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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    探偵エドさん(童話掌編シリーズ・完結)

    エドさん探偵物語:18 依頼人は怪獣

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    依頼人は怪獣



    私立探偵のエドさんは、がらんとした映画館の中で、ぶつぶつこぼしていました。

    「ひとりで見る恋愛映画なんて、ちっとも面白くないな。しかも悲恋ものだなんて」

     急な用事ができたとかで、映画を誘った相手に断られてしまったのです。

     それでも一本目が終わり、次の作品が始まりました。怪獣映画で、ティラノサウルスが街を破壊している様子が大写しされました。

    「どうせ見るならこっちのほうがいいな」

     エドさんが画面に見入っていると、いきなり、スクリーンの中の怪獣がエドさんをぎろりとにらみました。新手の演出でしょうか。

    「探偵さんですね」

     怪獣がしゃべりました。エドさんは、びっくり仰天しました。

    「誰だ、どこでこんないたずらを」

     きょろきょろと周囲を見回すエドさんに、怪獣は穏やかな声でいいました。

    「ぼくですよ、ぼくがしゃべっているんです。スクリーンの中のぼくですよ」

     よく見ると、怪獣の目は優しそうな光を放っています。エドさんは、とりあえず話を聞いてみることにしました。

    「実はぼく、妻を探しているんです」

    「妻……ねえ」

     怪獣の話によると、この映画、企画の段階では夫婦の怪獣が暴れるという設定で、ぬいぐるみも二つ作られたのですが、予算の関係で一匹だけになったということでした。

    「その片割れを?」

    「はい。連れてきてはくれないでしょうか」

     エドさんは頭を抱えました。無理にもほどがあります。

    「わたしは探偵ですから、依頼料が……」

    「断ったら、スクリーンを飛び出て暴れますからね。ぼくは火も吐けるんです」

     はったりでしょうか。でも、本当にスクリーンを抜け出して街を破壊されてしまったら、たいへんなことになります。エドさんは頼みを引き受けざるを得ませんでした。

     なにごともなかったかのように映画が再開しました。エドさんは、怪獣が海に去っていくラストシーンまで、食い入るように画面に集中しました……。



     一ヶ月が過ぎました。怪獣映画の公開も今日で終わりです。エドさんは、緊張した面持ちで映画館の席に座っていました。今日、ここで怪獣を満足させなかったら、街がどうなるかわかりません。

     エドさんの隣には、なぜか、栗色の髪の女性芸術家が座っていました。席の後ろでポップコーンを食べている男を除くと、観客は、どうやらこの二人だけのようでした。

    「例の映画って、これ?」

    「そうだよ。これだ。例の手はずは?」

    「ばっちりよ。了解はとってあるわ」

     怪獣映画が始まりました。

     映画は、当然ですが、ひと月前と完全に同じでした。怪獣が暴れ、街を破壊して、軍隊を蹴散らしてから、海へ向かって去っていくのです。

     しかし、今回は、ちょっと違いました。

     怪獣が海へ一歩踏みだしたところで、もう一頭のティラノザウルスが、海のかなたにちらりと顔を覗かせたのです。

    「よし!」

     それを見て、エドさんは叫びました。

     海へ向かって進んでいく怪獣の背中が、急にどこか明るくなったように思われました。

     怪獣が海のかなたに消え、エンドマークが出ました。

    「成功したの?」

     その問いにエドさんが答えようとしたとき、画面が切り替わって、肩を寄せ合った二頭の怪獣が姿を見せました。

    「この女性です! ありがとうございます! でもどうやって?」

    「おれがやったんだ」

     席の後ろにいた男が立ち上がりました。

    「監督!」

     怪獣は叫びました。

    「この新進画家として売り出し中のお姉ちゃんと、パーティーで会ってな。絵を一枚もらうのと引き換えに、ボツフィルムを使って、この映画館用に、ラストシーンを編集しなおしたんだ。うまくいってくれてよかったぜ。ところで、もしやる気があるなら、次の作品で、二匹で暴れてくれないか? お前らがその気になってくれるなら、傑作が撮れるような感じがするんだが……」

     これからのことについて盛り上がる彼らをよそに、エドさんは隣に目をやりました。

    「じゃ、今度こそ恋愛映画を見ましょうか」

     栗色の髪の女性は微笑みました。

    「あたし、怪獣映画のほうが好きなのよ」

     エドさんはその日一日上機嫌でした。

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    ~ Comment ~

    Re: fateさん

    半分、わたしの願望小説ですから(^^;)

    「春くらいきたっていいじゃないか にんげんだもの」(みとぅを)

    おおおおおおっ!!!

    エドさんにロマンスがっ

    なんて、こった~~~~

    エドさんにそんな‘春’は来ないと勝手に思っていた~~~

    ま、良いけどね。
    誰にでも幸福になる権利はある(--;
    でも、悔しい…

    Re: YUKAさん

    金髪じゃない~(^^;)

    栗色だあ~(^^;)

    広辞苑で引くと、栗色とは焦げ茶色のことなり、と書いてあるのですがうむむ(^^;)

    このシリーズの依頼人、怪獣だったらまだかわいいほうで(ええええ~)

    こんばんは♪

    とうとう怪獣からも依頼が~~^^
    依頼料は、監督から貰えばいいですね。
    2作目が決まったことだし。

    最後の金髪女性とは、怪獣映画でデートでしょうか^^

    Re: 有村司さん

    やっぱり夫婦怪獣の典型はあの二匹ですね。ある意味帰ってきたウルトラマンの最大の強敵(^^)

    個人的には、話せばわかってくれそうな、大巨獣ガッパ夫妻も好きです(^^)

    特撮っ子にはたまりません!

    「帰ってきたウルトラマン」で夫婦怪獣が大暴れするお話があったのですが、エドさんみたいな人がいれば、シーモンスとシーゴラスの怪獣夫婦に東京が大壊滅させられることもなかったでしょうね(笑)

    Re: ぴゆうさん

    ごめん……(汗)。

    原稿用紙5枚でまとめるにはどうしても説明不足に……(汗)。

    NoTitle

    内容はわかるけど、わかりづらい。
    うーーー
    v-17
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