ウォーゲーム歴史秘話

    撮影ノート

     ←映画「ゴジラ対地球防衛軍」 →1982年(3)
     「モスラ対ゴジラ」はバンダイが1982年に発売した初心者向けシミュレーションゲームである。わたしが生まれて初めて買った大人向けの本格的なゲームで、小学生だったわたしは夢中になって遊んだ。もっとも、それは怪獣同士が怪獣島で殴り合い取っ組み合うシナリオのほうで、都市の描かれたマップを使用するゲームのほうは、理解できずに遊ぶことができなかった。国産黎明期のゲームということもあり、ルールが必要以上に煩雑だったせいもある。とにかくわたしにとっては非常な思い入れを伴うゲームであり、普通に考えれば高校、大学でゲーム相手を見つけて市街戦も楽しむことができたであろう。

     とはいえそううまくいかないのが人間というものである。わたしとこのゲームは無情にも引き離された。中学生のときに期末テスト前日に遊んでいたのが親に見つかって捨てられてしまったのだ。人間というものは面白くできているもので、この事件を境にしてわたしはアナログゲームの蠱惑的な世界にずぶずぶとのめり込んで行くことになるのであった。人間なにが災いするかわからないという好例である。(そうか?)

     それから時が回って幾星霜。ゲームショップでこのゲームを探したのだが見つからず、再度のプレイを諦めかけていたときに、秋葉原のイエローサブマリンの中古棚に並んでいたのを見つけたときには嬉しかった。さっそく、家にあった不要なゲームをイエローサブマリンに叩き売りに行き(HJ初の現代日本を舞台にしたクトゥルフのシナリオ「黄昏の天使」は高値で売れた)、それなりの代価を払って「モスラ対ゴジラ」を手に入れたときは嬉しかったものだ。

     「茨城歴史ゲームの会」の例会で水青さんとプレイの約束をしては都合がつかずに流れ、を繰り返し、大ヒット映画「シン・ゴジラ」を見て興奮し(そう考えるとまさにギリギリのタイミングで買えたといえる。メーカー品としては唯一の「ゴジラ」を題材にしたシミュレーションゲームということで、映画公開後は売れてしまったのではなかったかと思われるからだ)、紆余曲折の末に本格的に『モスラ対ゴジラ』のシナリオを遊ぶ機会をもつことができた。三十年越しの夢が叶ったのだ。感無量とはまさにこのことである。

     最初にルールの理解のために軽くプレイした。わたしがゴジラ、水青さんが防衛隊とモスラを受け持つ。

     今の目で見るとルールは簡単で、いくつかのチェックを別にすると、市民移動→防衛隊移動・攻撃→ゴジラ移動・攻撃→モスラ移動・攻撃、という手番を繰り返すというものである。ゴジラの移動や攻撃にはカードが必要で、それがゲームに制約を与えている。

     ゴジラの勝利条件は、

    ・モスラが孵化する前に卵もしくは小美人を除去する

    ・モスラが孵化した後はモスラの体力をゼロにする

     ことで、防衛隊・モスラの勝利条件は、

    ・ゴジラの体力をゼロにする

     ことと明確であった。

     序盤、ゴジラは逃げる小美人を追い回すか、どこにあるかわからないが移動しない卵を見つけて破壊するか、という勝ち逃げをはかる作戦と、可能な限り防衛隊と市民を除去し、優位な態勢を作った後でモスラと殴り合う、という持久的な作戦のどちらかを選択する必要がある。ちなみに盤外離脱をのぞくなんらかの理由で市民が除去されると、ゴジラの殺戮本能が刺激されて体力が回復する、という強引なルールがあるので、体力を回復させるためにもゴジラは逃げ惑う市民を踏み潰し、放射熱線で街を火の海にすることになる。

     ちなみに、映画ではゴジラが上陸したのは名古屋だったが、このゲームでは汎用性を持たせるため東京をイメージさせるマップになっており、「やんごとないおかたのおられる場所」もしっかり描いてある。以外とそこは重要で、炎が及ばない緑地帯は市民の避難先や防衛隊の防御拠点として実に便利なのであった。

     で、初プレイの結果は、ゴジラの一方的なワンサイドゲームとなり、わずか6ターンで卵が発見され小美人が火災に巻き込まれて死亡、というものとなった。ゴジラの登場位置と卵と小美人の配置場所次第ではこういうことが起きる、というのは意外だった。ルールで小美人はモスラの卵から一定距離以上離れてはならず、モスラの卵を探すいい手がかりになるのである。

