映画の感想
「映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」見る
ブログDEロードショーの企画ということで鑑賞。
「時代劇をそのまま時代劇として作るとここまで面白くなるのか」、というのがこの「時代劇にあるまじき時代劇」を見ての感想というのがなんともはやパラドキシカルである。血沸き肉躍って歴史のお勉強にまでなってしまう、文部科学省推薦映画だとしてもおかしくないお下劣ギャグ映画、というのもまたパラドキシカルだ。素直に面白かった。「オトナ帝国」よりもひねくれ方が隠蔽されているぶん、ストレートに面白かった。
隠蔽と書いたが、同時にあからさまでもある。この時代に、ここまで精緻をきわめた時代劇映画をしかも「クレヨンしんちゃん」のアニメで撮るというのは、もう反骨精神以外には考えられない。クレしんファンと時代劇ファンとアニメファンと戦争映画ファンと、とにかく全方向にケンカを売っているようなものだ。これでひとつ作り方を間違えたら酷評の嵐だっただろうと思われる。「オトナ帝国」の成功がなかったら企画自体にゴーサインが出てはいるまい。
しかしリアリズムに徹した合戦シーンをこれほど執念深く描くとは、好きなんだろうなあ。いつになっても困ったことに、男というものは「戦争ごっこ」が好きなのだ、と思うしかない。しかも現代科学の産物である自動車がたった一台で無双するのだ。時代を先取りした映画ではある。
姫から下された「金子」の中身も気になるぞ。当時の状況から考えると、少量でどこでも流通する「金」か「銀」ではないのか。骨董屋に持っていけば車と家屋の修理費くらいあっという間にまかなえてしまうのではないだろうか。
まあそういうことはおいておくとしても、この映画において、図書館の資料を調べたひろしが「春日合戦の内容とその結末」について知ったうえでこの合戦に参加している、ということの意味は大きいと思う。つまり、合戦後、春日家がどうなったかをひろしは知ったうえで春日家に味方しているのだ。いろいろな考証サイトを見てみると、この映画の合戦を「上杉氏と北条氏の勢力争いの延長上」に位置づけ、春日家は上杉氏撤退ののちに滅亡したであろう、などという結論を導いているが、それが正しいとすると、ひろしは「春日家滅亡」の正確な期日を知っており、そのうえで春日家にやっかいになっているのだ。そりゃ泣くよ! 自分たちをもてなしてくれたこの人々が、あの時代からも近い将来に北条氏に蹂躙される、ということを承知していたら泣くよ! 自分たちがなにをやろうともあの人たちは皆殺しになり城は落城する運命にあり、自分たちがこの合戦でなにかをすることは「どう言いつくろおうと自分たちの自己満足」にすぎないことを理解していれば、そりゃ泣くよ! 郷土史には「野原真之介」の活躍により、などと載っているということは、過去はすでに過去であり変えることなど不可能なのだ、という「現実」を無情なまでにわれわれに突きつけてくる。
そう考えると、この映画のテーマは「古き日本の侍の精神と自己犠牲」などではなくして、あの「オトナ帝国」という「過去と未来の関係性」を主軸とした映画の裏返しであり、アンサームービーと考えるべきなのかもしれない。
いろいろと考える映画であった。娯楽作品としては「オトナ帝国」よりも上だろうが、ヒネクレ度合いも「オトナ帝国」よりも上ではないだろうかと感じる。
いや、見てよかった。こんな企画を考えて提案してくれたポール・ブリッツさんには(← こら(^^;))
「時代劇をそのまま時代劇として作るとここまで面白くなるのか」、というのがこの「時代劇にあるまじき時代劇」を見ての感想というのがなんともはやパラドキシカルである。血沸き肉躍って歴史のお勉強にまでなってしまう、文部科学省推薦映画だとしてもおかしくないお下劣ギャグ映画、というのもまたパラドキシカルだ。素直に面白かった。「オトナ帝国」よりもひねくれ方が隠蔽されているぶん、ストレートに面白かった。
隠蔽と書いたが、同時にあからさまでもある。この時代に、ここまで精緻をきわめた時代劇映画をしかも「クレヨンしんちゃん」のアニメで撮るというのは、もう反骨精神以外には考えられない。クレしんファンと時代劇ファンとアニメファンと戦争映画ファンと、とにかく全方向にケンカを売っているようなものだ。これでひとつ作り方を間違えたら酷評の嵐だっただろうと思われる。「オトナ帝国」の成功がなかったら企画自体にゴーサインが出てはいるまい。
しかしリアリズムに徹した合戦シーンをこれほど執念深く描くとは、好きなんだろうなあ。いつになっても困ったことに、男というものは「戦争ごっこ」が好きなのだ、と思うしかない。しかも現代科学の産物である自動車がたった一台で無双するのだ。時代を先取りした映画ではある。
