FC2ブログ

    「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
    3 吸血鬼を吊るせ(完結)

    吸血鬼を吊るせ 3-4

     ←吸血鬼を吊るせ 3-3 →吸血鬼を吊るせ 3-5


     一時間の航海の後、遥美奈は、船から慎重に車を降ろした。船が小さくて車が大きいから、どうしても狭く感じてしまうのだ。
    「大丈夫ですか?」
    「どれだけこの島で暮らしていると思っているのよ」
     戸乱島は、朝の船の入港を受けて、活気にあふれていた。過疎の問題を抱えているとはこの光景からは信じられない。とはいえ、よく見ると働く人々の間には白髪頭が目立った。
    「このまま博物館へ?」
    「昨日のうちに西方先生には連絡を入れておきました。だから、もう、裏口を開いて待っておられるはずです」
    「わたしが寝ている間にですか」
    「もちろん」
    「西方さんにはなんと?」
    「ストリゴイの件で羽谷姫に関する話があると」
    「電話だからそう突っ込んだ話もできねえだろ、それでも遥さんはてめえのために骨を折ってくれたんだ」
    「すみません、遥さん」
    「いいのよ」
     遥美奈は車を走らせた。
     一月に来たときのように、博物館にはあっという間に着いた。裏口にプラドを横付けすると、わたしたちは車を降りた。遥美奈が白木の杭とハンマーが入った袋を抱えて先頭に立つ。
     扉を開けると、ちょうど西方光太郎とぶつかった。
    「やあ、美奈さん。桐野先生もいっしょでしたか。……失礼ですが、そのかたは?」
    「坂元といいます。こいつの友人です」
     坂本開次の言葉に、西方光太郎は、一瞬、不審そうな顔をしたが、すぐにいつもの笑みに戻った。
    「いいでしょう。お入りください」
     わたしたちは連れ立って中に入った。
    「羽谷姫のミイラについて、なにかお話があるということでしたが」
     わたしは、歩きながら自分の推理を語った。西方光太郎は聞いていて青くなった。
    「それじゃ、流子は……」
    「おそらくは。羽谷姫はまだ展示していますか?」
    「博物館の目玉ですからね。でも、そうだとしたら、すぐにでも火葬しないと……ここですよ」
     わたしは再び羽谷姫の前に立った。気のせいか、先に訪れた時に比べると重々しさに欠けた感じがした。
     重々しさに欠ける? 頭の中でぼんやりと、なにかが違うという感じがした。
    「どうしましょうか。火葬しますか? それともなにか他に方法が?」
    「どうするんだ、桐野」
     わたしはガラスに手をついた。
    「羽谷姫のミイラの心に入ってみようと思う」
    「バカいうな! 危険だぞ!」
    「危険は承知の上だ。確かめなくてはいけないことがある」
    「自分の告発をか」
    「まあそうだ。坂元、なにかあったら起こしてくれ。わかってるだろうが、わたしの腕時計のアラームを鳴らしてくれさえすれば跳ね起きる」
    「わかった」
     わたしは羽谷姫のミイラに鋭い視線を送りながら、回転する六角形を頭に思い浮かべた。
     視界が別の世界にぼんやりと切り替わる。
     わたしがいたのは、穴蔵の中だった。石室である。真っ暗闇なのに、なぜか周囲を見渡すことができた。
     狭苦しい中、目の前には巫女の装束に身を包んだ、絶世の美女が立っていた。役得だと喜ぶ気は、その瞳にぎらぎら光る、例えようもないほど邪悪な意志を見ると吹っ飛んでしまった。
    「羽谷姫か……」
     羽谷姫はにやりと笑った。ネコ科の猛獣の笑みだ。
    「よくぞ来た、ナイトメア・ハンター。妾も、お前を見くびっておったようじゃ」
    「貴様が、流子さんや、香さんや、小野瀬君を!」
    「だったらどうする、桐野。主をも喰らってやろうぞ。主を喰らえば、妾はもう千年、いや二千年を……」
     聞いていられなかった。わたしは精神を集中し、愛用の散弾銃、HK502を物象化させた。
    「やるか、ナイトメア・ハンター」
     羽谷姫の口が、なにかを吐き出そうかというようにぷうっとふくらんだ。
     だが、羽谷姫は、このような狭い空間で、散弾銃がどれほど恐ろしい兵器になるかを知らなかった。
     相手がなにかをやる前に、わたしは引き金を引いた。
     羽谷姫が倒れて肉塊と化すまで、銀の散弾三発分の時間と手間しかかからなかった。
     わたしが精神の集中を解くと、石室が、カメラのピントを外したかのごとくぼやけはじめ、そして、わたしは……。
     現実世界で目を開けた。
    関連記事
    スポンサーサイト



     関連もくじ一覧 ▼ 
    総もくじ 3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ 3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ 3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ 3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 風渡涼一退魔行
    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    もくじ  3kaku_s_L.png 焼肉屋ジョニィ
    もくじ  3kaku_s_L.png ご意見など
    もくじ  3kaku_s_L.png おすすめ小説
    【吸血鬼を吊るせ 3-3】へ  【吸血鬼を吊るせ 3-5】へ

    ~ Comment ~

    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【吸血鬼を吊るせ 3-3】へ
    • 【吸血鬼を吊るせ 3-5】へ