東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ58位 野獣死すべし ニコラス・ブレイク

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     名作と聞き、中学生の時に図書室に入れさせて読んだ。面白かったことは覚えている。病気になって土浦へ引っ込んでからもう一度古本屋で見かけて買い直したのだが、内容をわかって読む謎解きミステリというものもなあ、と押入れに放り込んでいたら処分する羽目になってしまった。今回はこの企画のためだけに電子書籍版を買った。これならアパートの床が抜ける心配もない。

     で、読んでみたわけだが。前半のサスペンスタッチには、やはりぞくぞくするものを覚えた。なにせ、最愛の息子をひき逃げ事件で失った父親フィリクス・レインが、推理作家としての能力をフル活用して、じわりじわりと犯人に迫っていくのだ。むろん、これですむわけでもなく、事件は中盤で様相を変えるのだが、この展開と趣向を1938年に思いついていたニコラス・ブレイクはただものではない。

     明晰な理性をもって、この事件の狡猾な犯人に迫っていく名探偵ナイジェル・ストレンジウェイズが、よくいうと王道でかっこいい、悪くいうとパターン通りで新味のない探偵なのがちょっとなんであるが(インテリ層のイギリス人が余技で書くと、あんなペダントリーを振り回すひねくれた探偵になるのだろうか。まあ小説として面白いから別にいいのだが)、その論理と推理も悪くない。

     しかし、この小説を読んだ日本語読者が、一番興味があるのは「あれ」ではないだろうか。そう。作中でナイジェルが書きつけたあの頓智問題である。頓智というよりは意地悪なぞなぞだ。訳中で訳者がつけた解説がなければまったく意味が分からないし、訳者がつけた解説を読んでも半分はわからないあの問題だ。日本人にとっては「アルファがベータをカッパらったらイプシロンした。なぜだろう」みたいな問題である。中学生の時に最初に読んで以来、訳者が訳注でも「不明」としたネタの解説がぜひとも知りたくてたまらない。

     ナイジェルの出した問題で一番簡単なものを挙げてみよう。「ジュリアス・シーザーのミドルネームはなにか?」こういうのが二十数問続くのである。このイギリス野郎ときたらまったく。

     ええ、この問題であるが、解答を知りたい人は早川文庫か電子書籍でこの小説を入手していただきたく……。って最近の人はネットで調べるよなあ。味気ない時代になったものだ。そんな教養趣味を抜いても、サスペンスフルでロジカルな作品だから、謎解きものが好きな方はぜひ一度お読みください。それだけの価値はあります。
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