作品だと思います。これぞ傑作!
    私も初見時は「観られてよかった」と心底思ったものです。
    レンタル屋で思わぬ出会いに恵まれましたね♪

    >これだけの不始末を犯した自分も、責任者としてそう遠くないうちに『病死』しなければならなくなる

    やはり初見時に気付いてなかった気がします。次に再見するのが楽しみになりました。
    ありがとうございます!
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