映画の感想

    「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」見る

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     今月のブログDEロードショーはクレヨンしんちゃん映画である。

     この作品は、名作とのうわさを聞いて昔から見たいと思っていた。

     いい機会だったので見てみた。

     面白い映画だったが、わたしにはこの映画に拒絶されているような気がしてならなかった。

     郷愁を覚えるには過去は嫌すぎ、希望を抱くには未来は嫌すぎ、現状にとどまるには現状が嫌すぎるというモラトリアム人間にとっては、この映画のメッセージがピンと来ない。頭では理解できるが身体ではわからないのだ。

     この映画に描かれている高度経済成長期はそこまで魅力的な世界だろうか。どうしてもそこでつまずいてしまう。

     映画のテーマが「大人になること」「人間の成長」にあることはわかる。だがそこを支える世界が、過去のそれも現代のそれも、両方ともにリアルに感じられない。ひろしの頭に走馬灯のように人生がよみがえるシーンでも、そこで描かれている「典型的な日本人の半生」から疎外され排除されていた人間にとっては、まさに完全に別世界の話なのだ。

     過去から現在にかけての「日本人の価値観」そのものが欺瞞のかたまりであったのではないか、ケンの価値観も、ひろしの価値観も、しんのすけの価値観も、すべてが自己欺瞞であり、欺瞞と欺瞞との闘争にすぎないのではないか。その果てに迎えた「日常への回帰」も、突き詰めればひとつの欺瞞が他の欺瞞を圧倒しただけにすぎず、ケンの理想が実現した世界と価値的には等価ではないのか。

     もし、ケンの用意した世界の幻想が、「20世紀の追憶に満ちた世界」ではなくして、「22世紀の進歩した世界」だとしたら、そのときわれわれは「現代」という過去にしがみつくしんのすけを、「現代」という未来を守ろうとするしんのすけと同等の論理で批判するべきなのだろうか。そうでないとすれば、特権的な「現代の価値観」とはいったいなにか?

     2001年に未来を信じる子供でいることと、2016年に過去に郷愁を抱く大人でいることではどちらがまともなのだろうか。それを永遠の現代を生きるしんのすけを通して考えることにはいかなる意味があるのだろうか。それをどちらにもなりきれなかった人間が考えることにはいかなる意味があるのだろうか。

     そんなことを考えた。また鬱が出てきたらしい。
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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    いや面白かったですよ(^^)

    わたしが嫌いなのはこの映画というより、「三丁目の夕日」と、

    「『三丁目の夕日』を政治的利用する輩」なんだろうと思います(^^)

    今書いている小説もノスタルジーのかたまりだもんな(^^;)

    Re: 宵乃さん

    見たいといったのわたしですし(^^;)

    面白いことは面白かったので「アッパレ戦国大合戦」も見てみたいと思います(^^)

    NoTitle

    おっと合わなかったですか(^-^; 失礼しました。

    面白かったってハードル上げちゃったので、自分なりにどこが良かったのか思い出してみると……
    『これターゲット大人に絞りすぎだろ!!』
    ってとこで一番ウケていた気が。
    今でこそお財布親を意識した子供向けアニメ映画も増えてきましたが、当時はこういうのは珍しかった気がします。

    あと、夢を失って? 親に徹している大人たちへ向ける、ナルシズムあふれる若い日々への懐古あふれるストーリーは痛くて青臭くて笑いながらもずきずき来た記憶が(^-^;

    昭和30-40年代上げは自分もあまり好きではないので、その辺りは一般受けする流行りものガジェットとしてスルーしてました。(あの時代はそんなに良かったのか、というお言葉には完全同意)

    合わない映画だと疲れますよね;; おつかれさまでした!
    勧めちゃってごめんなさい~。

    こんにちは

    この作品をあまり再見する気持ちにならないのは、私もポールさんのように、あの幻想にあまり共感できなかったからかも?
    野原一家がくどいくらい猛ダッシュしていたのが印象に残ってます。

    あまり会わなかったようで残念でしたね。
    今回もご参加ありがとうございました♪

    Re: かえるまま21さん

    そんなかえるままさんの疑問に答える哲学入門書、

    入不二基義「時間は実在するか」
    https://www.amazon.co.jp/%E6%99%82%E9%96%93%E3%81%AF%E5%AE%9F%E5%9C%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%8B-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E5%85%A5%E4%B8%8D%E4%BA%8C-%E5%9F%BA%E7%BE%A9/dp/4061496387

    何度も読んだけれどいい本です。

    いい本すぎて何度読んでも二章でぐっすり眠れます(おい(^^;))

    NoTitle

    うんうん....

    そうですね。
    同感です。
    映画の製作者側はそこまで深かったかは疑問ですが、大筋で同じではないか?と思われます。

    いろいろ考えすぎて疲れてきた、ってのも同感です。(笑)
    でも止められない自分の思考ぐるぐる。
    かえるままは「時間」の不思議に取り憑かれてしまいました。
    過去・現在・未来…
    これ考え出すと止まらないんですよねー。^^

    Re: LandMさん

    後出しジャンケンでこの2016年の世界をちらつかせて2001年の春日部を動揺させる「オトナ帝国」とか作ってみたいです(^^)

    NoTitle

    昔を懐かしむ。。。というのは誰にでもあることなのでしょうね。
    今では昭和を懐かしむように。
    いずれは平成を懐かしむ・・・そういう時代も多分やってくるのでしょうね。我々がそれだけ歳をくったときには。
    いつでも郷愁を抱くときはあるということでしょうね。

    Re: かえるママ21さん

    >同じ目線

    いったいおれはこれまでどんなヒネた映画をどんなヒネた目線で見ていたのだろうか、と軽くショック(笑)。おかしいなあ、映画のオールタイムベスト100に登場するような名作映画しか選んでいないはずなんだがなあ(笑)。(^^;)

    あれからさらに考えたのですが、この「オトナ帝国」は、そうした、虚無のかたまりであるような足場のない「記憶とノスタルジー」のただなかで、なおも自分の足場をしっかり固定して前向きに生きることを主張するメッセージが込められているのではないかと思えてきました。

    すなわち、ケンとチャコの陰謀は、しんのすけの「2001年の現実」により粉砕されましたが、ケンとチャコ自身が、自分の「1970年の現実」を足場としてしっかり確立して、その上で自ら主体的に自分の現実を社会に対して問うのならば、それは肯定されこそすれ決して否定するべきではないものだ、というのが映画のメッセージではないでしょうか。

    あの地底都市で生きる人々が、涙を流しながらも「2001年の現実」を主体的に受け入れたのも、ケンとチャコがあの状態から自殺に至らず、また警察に逮捕されるでもなく生きのびられたのも、「自分の確信する現実を自分で主体的に生きていく」という行動を取っていたからではないかな、と思っています。

    まあそうした「主体性」に関して考えるとまたややこしい問題がごろごろ出てくるのでこの辺でやめときますが。いろいろ考えて今日は疲れた(^^;)

    こんにちは

    初めてポールさんと同じ目線になった気がします。

    高度経済成長期、昭和の30年代に郷愁を抱く日本人は多いのでしょう、ゆえに「Always3丁目の夕日」や「ラーメン博物館の時代設定」クレヨンしんちゃん「嵐を呼ぶモーレツ大人帝国の逆襲」がこれほどヒットするのでしょう。

    「今、ここ」しか生きられない。
    その「今」を受け入れられるなら、存在しない過去に対する記憶が良くリメイクされるのかもしれませんね。
    過去はリメイクされた虚空....
    この映画の答えはそれにある気がします。
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