姫から下された「金子」の中身も気になるぞ。当時の状況から考えると、少量でどこでも流通する「金」か「銀」ではないのか。骨董屋に持っていけば車と家屋の修理費くらいあっという間にまかなえてしまうのではないだろうか。
まあそういうことはおいておくとしても、この映画において、図書館の資料を調べたひろしが「春日合戦の内容とその結末」について知ったうえでこの合戦に参加している、ということの意味は大きいと思う。つまり、合戦後、春日家がどうなったかをひろしは知ったうえで春日家に味方しているのだ。いろいろな考証サイトを見てみると、この映画の合戦を「上杉氏と北条氏の勢力争いの延長上」に位置づけ、春日家は上杉氏撤退ののちに滅亡したであろう、などという結論を導いているが、それが正しいとすると、ひろしは「春日家滅亡」の正確な期日を知っており、そのうえで春日家にやっかいになっているのだ。そりゃ泣くよ! 自分たちをもてなしてくれたこの人々が、あの時代からも近い将来に北条氏に蹂躙される、ということを承知していたら泣くよ! 自分たちがなにをやろうともあの人たちは皆殺しになり城は落城する運命にあり、自分たちがこの合戦でなにかをすることは「どう言いつくろおうと自分たちの自己満足」にすぎないことを理解していれば、そりゃ泣くよ! 郷土史には「野原真之介」の活躍により、などと載っているということは、過去はすでに過去であり変えることなど不可能なのだ、という「現実」を無情なまでにわれわれに突きつけてくる。
そう考えると、この映画のテーマは「古き日本の侍の精神と自己犠牲」などではなくして、あの「オトナ帝国」という「過去と未来の関係性」を主軸とした映画の裏返しであり、アンサームービーと考えるべきなのかもしれない。
いろいろと考える映画であった。娯楽作品としては「オトナ帝国」よりも上だろうが、ヒネクレ度合いも「オトナ帝国」よりも上ではないだろうかと感じる。
いや、見てよかった。こんな企画を考えて提案してくれたポール・ブリッツさんには(← こら(^^;))
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~ Comment ~
Re: ミドリノマッキーさん
お返事遅れました。
この映画と「オトナ帝国」を見たのですが、よくできているなと思ったのは、「子供は子供なりに面白く思う」ようにしっかり作ってあるところです。アクションシーンが爽快に作ってあるんですよね。だから同じところで盛り上がれるし、同じところで笑える。そこに感心しました。「しんちゃんがおしっこしてる」で子供が笑うのと同時に、「2000GTに小便か」で大人が笑う、という具合のシンクロぶりとか(^^)
亡き作者は、たぶんここまでシリアスなドラマは考えていなかったんじゃないかな、と思います。なにせ漫画アクションですし。よく考えたらクレヨンしんちゃんとじゃりン子チエが同時に連載されていたんですね。すごい雑誌だったんだなあアクション……。
クレしん映画はまたいつか見てみたいです。あまりシリアスじゃないやつを(笑)
この映画と「オトナ帝国」を見たのですが、よくできているなと思ったのは、「子供は子供なりに面白く思う」ようにしっかり作ってあるところです。アクションシーンが爽快に作ってあるんですよね。だから同じところで盛り上がれるし、同じところで笑える。そこに感心しました。「しんちゃんがおしっこしてる」で子供が笑うのと同時に、「2000GTに小便か」で大人が笑う、という具合のシンクロぶりとか(^^)
亡き作者は、たぶんここまでシリアスなドラマは考えていなかったんじゃないかな、と思います。なにせ漫画アクションですし。よく考えたらクレヨンしんちゃんとじゃりン子チエが同時に連載されていたんですね。すごい雑誌だったんだなあアクション……。
クレしん映画はまたいつか見てみたいです。あまりシリアスじゃないやつを(笑)
NoTitle
この作品は観ておらずポールさんの話についていけませんでした。
そこで、いったん離れユーチューブで観てみることに。その後再度ブログに戻り読み返してみることである程度理解できました。
それにしても、もうこうなると子供を相手にした作品とは言えませんね。
「オトナ帝国の逆襲」は映画館で観ており、その時にも大人(親)を意識した作品と感じたものでしたが、今作ではさらにその思いが強まりました。
もっともクレしんの連載スタートが大人向け週刊誌であったことを思えば今は亡き原作者の考える方向もこちらにあったとも思えますが。
