東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ67位 シンデレラの罠 セバスチアン・ジャプリゾ

     ←死霊術師の瞳 2-4 →1983年(10)
     小学生のときに創元推理文庫解説目録で存在を知り、「探偵で被害者で証人で犯人」って、どんなミステリなんだろう! と胸をどきどきさせたのが懐かしい。そして中学校の図書館に(高校の図書館といっしょになっていたのだ)発見して、大喜びで読み……ついていけなかった。要するにガキには早すぎる小説だったのである。

     こうしてこの企画で再読、再再読してみると、ジャプリゾ先生、緻密に考えて物語を作っているな、と嬉しくなってくる。中学生のわたしがどうしてあんなにつまづいたのかであるが、この小説、「視点」が三点あるのだ。「私」と、「ミシェール(ミ)」と、「ドムニカ(ド)」のパートである。それがごっちゃになると、この小説はなにをいっているのかよくわからないだろう。そこを巧みに往還しながら、サスペンスを盛り上げていくジャプリゾ、ただものではない。

     惜しむらくは訳が古いことである。読みにくいうえに、もしかしたらこれは誤訳というものではないか、と思われる文章が散見されるのだ。大幅な改訳が必要ではないだろうか。ジャプリゾの「新車の中の女」が「新車のなかの女」として完全な改訳版が出たことでもあるし、この本も……と思ったら改訳版出ていたのかよ! だったら「寝台車の殺人者」も改訳しろよ! トリッキーで華麗で面白いんだから!

     サスペンスとしては夏樹静子はいうに及ばずボアロー&ナルスジャック「悪魔のような女」など足元にも及ばないような実によくできた作品なので、ぜひ新訳版を一度読んでほしい作品である。あからさまに「シンデレラの罠」に挑戦した太田忠司「僕の殺人」も……まあ努力は認めるが……量的にやりすぎというのはやっぱり野暮だよね、といわざるを得ないなあ。どうせやるのなら、「探偵で犯人で被害者」という同様の趣向で「シンデレラの罠」とほぼ同じような時期に書かれた、都築道夫先生の「猫の舌に釘をうて」という作品のようにどこまでも質的に徹底して過激さを追求するべきだろう。

     この「シンデレラの罠」は、頭にミシェール役の女優と、ドムニカ役の女優のイメージをインプットして、そうして読むと、実に映画的で楽しい。作中での時系列の乱れが、素直に頭に入ってくる。それがいかにもなフランス映画なのだ。そういや映画になってたんだっけ……と検索すると1968年に映画になっていた。あらすじを読むと……脚色がひどい。作者のジャプリゾも脚色に加わっていたらしいが、それにしても原作の知的なところがボロボロである。誰かこの映画の着想と大まかなストーリーをそのままにして、「悪女ものサスペンス」として映画化してくれないものだろうか。現代社会となって科学技術が進歩した今となっちゃ無理な設定の話だといわれたらおしまいだけど。
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    ~ Comment ~

    Re: 面白半分さん

    まあわたしもそれほどフランスミステリーを読んでいるわけではないですが、ジャプリゾは大人になってから読むものだなあ、と感じています。

    それと、旧訳はいろいろと問題もあるんじゃないかなあ。つまり、原文ではいろいろと活字体を変えるなどして凝っていた部分も、すべて同じ明朝体活字で書いていたり、そもそも訳者のかたがミステリ畑ではなかったリ……。

    新訳版買おうかな。でも金が(^^;)

    NoTitle

    記憶ℋ定かではないですが私も小さい頃読んだものの多分ついていけなくなったクチです。それ以来フレンチミステリはなんとなく避け続けています。
    今読むと面白さが理解できるのかもしれないですね
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