ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1982年(7)

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     それがよかったのだろう。日本ではZX-81はPCシリーズのNECとMZシリーズのシャープに阻まれ、まったく伸びなかったのだ。もしこのZXを買っていたとしても、日本ではほとんど対応する市販ソフトはなかったし、海外へ専門誌を注文することも無理だっただろう。すさまじい関税がかかるし、それに修也に難しい英語が読めるわけもなかった。

     さらに、修也の父親はパソコンを乞い求める修也に与えるべき、もっと小型で安くてある意味高性能な代替品を見つけていた。

     ある冬の寒い朝、修也の家にそのパソコンはやってきた。キーボードがついていて、BASICでプログラムを組むことができ、高度な計算もすることができ、テレビを占領することもなく、しかも価格は14,800円。機体には誇らしげに「PERSONAL COMPUTER」の文字が書かれていた。

     そしてなんといってもその長所は、「ポケットにも入る」ことだった。

     パソコンの名前はPB-100。カシオ計算機が満を持して発表した、最先端のポケットコンピューターであった。

     修也は拍子抜けした気分だった。

     これがパソコンだというのだろうか?

     修也は不満そうに液晶のわずか十二マスの表示スペースを見た。これでいったいどんなゲームができるというのだろう?

     修也は、付属していた「パソコン必勝法」という本のページを開いた。

     キーの押しかたを学ぶための、入門用のプログラムが最初の方のページに書いてあった。修也はわけがわからないながらもそこに書いてある通りにキーを押してみた。通常のプログラムリストの代わりに、押すキーの名称がひとつひとつ書いてあったのである。

     最後まで押し終わったときには、修也は一時間くらい経ったかのように思えた。

     本に従って、「RUN」させてみた。

     画面には、『HI-LO GAME』と出てきた。

     修也は息をのんだ。ゲームだ!

     よくよく本を読んでみると、それは1から100までの数字を当てるゲームだった。なにか数字を入力すると、それが当てる数字よりも大きいか小さいかを教えてくれるのである。それを繰り返していって、その数字を当てたらゲームエンド。スコアこそないが、もちろん、早く当てたほうが偉いのであろう。

     修也は、とりあえず「45」と入力してみた。

     PB-100の画面に『HI』と出た。

     「28」と入力。『LO』。

     数度繰り返し、「33」という数字を当てたとき、なんともいえない感激が走った。

     ぼくはコンピューターでゲームをやったんだ! 自分の!

     修也はその日一日中、飽きるまで数字当てに熱中したのであった。
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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    ファミコンについてはいろいろと書くと思います。

    まあいろいろと偏見も混じるわけですが(笑)。

    NoTitle

    へえ。そんなゲームも出ていたんですねえ。
    ポケットに入るパソコンか、、、
    私はファミコンにかまけていて、コンピューターには無頓着な時代でしたね。。。懐かしい。。。

    Re: 椿さん

    正確にいえば、「関数電卓」の派生形として受け止められていました。これ以前にも、シャープからPC-1500などの機種が出ていましたが、PC-1500は59800円しました。単体でBASICを動かせる機械を14800円という値段で売ったのは、カシオが最初なのであります。

    カシオといえばカシオミニのころから価格破壊の帝王みたいな会社で、このPB-100というポケコンも、価格破壊によって、パソコンというものを使ってみたいという層に爆発的に売れました。

    それがどういう結果をもたらしたかというと、まあ次回に続く(笑)

    NoTitle

    カシオさんさすがすぎる……! 
    そんなもの作っていたのですね。ポケットに入るパソコン、その時代から作っていたのか……。

    そして小学生にしてそれを手に入れられるとは、欲しがり続けた甲斐がありましたね。ちゃんと調べて手に入れてくれたお父さん、優しいなあ(´▽`)

    Re: きみやすさん

    ありがとうございます(^^)

    日本初の16ビットパソコンですね。後になりますがベーマガであの日本語BASICのプログラムリストを見て目を見開きましたΣ(@o@)

    この間、いま参考資料にしている本の「ぴゅう太」の写真をわたしより数年若い人に見せたら、「なんでゲーム専用機にキーボードなんか。いらねー機能ですよね(笑)」とぬかしやがったので、わたしは必殺裂空正拳突きを見舞おうかと一瞬……(^^;)

    NoTitle

    こんばんは。 一気に読んでしまいました。

    おもしろいです。
    単なる懐古でなく、その時代にいた人間の一人として
    記憶がバシバシ甦ってきます。

    途中のウィトゲンシュタインの挿話も楽しくて
    また『神狩り』が読みたくなってきました。

    ちなみに自分は今までのお年玉と親に頼み込んで
    当時のゲームが作れるという
    日本語BASIC(笑)のコンピューターを買ったのですが・・・
    ファミコンの台頭とMSXにやられる羽目になりました(遠い目)
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