ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1983年(2)

     ←海外ミステリ58位 野獣死すべし ニコラス・ブレイク →荒野のウィッチ・ドクター(24)
     本を読んでBASICを身に付けるより、修也はゲームがやりたくなったのだ。「パソコン必勝法」の付録のプログラムサンプルには、3つのゲームが収録されていた。「ゴルフ」と「スロットマシン」と「ブラックジャック」である。

     ここで、PB-100の性能について説明しておこう。ポケットコンピュータであるPB-100は、安価な4ビットのCPUを搭載し、1キロバイトのメモリーを、最大2キロバイトまで拡張可能だった。父親は、大事なコンピュータの裏ぶたを乱暴に開けられてねじ山を壊されたらたまらないと思ったのか、すでにメモリーを増設済みであったが、修也の知るところではなかった。表示は液晶パネルであり、最大で12文字まで表示可能であった。機械語を扱う方法はなかった。使えるキャラクターは当時のほかのポケットコンピュータと比較すれば豊富だったが、自分でオリジナルの記号を作る機能は存在しなかった。音を出す機能はなかった。そもそもブザーがついていなかったのだ。専用のプリンターや外部記憶用のカセットインターフェースをつなぐこともできたが、残念ながらそれは両親の購買リストには載っていなかったようで、修也は本体のバッテリバックアップだけで我慢するしかなかった。我慢するも何も、そんなものをつなぐとどうなるのか、修也は知らなかった。

     さて、「パソコン必勝法」に載っていたゲームは、いずれも増設前のPB-100で動かすことが可能なものだった。

     だが、考えてみてほしい。たかだか1キロバイトのメモリーと、12桁の表示欄で、「ゴルフ」や「スロットマシン」や「ブラックジャック」ができるものなのだろうか、と。

     結論からいえば、できた。遊ぶためにはものすごく想像力が必要だったが、修也にはその想像力があった。

     風力とピンまでの距離しか表示されないゴルフ。

     手持ちチップの概念がない、見ているだけのスロットマシン。

     同じく手持ちチップの概念がないブラックジャック。

     それでよかった。それだけでうれしかった。ゴルフでベストスコアを更新したときは、なんとも晴れがましい気分になった。

     そしてそれだけだった。ゲームのプログラムは、その3本と「HI-LOゲーム」しかその本には載っていなかったのだ。

     修也はゴルフをし、スロットマシンをし、ブラックジャックをし、数字当てをした。

     そしてあくる日も、そのまたあくる日も、修也はゴルフで遊び、スロットマシンで遊び、ブラックジャックで遊び、数字当てで遊んだ。

     あくる日が何日続いたかはわからないが、とあるあくる日、修也はそれらのゲームに飽きている自分に気がついたのであった。
    関連記事
    スポンサーサイト



    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    【海外ミステリ58位 野獣死すべし ニコラス・ブレイク】へ  【荒野のウィッチ・ドクター(24)】へ

    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    この状態はあるものをきっかけに一気にカタストロフへとなだれ込みます。

    まあ遅かれ早かれそのときは来たのでしょうが。

    ちなみにいっときますけれどこの小説はフィクションですからね(笑)。

    NoTitle

    没頭する修也くん可愛い……。
    でも確かに、それだけ遊べば飽きる!(^-^;
    この後どうなるのか、特にご両親の反応が心配です;;

    Re: LandMさん

    ちなみにファミコンのゴルフは今になってもヘタクソで、軽く+15ボギーとか叩いてしまう人間であります。大ざっぱすぎてパットが入らんのです(笑)

    NoTitle

    子ども心ながらゴルフのルールがさっぱり分からなかった記憶が懐かしい。。。

    Re: ECMさん

    おお、ECMさんもPBユーザーでしたか。

    カシオのポケコンは、機械語が使えないので、絶対にプログラムが暴走しないつくりになっているのが初心者にはありがたかったです。

    あのゴルフゲームはかなり難しかったなあ。それだけにベストスコアでまわれたときはうれしかったですねえ。

    でも、だからといってハイスコアがからむゲームのリストにVACを仕込むカシオさんにはちょっとばかり文句が(笑)

    NoTitle

     PB-100なつかしいですなぁ。
     最初に買ったコンピューターでした。
     10個までプログラムを登録できましたね。
     ゴルフゲームは、ボタンを押した時間で飛距離が決まるというやつでした。
     BASICはインタプリタゆえコンパイルの必要もなく、作ってすぐ実行できるというのがすばらしかったです。
     学校での三角関数等を使った計算も、関数表が不要でしたので便利でした。(まあ関数電卓でもよかったのですが)
     後にシャープのポケコンや、PB-400も買いました。

    Re: たかのゆき先生

    複雑化したBASICや、キャラクターのデザインや、処理速度の変化などから、PB-100とPB-110とではまったく違った感触の機械になってしまったようですね。わたしはPB-100しかいじったことはありませんが。いまベンチマークテストのネット記事読んでますが、たしかに処理速度が違う。それでもほしかったですよ、PB-110以降の機械。DATA命令は魅力的でしたねえ……。

    ベーマガについてはあとしばらくしてから取り上げるつもりです。1983年の段階では、まだベーマガに触れる機会はなかったんです修也くん。

    個人的にはプログラムポシェット派でした(^^)

    NoTitle

    私のときはPB-110でしたw
    そのあとシャープのポケコンを買いましたが
    マシン語がわからなくて
    マイコンベーシックに載ってるゲームを打ち込んでやるだけでしたね

    Re: バンドル太郎さん

    その機械についてもこの小説では語ろうと思っています(^^)。

    こちらこそよろしくお願いします。

    リンクさせていただきました

    当時私はカシオのMSXの激安機種を買ってもらいマニュアルに付属していたプログラムをしこしこ打ち込んだりしました。テキストがカクカク動くだけの味気ないものでしたがそれでも興奮したのを思い出します。

    こちらからお願いしたのにもかかわらず遅くなりましたがリンクさせていただきました。
    今後ともお付き合いのほどよろしくお願いします。
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【海外ミステリ58位 野獣死すべし ニコラス・ブレイク】へ
    • 【荒野のウィッチ・ドクター(24)】へ