それがいいのか、悪いのか。純粋に子供の世界を描き、しんちゃんらしいハチャメチャ感をもっと露骨に出して欲しい感もあります。
予定外の観賞でちょっと疲れました(笑)
でも、きっかけを与えていただきありがとうございました。
そこで、いったん離れユーチューブで観てみることに。その後再度ブログに戻り読み返してみることである程度理解できました。
それにしても、もうこうなると子供を相手にした作品とは言えませんね。
「オトナ帝国の逆襲」は映画館で観ており、その時にも大人(親)を意識した作品と感じたものでしたが、今作ではさらにその思いが強まりました。
もっともクレしんの連載スタートが大人向け週刊誌であったことを思えば今は亡き原作者の考える方向もこちらにあったとも思えますが。
それがいいのか、悪いのか。純粋に子供の世界を描き、しんちゃんらしいハチャメチャ感をもっと露骨に出して欲しい感もあります。
予定外の観賞でちょっと疲れました(笑)
でも、きっかけを与えていただきありがとうございました。
Re: 李厳命さん
ウォーゲームファンのわたしには涙が出るようなマニアックな描写がてんこ盛りで実に楽しい合戦シーンでした。投石部隊まで出てきたのにはびっくりのひとことです。ほんとに好きな人が作ったんだなあ。
あれをあのままのクオリティで実写化することの困難を考えると、とてもじゃないが「BALLAD」は見る気になれないです。無理だろう……(^_^;)
面白い合戦映画見たいですねえ。今のところなにを撮っても実写では「歴史秘話ヒストリア」に負けているもんなあ(^_^;)
あれをあのままのクオリティで実写化することの困難を考えると、とてもじゃないが「BALLAD」は見る気になれないです。無理だろう……(^_^;)
面白い合戦映画見たいですねえ。今のところなにを撮っても実写では「歴史秘話ヒストリア」に負けているもんなあ(^_^;)
拝見させていただきました^^
先日はブログにコメントありがとうございました。
返信コメ書かせていただきましたので、ご挨拶に参りました。
仰られるように、『アッパレ! 戦国大合戦』は、『オトナ帝国』なくしてできなかった作品だと思います。 また戦描写のリアルさに関して、スタッフの反骨精神の顕れという点も同意です。
また、ああいう映画が観たいものですね。
失礼いたしました。
返信コメ書かせていただきましたので、ご挨拶に参りました。
仰られるように、『アッパレ! 戦国大合戦』は、『オトナ帝国』なくしてできなかった作品だと思います。 また戦描写のリアルさに関して、スタッフの反骨精神の顕れという点も同意です。
また、ああいう映画が観たいものですね。
失礼いたしました。
Re: 宵乃さん
じゃあ次こそは「にっぽん昆虫記」を(どこで借りるんだ……(^^;))
それは冗談としても、いや、クレしん、食わず嫌いしてました。面白かったです。何でも見てみるものですなあ(^^)
それは冗談としても、いや、クレしん、食わず嫌いしてました。面白かったです。何でも見てみるものですなあ(^^)
NoTitle
このシリーズ、とくにこの監督さんの作品は、大好きな映画をクレヨンしんちゃんでやるということに力を入れまくってるんですよね~。私が観た「ブタのひづめ大作戦」もスパイアクション映画をよく研究してるなぁというのが伝わってきました。
監督さんは違いますが「踊れ!アミーゴ!」のホラー描写は、わざわざホラー演出の専門家を呼んで作ったんだとか(汗)
>ひろしが「春日合戦の内容とその結末」について知ったうえでこの合戦に参加している、ということの意味は大きいと思う。
そう言えばそうでした。泣いた覚えはあるけど、その理由はすっかり忘れてました。ホント、切ないです…。
作品にもチョイスにも大満足だったようで、良かったです。
いつも楽しいお題をリクエストして下さってありがとうございます♪
監督さんは違いますが「踊れ!アミーゴ!」のホラー描写は、わざわざホラー演出の専門家を呼んで作ったんだとか(汗)
>ひろしが「春日合戦の内容とその結末」について知ったうえでこの合戦に参加している、ということの意味は大きいと思う。
そう言えばそうでした。泣いた覚えはあるけど、その理由はすっかり忘れてました。ホント、切ないです…。
作品にもチョイスにも大満足だったようで、良かったです。
いつも楽しいお題をリクエストして下さってありがとうございます♪
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Re: 椿さん
あれを実写化した「BALLAD」なる作品があるそうですが、あのリアリズムを出すのは相当困難じゃないかと思います。黒澤明監督でもないと無理なんじゃないかな。