ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1983年(3)

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     修也はがんばったほうだろう。よくも実質3つのゲームだけでこれほど長い間遊べたものだ。だが、しょせんは小学生、できることはそこまでだった。

     修也は自分でゲームが作りたかった。だが、このポケットコンピューターで、ゲームセンターに置いてある、ギャラクシアンやギャラガを、ドンキーコングやマリオブラザーズを、パックマンやラリーXをどうやって作り、表現すればいいのだろう? 修也にはわからなかった。

     修也は、それは自分がBASICを理解していないからだと考えた。そのため、BASICをまず覚えようとした。「パソコン必勝法」を熟読し、プログラムの組み方を覚えようとした。だが、ステップのレッスンは退屈で、常に途中で飽きてしまうのだった。

     残酷な話ではあったが、そのときの修也が完全なBASICの知識と理解を備えていたとしても、ゲームを作るのは不可能だったろう。修也には、漠然とした「こんなものが作りたい」というもやもやしたものだけがあって、「これを作る」という確固としたイメージがなかった。つまり、「宇宙船『ファイターX』で敵と戦うゲーム」というもやもやしたものだけがあったとしても、実際のところやりたいのは縦シューティングゲームなのか横シューティングなのか、それとも3Dなのか、シューティングではなくてシミュレーションなのかパズルゲームなのかさえも明確に見えていない状態では、ゲームとして形にすることは不可能なのである。

     修也は「こんなはずではなかった」と思った。いや、「こんなはず」になるのが普通なのである。形にできるのは、それこそ日がな一日ゲームセンターに入り浸り過去のゲームに飽き飽きしているような人間か、すでにパソコンを所持して古今東西のゲームをやりまくり過去のゲームに飽き飽きしている人間くらいだったろう。つまり、修也に圧倒的に欠如しているのはコンピューターゲームに対する「教養」だったのだ。すべての芸術は模倣から始まるというが、「模倣する対象」自体の知識がなかったら、模倣すらできないというのが理屈である。

     修也は、何とか理解していた「IF~THEN」命令と「PRINT」命令、それに「GOTO」命令、さらには理解すらできない関数をブラックボックスのように扱って、「サイコロ」、すなわちランダムに1から6の数字を出力するプログラムを作り、それでもってこれまでに何度も遊んだスゴロクを遊ぶ、それぐらいしかできなかった。たしかに、いくらか満足感はあったものの、「こんなはずではなかった」という感覚はへばりついたままだった。

     それでも修也はPB-100をあきらめきれなかった。効きもしないことがわかっている麻薬から離れられないでいる依存症患者、それが今の修也であった。
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    ~ Comment ~

    Re: ダメ子さん

    まあそれでも、いかに「足し算ゲーム」でも、自分の組んだプログラムが動いたら病みつきになりますよポケコンって(^^)

    かえってHTMLやマウスでちょこちょこのほうが難しいですわたし。勉強していないので……(^^;)

    Re: ECMさん

    徳間の本に載っていた「パックマン」と「どるーあぐあ」と「PeBious」ですね。懐かしいなあ。参照されていたリストの「HIDEN LYDEN」や「BROCK STOP」なんて涙もののチョイスをすることといい、この動画主さんはプロポシェ派だったのでしょうね。

    ……と三十年前の投稿ポケコンゲームをついきのうのことのように語れてしまうわたしは異常なのだろうか。うむむ(^^;)

    NoTitle

    マウスでちょこちょこ並べるだけでもそれなりのができて
    プログラミングの敷居が低くなっている現在から考えると
    BASICで一から作っていた当時の人々には頭が下がります

    それでもまだ面倒くさくて…私には向いてないなあと…
    というか向いているものがない…

    NoTitle

     YouTubeがおすすめしてきた動画にPB-100と思われるポケコンで、パックマン、ドルアーガ、ゼビウスをプレイしている画像がありました。ちょっと想像力がいりますけど。

    初音ミクオリジナル曲「ポケコン哀歌ロングバージョン」

    https://www.youtube.com/watch?v=kyyjhWJG3VI

    Re: 椿さん

    「FOR~NEXT」命令と「GOSUB~RETURN」命令については理解していなかったから全然威張れないという(笑)。

    入力キーを読み取る「KEY」という関数があるのですが、その使い方は「パソコン必勝法」には載っておらず、マニュアルにしか書いていなかったことから、ゲームを作るのには障害が多すぎた。プログラムを解析するなんてことは、飽きっぽい小学生には無理だ(笑)。

    だがそんな修也くんですが、思わぬところから突破口が開けるわけなんですなあ。だがそれは別のおりに(笑)

    NoTitle

    小学生でif-then 命令を理解できていれば十分すごいと思いますが(^-^;
    それはともかく、わかるわかる。面白いものを作りたい気持ちを形にするためには無限の階梯がある(笑)
    しかし、プレイするだけのゲーマーでなく創る方に回るとは、修也くん初めに想像していたより大したゲーマー魂ですね。

    Re: ECMさん

    わたしも電卓としてよく使いましたね。普通に式を入れればメモリー機能などを使わなくてもきちんと値段を表示してくれたので、スーパーでこまごま買い物をするときとても便利で(笑)

    このときの修也くんはPBの恐ろしいまでのホビーマシンとしての能力に気づくわけもなかったのである(笑)

    NoTitle

     PB-100でゲーセンのようなゲームは無理でしょうなぁ。
     1行しか表示できないし。
     私は学校で関数電卓代わりに使うとかの使い道がありました。
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