東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ61位 黒後家蜘蛛の会 アイザック・アシモフ

     ←荒野のウィッチ・ドクター(28) →抜粋・ある辛口ミステリ評論家の毒舌 パート2
     中学生のころに図書館に入れさせ、耽溺するほど読んだ。大学に入っても近くの市立図書館で耽溺するほど読んだ。さすがはSF作家として長年キャンベルに鍛えられたアイザック・アシモフ、実に読みやすく楽しい。

     扱っている謎も、冷静に考えればたわいないのだが、逆にそれゆえに軽く読めて楽しい。どうしてこんな面白い小説が絶版品切れ中なのか。その理由が、「全編の再編集にとりかかっているから」ではなかったら、本気で怒るぞ東京創元社。

     ミステリ専門の作家ではないせいか、いわゆる「掟破り」の話も多いが、それさえも楽しい。第一話の「会心の笑い」からしてとんち話みたいなものだ、と評したのは誰だっただろうか。なるほど、「とんち話」か、と納得したのを覚えている。とんち話でも面白く書けば面白いのだ。「明白な要素」なんて、本人はフェアだといっているが、どこがフェアなんだ、といいたくなるほど掟破りのとんち話である。それなのに猛烈に楽しい。

     また、事件を「ダジャレ」で解決する話がけっこうあるのも、アシモフ御大の恐るべきほどにわかりやすく読みやすい文章と、話術の妙あってこその話なのだろうな、と実感させられる。あんな話を普通の作家が書いたら、編集部は怒り狂って原稿を突き返すのではないだろうか。

     奇人変人ぞろいの黒後家蜘蛛の会のメンバーや、慇懃を絵に描いたような名探偵である給仕のヘンリーも楽しいが、一篇一篇の終わりに、アシモフ先生のあの独特の「自作解説」が入るのもまた楽しい。どれでもいいからアシモフのエッセイ本を読めばわかると思うが、ユーモアに満ちたその文章を読むとほっとさせられる。

     そこまでセットにして、「何度読んでも飽きが来ない」、日本人にとってのコメのメシのごとき「満足感」のあるシリーズなのだが、ほんとにどうしてこれが長いこと絶版品切れ中なんだろう。

     海外ミステリは文章が読みにくくて話が重くて嫌い、と思っている人にはぜひ読んでもらいたい短編集である。そして東京創元社にはなんとしてでも、数が少なすぎて短編集を編むことができなかったこのシリーズの未収録作品を文庫で読めるようにしてほしいものだ。たぶん版権でもめているのだと思うのだが、ブルース・ウェインがミラノ・レストランでの黒後家蜘蛛の会の会食に招かれる「黒後家蜘蛛とバットマン」なんて怪作もあって、わたしは大好きなんだけれどなあ。
    関連記事
    スポンサーサイト



    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    【荒野のウィッチ・ドクター(28)】へ  【抜粋・ある辛口ミステリ評論家の毒舌 パート2】へ

    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    早く最終巻が読みたいものであります。ほんと東京創元社も光文社も、なにやってるんだろ。とほほ。もしかしたら社会思想社が間に挟まってよけい版権がごたごたしているのかなあ。

    NoTitle

    これ好きでした! 実家に置いてきちゃったけど……(^-^;
    久しぶりにまた読みたくなりました。

    Re: 面白半分さん

    どうやら在庫切れ状態から脱したらしく、普通にアマゾンで買えるようになっていたのでひと安心です。それにしても光文社やアメリカのEQMM本誌、それに著作権管理団体との話し合いはまだつかんのかのう。未収録短編をまとめて読みたいのだがのう……。

    NoTitle

    これ絶版なんですか。
    創元推理文庫の名折れになってしまいます。
    いや絶対なんとかしますよ。東京創元社なら。
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【荒野のウィッチ・ドクター(28)】へ
    • 【抜粋・ある辛口ミステリ評論家の毒舌 パート2】へ