東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ64位 警官嫌い エド・マクベイン

     ←緊急レポ →自炊日記・その60(2016年12月)
     いわずと知れた警察小説シリーズの草分け「87分署シリーズ」の第一作であり、スティーヴ・キャレラの初お目見えということになるのだが、どういうわけか87分署シリーズとはあまりお近づきになっていない。なぜなら、読みだすと面白いことはわかっているので、ついつい二冊三冊と買ってしまうだろうから古本屋では手が伸びないし、それに順番に読みたいじゃないか、こういうシリーズって。図書館にも全巻おいてあるところは少ないし、取り寄せるのもなんだし、などと考えていると、どうしても手が伸びなくなるのである。それに、このシリーズ、総計56冊も出ているのだ。書きすぎだよマクベイン先生!

     まあしかしこういう機会でもあるし図書館に頼んでわざわざ下妻市立図書館から相互貸借で取り寄せてもらって、二十年ぶりに再読。再読して驚いたのが、「思ったよりも薄味」なことであった。どうやら、この作品以降マクベインだけではなく多数の作家により山のように書かれた警察小説の重厚なドラマの連続に慣れきってしまったせいか、事件がシンプルで刑事たちのアクも濃くないという感じがしてならないのである。「フロスト警部」などと比べて、非常に読みやすい。

     事件そのものは、勘のいい人なら「ああ、あれか」と気がつく、謎解きミステリの定番だったりする。しかし、作中の刑事たちは、そういう読者のごとき安易な思い付きで行動するわけにはいかない。なにせ、作者のエド・マクベイン自身が毎回、巻頭の注釈で述べているように、「この小説に現れる都会は架空のものである。登場人物も場所もすべて虚構である。ただし警察活動は実際の捜査方法に基づいている」のである。刑事たちは空想的な推理よりも、足によってつかんだ物的証拠しか信じないのである。現に作中ではスティーヴ・キャレラが、「いま考えていること」をぽろりと新聞記者に漏らしてしまい、その内容はおもしろおかしく書き直されて新聞の記事となり、それを読んだ上司のバーンズ警部からこっぴどく怒られたばかりか、捜査そのものまでをも危険にさらす羽目になってしまったりする。厳しいまでのリアリズムである。

     こんなエポックメイキングな小説であるため、パロディにしたがる人もいて、日本で有名なのはジョン・L・ブリーンの「巨匠を笑え」に収録されている短編だろう。一行目からして、「この小説に現れる都会は現実のものである。登場人物も場所もすべて現実である。ただし捜査活動は厳密に著者の空想に基づいている」だもんなあ。桜井一の「86分署物語 名探偵退場」もすごいぞ。「東京からだいたい86分くらいかかる」田舎の警察署の話で、こちらも珍妙な事件ばかりだ。あとは推して知るべし。ふと読みたくなって「86分署」はアマゾンで検索したら2800円の値がついてていた。世の中なにか間違っている。
    関連記事
    スポンサーサイト



    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    【緊急レポ】へ  【自炊日記・その60(2016年12月)】へ

    ~ Comment ~

    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【緊急レポ】へ
    • 【自炊日記・その60(2016年12月)】へ