     水青さんは大人であった。

    「防衛隊と市民のだいたいの動かし方のセオリーはわかった。もう一度、防衛隊でプレイさせてくれ。きみはゴジラをやってくれ」

     ということで行った第2戦が先のリプレイである。

     水青さんは小美人を中央よりやや東に配置。それに対してわたしの振ったサイコロの目は、ゴジラを地図の西の端に出現させるものであった。

     わたしは手札に大きな移動力のある移動カードを引いてきたので、ゴジラを先行させることで、前回と同様に先行逃げ切りをはかった。小美人の位置と水青さんのベテランとしての観点から、モスラの卵の位置を先ほどと同じマップ北端中央と推測したのである。

     で、強引に突き進んだわけであるが、続々とやってきた防衛隊の射撃の命中率がすごかった。わずか2ターン目にして(推測ではあるが、市民とゴジラの移動速度から考えると、1ターンはだいたい2時間というスケールでこのゲームはデザインされていると思われる)、ゴジラの戦闘能力が下がってしまったのである。戦闘力の低下は受け入れるとしても、カードの手札枚数が減少したのは痛かった。手札が5枚と4枚とでは感覚がまったく違うのである。

     熱線放射カードはあったが、使用するとゴジラの体力が低下するのも痛かった。こんなことなら体力に余裕があるうちに熱線を撃って火災を起こしておくべきだったと悔やんでも後の祭りである。とりあえず火をつけてみたが、風向きのせいか消防隊が頑張ったせいか、それとも日本家屋の防火性が優れていたのか、ろくに延焼してくれず、防衛隊はゴジラに正確な射撃を次々と送り続けるのであった。市民を食って体力を回復させようとしても、市民はすでに防衛隊が避難させた後で、ゴジラは空きっ腹を抱えたまま敵中に孤立するのであった(笑)。

    「ガメラみたいに炎を食べて元気回復とかできないかな」

    「できるわけがないだろう!」

     しかたがなく炎の中を隠れながら卵を求めて前進したが、わたしの推理は外れていた。

    「えー、ここじゃなかったのー!」

    「いや、同じところに隠さないでしょ普通。これで小美人を移動させられる♪」

     この位置から水青さんが隠しているだろうと思われる地点に行くには地図上をさらに半分は横断しなくてはならない。総体力の半分を失い、手札はすでに3枚で、戦闘力と移動力も低下、しかもモスラが孵化するまでにたどり着くには無理で、餌の市民は全員防衛隊に誘導されて避難ずみ。

    「ぬくく! 怪獣王はけっして膝など地につかぬ~っ!」

    「それは拳王!」

     放射熱線で自分をカバーしながら前進をはかるも、熱線を撃つたびに体力を消耗、ゴジラは危機的状態になっていた。

     とにかく体力を回復しないとじり貧でなにもできない。炎から抜け出し、新宿のビル街にいまだ残っていた市民の隣のエリアに熱線を発射することにした。むろん、延焼狙いである。すると当然、防衛隊がわらわらと寄ってくるのだった。

    「なんでこいつらこんなに有能なんですか! こいつら防衛隊でも自衛隊でもなくて、地球防衛軍なんじゃないですか? 原子熱線砲も持ってますし」

    「まあとりあえず撃たせてね。……全部外れ」

    「ここで一発当ててくれたら、『わが生涯に一片の悔いなし!』っていって終れたのに」

    「拳王ネタはもういいってば!」

     カードを使って熱線放射。放射した時点ですでに残り体力は1であった。

     延焼は思った形では起らず、モスラは孵化し、防衛隊の射撃でゴジラは倒れた。

    「やっぱり地球防衛軍だ。『モスラ対ゴジラ』じゃなくて、『ゴジラ対地球防衛軍』だ」

     かくして映画のタイトルは決まった。

    「ゴジラ対地球防衛軍」(笑) 

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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    面白いゲームではありますが、市街戦シナリオは1回遊ぶのに最低3時間かかるとなったらたいていの人は引くという……(^^;)

    怪獣島は30分もあったら終わるんですがね(^^)

    NoTitle

    長い時を経て再び巡り合った運命のゲームだったんですね(´▽`)
    プレイおつかれさまでした!
    また遊べるといいですね。リプレイ(裏)も面白いです!
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