東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)
海外ミステリ64位 盗まれた手紙 エドガー・アラン・ポー
小学生のころ読んだたしか新潮文庫のポーの短編集で、唯一面白かった作品である。この短編以外の話は、どれをとっても、もう、怖くて眠れなくなりそうなものばかりだったからなあ。「陥穽と振子」なんて、小学生にはどうしたらいいかわからなかったし、そんな中での一服の清涼剤みたいな短編であった。
鮮やかすぎる心理の盲点を突いた切れ味鋭いミステリ、と評するのをよく読むけれど、この小説の歴史的な意義は、そういうところにあるのではないだろう。この小説の歴史的な意義は、「死体がなくてもミステリは書ける」ということを証明したことにある。ゴシック小説や恐怖小説と地続きだったミステリを、斧をふるってそれらから切り離したところにポーの天才と独創性が現れているのだ。
「モルグ街の殺人事件」でグロテスクで異常な事件を異常な青年が趣味で解決する話を書いたとき、ポーは「変わった恐怖小説」を書くつもりだったのではないだろうか。その主人公である異常な青年を面白がったポーは、次にそれを「ジャーナリスト」の視点で動かしてみた。それが「マリー・ロジェの謎」だったのではないかと思われる。そして「盗まれた手紙」において、ポーは、普通の人間ならば結びつけることを考えもしないようなジャンルの小説とこのミステリを結びつけるのだ。「ユーモア小説」である。
ごく普通に考えて、この小説におけるD大臣の手紙の隠し方は、現実的には、拙劣そのものである。家探しした警官たちの中で、最も頭の悪い警官が、五分もしないうちに見つけ出すだろう。そういった点から、「現実味がない」として、この小説を否定にかかる人もいるが、ポーはそうした狭量な「現実味」などはなから考えていない。あえてその点を詰問したら、ポーは「ナンセンス・ユーモア小説」にそんなものが必要あるか、と答えたのではないだろうか。
全集を読むようなマニア以外にはあまり知られていないことだが、怪奇と幻想の文学者としての評判ばかりが高いポーは、実はけっこうユーモア小説も書いていたりするのである。出来については推して知るべしであるが、個人的には「×だらけの社説」なんてけっこう好みだったりする。そしてそんなポーが、「警察」をネタにして「知的な読者」を笑いものにしたのが、この「盗まれた手紙」ではないのだろうか。幻想と怪奇を取り払えば、この短編ミステリ、そのあまりにも「くだらなすぎる」オチと、それに気づかない警察の間抜けさに大笑いしてしまう、「ユーモア作家としてのポーの面目躍如」たる作品なのではないかと勝手に考えている。なにせSFの先駆的作品「ハンス・プファアルの無類の冒険」の結末部分でさえも、ギャグを入れてしまうような人なのだから。
鮮やかすぎる心理の盲点を突いた切れ味鋭いミステリ、と評するのをよく読むけれど、この小説の歴史的な意義は、そういうところにあるのではないだろう。この小説の歴史的な意義は、「死体がなくてもミステリは書ける」ということを証明したことにある。ゴシック小説や恐怖小説と地続きだったミステリを、斧をふるってそれらから切り離したところにポーの天才と独創性が現れているのだ。
「モルグ街の殺人事件」でグロテスクで異常な事件を異常な青年が趣味で解決する話を書いたとき、ポーは「変わった恐怖小説」を書くつもりだったのではないだろうか。その主人公である異常な青年を面白がったポーは、次にそれを「ジャーナリスト」の視点で動かしてみた。それが「マリー・ロジェの謎」だったのではないかと思われる。そして「盗まれた手紙」において、ポーは、普通の人間ならば結びつけることを考えもしないようなジャンルの小説とこのミステリを結びつけるのだ。「ユーモア小説」である。
ごく普通に考えて、この小説におけるD大臣の手紙の隠し方は、現実的には、拙劣そのものである。家探しした警官たちの中で、最も頭の悪い警官が、五分もしないうちに見つけ出すだろう。そういった点から、「現実味がない」として、この小説を否定にかかる人もいるが、ポーはそうした狭量な「現実味」などはなから考えていない。あえてその点を詰問したら、ポーは「ナンセンス・ユーモア小説」にそんなものが必要あるか、と答えたのではないだろうか。
全集を読むようなマニア以外にはあまり知られていないことだが、怪奇と幻想の文学者としての評判ばかりが高いポーは、実はけっこうユーモア小説も書いていたりするのである。出来については推して知るべしであるが、個人的には「×だらけの社説」なんてけっこう好みだったりする。そしてそんなポーが、「警察」をネタにして「知的な読者」を笑いものにしたのが、この「盗まれた手紙」ではないのだろうか。幻想と怪奇を取り払えば、この短編ミステリ、そのあまりにも「くだらなすぎる」オチと、それに気づかない警察の間抜けさに大笑いしてしまう、「ユーモア作家としてのポーの面目躍如」たる作品なのではないかと勝手に考えている。なにせSFの先駆的作品「ハンス・プファアルの無類の冒険」の結末部分でさえも、ギャグを入れてしまうような人なのだから。
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