映画の感想

    「豚と軍艦」見る

     ←1981年(8) →海外ミステリ49位 スイート・ホーム殺人事件 クレイグ・ライス
     図書館で借りてきたDVD。いわく60年代を代表する傑作であり、今村昌平監督による「重喜劇」を決定づけた作品だそうだ。その「重喜劇」というのがどんなものかは知らないが、あからさまに「お前みたいなメンタルの弱いやつなんかが見ていい映画じゃないぞ」的なオーラはびんびんと伝わってくる。

     だが、後学のためということもある。思いきって借りることにした。

     で、見たわけであるが。

     なるほど、「シン・ゴジラが入念にひたすら避けて通った要素」を濃縮して煮詰めると、この映画になるのだな、と思わせるほどの過激なまでに濃い人間ドラマ。面白いことは面白いのだが、見る人間の精神的タフネスを要求するコメディである。コメディなのだが、監督は観客を笑わせようとして撮ってはいない。どうしようもない日本に怒りを感じてほしくてこの映画を撮っている。

     その怒りを祝祭に変えるクライマックスシーンの狂騒はたしかにすばらしいが、これもすぐに警官隊により収拾されてしまうのだ。

     どこまでも救いというものがないシナリオなのだが、おそらくこれは、イタリア・ネオレアリズモと、アンジェイ・ワイダ監督の「灰とダイヤモンド」から相当な影響を受けてのことだろう。

     どこまでも裏切られる頭の悪い主人公のチンピラ。その主人公に裏切られるヒロイン。感情のぶつかり合いと猥雑なエネルギー。頂点に達したところでの解放。そして祝祭の終わりとどうしようもない現実。

     文芸としてはすばらしいが、どうしても「あれ」と比較してしまう。「仁義なき戦い」である。

     感情のぶつかり合いと猥雑なエネルギーとでは、このモノクロ映画は「仁義なき戦い」に対して圧倒的に不利なのである。しかも、コメディとしてのギャグも、「仁義なき戦い」のほうがはるかにくだらなくて猥雑で笑える。

     今村昌平監督のこの映画の意義を否定はしないが、映画としては、単なる「優等生」でしかないとわたしは思う。最後まで、「社会派映画」なんだよなあ。
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    ~ Comment ~

    Re: blackoutさん

    いや、当時から見ただけでなく、今から見ても、そうとうにとんがっていて不良な映画です。

    だけれども、時代というものは恐ろしいもので、この映画における不良度合いを実際の学生で表現するとなると、

    「豚と軍艦」は、言い知れぬモヤモヤしたエネルギーをケンカと暴走行為で発散させたところ、教師と警察に知れて、教師から体罰を受けて停学三日、というレベルに対し、

    言い知れぬモヤモヤしたエネルギーを、校舎のガラスをたたき割り夜中にバイクを盗み教師だろうが誰だろうが片っ端から暴力に及び、少年院を飛び越えて少年刑務所に送られてしまうようなことが当たり前なのが「仁義なき戦い」という作品なのであります。

    不良としては筋を通していますが極道にはなりきれていない、そんな印象を受けました。むろん、極道な「極道映画」は嫌いだ、という人もいるだろうし、そのあたりは人間の好みというやつで……。

    NoTitle

    優等生って、映画に限らずだと思いますが、バランスがいいんでしょうね

    それもバランスを取ろうと思って、バランスを取ってる感じがないっていう

    ある意味天性のバランス感覚を備えてるので、そこに嫌味というかセコさやズルさがないので、誰からも65点を得られる

    元気があって、頭が良くて、不良じゃない

    そんな感じかと
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