ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1981年(8)

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     話を戻すと、ここに並んだパソコンは、官公庁、とくに当時の電電公社が使っていた、旧式化して不要となったパソコンを引き取り、そこに市販のゲームを走らせたものだった、というのが実情だろう。コンピューターの世界は日進月歩である。実務に使用するに際して、三年の時間は大きい。しかし、ゲームなら。

     修也はパソコンに飛びつくとむさぼるようにゲームをやった。ある機械では、「ギャラクシーウォーズ」のようなゲームが動いていた。隕石をよけてミサイルを動かし、UFOを撃墜するゲームである。ミサイルもUFOも隕石も、文字や記号を組み合わせたものにすぎなかったが、それでもそこで動いているのは「ギャラクシーウォーズ」なのだ。修也はなかなかいうことを聞いてくれない移動キーをがちゃがちゃと押しては、ミサイルが飛んでいくのを息を飲んで見つめていた。

     また、別の機械では、研究所の事故で生まれた、ゆっくりと増えていく細菌から、ロボットを使って科学者たちを救出するゲームがあった。ロボットは、「押すこと」はできても「引くこと」はできないのだ。細菌の増殖にランダム性はあるが、立派な思考型アクションパズルゲームであった。「π」というキャラクターで表されたロボットを動かし、修也は研究所から科学者を押し出して、隙間を防御壁で埋めようとした。だが、もちろん、そううまくはいかないのがゲームというものである。科学者たちは次々と細菌に食べられて同化してしまい、空隙を防御壁で囲む前に細菌は研究所の外へ漏れ出してゲームオーバーになってしまうのだった。不条理で迫真性のあるSFドラマの一場面のように、修也には思えた。

     「クリンゴン帝国の侵略」も長く修也の記憶に残るゲームだった。これにはPC-8001が使われていた。「クリンゴン」という言葉に、修也は「変な名前だな」と思った。当時、海外SFドラマの再放送を見る機械など小学生にはほとんどなく、専門用語の知識もなかった。だが、そのゲームの手書きのマニュアルを読んだ修也は驚いた。非常に複雑で、「なにをいっているのかさっぱりわからなかった」のだ。「クリンゴン」という言葉からわかるとおり、このゲームは「スタートレック」だった。パソコンゲームの黎明期に登場した、シミュレーションゲームのはしりである。自分がなにをしているのかはよくわからなかったが、光子魚雷やフェーザー砲、ワープなどという単語は、ひとつひとつが修也を宇宙へ連れていくかのように思えるのだった。

     結局、修也はなにひとつ満足にゲームをクリアできなかったが、非常な興奮と満足感とを覚えて家まで帰ってきた。

     いつかパソコンを手に入れるのだ。そして、思い切りゲームを……。

     しかしすぐに現実に直面することになる。
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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    ここからパソコンゲームをめぐる茨の道に……行くだけではないのがこの小説のこの小説たるゆえんで(^^;)

    パソコンゲームで満足していれば修也くんもあんな末路は(^^;)

    世の中というものはいろいろと。ここからさらに茨の道が続くのであった……(^^;)

    NoTitle

    この頃はパソコンはまだまだ遠かった気がしますね~。
    初めて触ることが出来たのって、自分はこの数年後、98時代も中盤になってからでした。

    この時代に、小学生でPCゲームの面白さを知ってしまうというのは……なんというか茨の道でしょうね(^-^;

    Re: ihiroppiさん

    どういうわけかMSXとスタートレックは相性が悪かったらしく、意外とスタートレック的なゲームが少ないのですよね。

    ネットをふらふらしていたらMSX用スタートレックというものを発見し、見てみたらMSX2用だった(笑) 誰がMSX2でスタートレックやるんやねん、と(笑)

    ついでに修也くんに強烈な影響を与えたギャラクシーウォーズ風のMZゲームの正体もわかりました。「ギャラクシーFORM」という、ハドソンのソフトで、「FORM」という言語のデモのために作ったサンプルソフトだとか。

    簡単にあきらめずに探してみるものですね……。

    Re: LandMさん

    あのころはコンピュータを使っている人間でも「このコンピュータでどこまでやれるのかわからない」という思いが強かった時代でしたから、あらゆるものが目新しく面白く見えたのでしょうね。

    いまでは、同じように「このコンピュータでどこまでやれるのかわからない」と発言しても、その言葉の意味がまったく違ってしまったからなあ(^^;)

    NoTitle

    前の方の節でカセットビジョンのカセット内にはCPUが入っていたのか、という驚きの事実が!

    最近アルデバランの動画をユーチューブで見て、これ700で出てたレイホープ研究所だ、と思ってさらにどっかを見たら、アルデバランは三作予定されていて、3作目は出ず、そのあとレイホープと名前を変えたらしいのです。

    スタートレックは一番やりたかったやつで、今でもPC-8001活用マニュアルを持っていてそれにリストが載っています。turboを入手してHuBASICにベタ移植して遊んだ頃にはもうあまり興味がなくなっていましたが(^^;)

    MZ-700のHuPACK#4のテープが出てきて、なんかタイミングがいいです(^^;)入ってるのがスタートレックとレイホープ研究所です(^^)/

    NoTitle

    パソコンのゲームは一時期はまりましたね~~~。
    まあ、今もパソコンのゲームはやっているのですが。
    昔のパソコンゲームは可能性という夢が詰まっていたような気がします。

    Re: 矢端想さん

    調べてみたらわかるもんですな。さっきグーグルで調べ直していたら、「アルデバランpart1」というハドソンのゲームだったそうです。

    なんでも、全員救わなくても、ひとりふたりなら見殺しにしても「オメデトウ!」なハッピーエンドになるそうで……(^^;)

    時代なのでしょうね(笑)。

    細菌が増殖するゲーム、なんとなく覚えがあります。中学の頃によく通っていた電子パーツ屋さんにあったパソコン(マイコン)かも知れません。
    地方の少年には秋葉原と日本橋は憧れの町で、「ラジオの製作」の綴じ込み付録なんかのマップに想いを馳せていたものです。…結局用もなく日本橋うろつく怪しいおっさんになってしまいましたが。
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