ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1982年(5)

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     修也はパソコンがほしかった。むろんゲームをしたいがためであるが、世の中もだんだんとパソコンに対して理解が深まってきていた。NHKのテレビ講座で、「マイコン入門」という番組が始まったのもそのあらわれといえる。

     夏休みの終わるころ、父親がそのNHKのテキストを買ってきた。自分でもいくらか興味があったのだろう。修也もどきどきしながらそのテキストを読み、遅くまで起きてその講座の一回目を見てみた。

     始まって五分でわかったことがあった。

     このテレビ講座と、テキストの内容を理解するためには、「すでに実習するためのパソコンを持っていなければならない」という厳然たる事実である。そして、その講座で語られる内容も、ゲームではなく、BASICの例文の打ち込みでしかなかった。

     もし、父親が、修也のパソコンを欲しがる熱病のようなものを治療しようと考えてこのテキストを選んだのだとしたら、それは完全な逆効果であった。修也は、パソコンがほしくてほしくてたまらなくなったのだ。

     修也はテキストの巻末に載っていた、テキストの三分の一弱を占める各メーカーのパソコンの広告を、羨望のまなざしで見た。

     そして、その一台一台の値段が、いかに天文学的数字に見えたことか。番組で使用していたPC-8801など、本体だけで298,000円するのだ。家庭用を謳った「パピコン」という愛称のPC-6001が89,800円という世界である。

     その他にも東芝のパソピア、日立のベーシックマスター、富士通のMICROー8(そのころはFM-8という略称は一般的ではなかった)、カシオのFP-1000、低価格が売りの(それでも59,800円である)松下のJR-100、そしてシャープのMZ。ビジネス専用で「ゲームはできない」ことを売りにしていた沖電気のIF-800や、キーボードに液晶の小さな画面がついていてそこで表示ができるハンドヘルドパソコンの元祖ともいえるHC-20など、まさに百花繚乱の有様を呈していた。

     自分がパソコンでゲームしかしないだろうと考えているに違いない(まあ、実際にその通りなのだが)親の支援は当てにならない。である以上、可能なことはただひとつ。貯金、である。

     修也が見たところ、その「マイコン入門」に載っていたパソコンの中で、がんばって修也に買えそうなものはひとつしかなかった。英国シンクレア社の、ZX-81である。価格35,800円。広告の隅には、細かい字でいろいろと不安にさせることが書いてあった。いわく「カラー機能を使用するプログラムは実行できません」「音を出すプログラムは実行できません」「ひらがな・カタカナの使用はできません」「線画や塗りつぶしを行うプログラムは実行できません」など……。
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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    手に入れて最初に……って、まず電源を入れますな(笑)

    これからもいろいろと修也くんはあっちへふらふらこっちへふらふらするのでありますが、それは先の話。

    82年のわたしも今と同様ですね。マンガはほしい小説はほしいプラモはほしいレコードはほしいカセットテープはほしいもちろんボードゲームもLSIゲームもほしいしテレビにつなぐゲーム機もほしいし、ついでにゲームセンターで遊ぶお金もほしかったのであります。

    それに比べればずいぶんストイックですよ修也くんって(笑)。

    NoTitle

    パソコン……1982年のパソコン……
    ホント、手に届くモノとは思っていませんでしたよ(^-^;

    小学生が貯金して買おうとするものとしてはかなり破格ですね。
    修也くんがいつ実際にパソコンを手に入れることが出来るのか、手に入れて最初に何をするのかすごく気になりますね!

    82年って自分は何を欲しがっていたっけ?
    もう思い出せない……(^-^;

    Re: LandMさん

    はたして小学生の修也くんはパソコンを手に入れられるのか!

    そして1983年、恐ろしい「ヤツ」がやってくる!

    COMING SOON!

    NoTitle

    ああ、懐かしい。
    昔はパソコンはべらぼうに高かったですよね。
    テレビとは比較にならないほど。
    今でこそ、みんなが持てるぐらいのものになりましたけど。
    パソコンでゲーム。
    私も一時期はまったので楽しい記憶が思い出されます。

    Re: らすさん

    別売りの16K増設RAMを使えば、けっこういろいろなことができたみたいです。

    http://www.zx81stuff.org.uk/zx81/tapethumbs.html

    ウィキペディアでZX81の記事を読むと波乱万丈ですごく面白いですよ。真面目な話、日本の会社に制作を丸投げしてカナ文字が打てるバージョンを29800円で売っていたら、日本のパソコンの歴史は変わっていたと思います(^^)

    NoTitle

    こんばんは(^-^)

    ZX-81
    じゃあ一体何が出来るのかと突っ込みたくなりますが、
    1982年といえばまだファミコンも出ていない時代ですからねえ。

    自分も15年前に兄から中古のパソコンを譲り受けなければ、
    今頃はパソコンやネットとは無縁の生活をしているかもしれません。
    そう考えると感慨深いものがあります。
    兄のおかげで今やネット中毒…(^_^;)
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