ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1983年(6)

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     修也が最初に見たファミリーコンピュータのソフトは、「ポパイ」だった。おもちゃ屋のテレビに、その画面が映っていたのだ。

     そのとき修也は、『なんでこのおもちゃ屋はゲームセンターのゲーム画面をテレビで流しているんだろう?』と考えた。しばらく見た後で、目の前に「コントローラー」があることに気付いて、『まさか……』と思いつつ、手を伸ばした。

     テレビの画面が切り替わり、ゲームがスタートした。

     修也はくらくらとした目まいを覚えた。

     おもちゃ屋でこんなゲームができていいのか!

     修也はコイン投入口を探した。当然ながら、そんなものがあるわけはない。

     修也はぞくぞくした。

     こんなゲームが『無料』でできていいのか!

     いいのだった。

     修也は色鮮やかなポパイやブルートが滑らかに動くのに仰天した。

     これはゲームセンターのゲームじゃないのか!

     違うのだった。

     修也は機械を見た。値札が貼ってあった。

     ROMカセットの箱も見た。きちんとそれにも値札がついていた。

     修也はだんだんと腹が立ってきた。

     理由は、ファミコンがあまりにもゲーム専用機だったためだった。

     どうしてこの機械にはキーボードがついていないんだ!

     「ぴゅう太」や「MAXMACHINE」の店頭デモにより、そして何より「マイコン入門」により、「キーボード」がついている「パソコン」に憧れていた修也には、ファミコンはそういった存在からの逸脱、堕落に見えてしまったのだった。

     修也は、きっとこれは「簡略版」にすぎないのだろうと考えた。たぶん、そのうち、キーボードがついた完全版が出るに違いない。だから、今は待とう。クリスマスにはまだ間があるし、これからどういうソフトが出るかわからないし。でもドンキーコングができるなら、持っていてもいいかな……。

     甘すぎたとしかいいようがない。ソフトに「マリオブラザーズ」を加えたファミリーコンピュータは、初年度に300万台を売り上げる騒ぎとなっていた。その廉価と特化したグラフィック能力は、ソードの「M5」やセガの「SG-1000」「SC-3000」といったいわゆるゲームパソコンをも寄せ付けなかった。旧式の「ぴゅう太」や「MAXMACHINE」はもちろんである。「カセットビジョン」となると、もはやギャグの対象でしかなかった。「アメリカのテレビをストップさせた」と大々的に広告を打ってきた「アタリ2800」は、店頭で姿を見る前に話題からも消えていた。
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    ~ Comment ~

    Re: きみやすさん

    「パックマン」で、ゲームスタート後どちらに動こうか右往左往しているうちにモンスターに食われてゲームオーバー、という目に遭ったわたしにはその気持ちよくわかります(笑)

    修也くんがベーマガに触れるのは1984年の話になります。そこでようやくこの話も「序章」を終えることができるのであります。いちおうこれ、「青春小説」ですから(笑)。

    Re: LandMさん

    修也くんのファミコンに対する違和感は、「ファミリーベーシック」を見たところで頂点に達するのですが、今はそれについて語るべき時ではありません。そのうち書きます(^^)

    Re: 椿さん

    ファミコンはまさに「バブル」を象徴する玩具だということに気がつきました。

    だって、一本4800円はするROMカートリッジを小学生が何本も持っていて貸し借りするんですからねえ。

    でも修也くんはファミコンには向かわないのです。世の中ってそういうものなのです。(^^;)

    Re: ECMさん

    メガROMと書き込み可能なディスクシステムを使えない限り、ファミコンでワープロを作っても意味がないような気が(^^;)

    強力な技についてはうなずくところもありますが、ファミコンがMSXのように仕様を公開しライセンス制もなくしていたら、今ごろMSXはおろかZXスペクトラムもコモドールも地上から消えて廉価パソコンの世界はファミコンにより独占され、任天堂はマイクロソフトになっていたのではないか、と考えることがよくあります。考えすぎではありますが。

    きみやす

    こんばんは!!
    >「キーボード」がついている「パソコン」に憧れていた修也には、ファミコンはそういった存在からの逸脱、堕落に見えてしまったのだった。

    ああ・・・ その気持ちが自分の事のように感じてしまいます。
    羨ましいんだけど、素直に喜べない。
    ベーマガにあるプログラムを打ちながらも
    「こんなんじゃなくて、もっと・・・」ただ、その先が子供だから思いつかないんですよねぇ。

    ちなみに自分はゼビウスのOPの音楽が鳴り終わる前に
    自機を失うという有り様でした(笑)

    NoTitle

    ふうむ。
    たしかにファミコンは洗練されすぎたゲーム機ですからね。
    パソコンに触れたことがある人だったら、もの足りなさを感じるかもしれませんね。あまりにもファミコンはゲームに特化しすぎたものですからね。

    NoTitle

    来た来た来たー! ファミコンが来たー!!
    ……でもゲーム機に偏見があったうちの親には買ってもらえず、スーファミが出る2年くらい前になってようやく自分のバイト代で買いましたねえ。ドラクエを半年くらいかけてクリアしたのが懐かしいです。

    NoTitle

     ファミリーBASICが発売されるまで、キーボードはなかったですものね。
     昔いた会社は、任天堂からの依頼でファミコンでワープロを作っていました。
     完成したものの、廉価ワープロが出回ったためボツになりましたけど。
     汎用は専用に劣る。あらゆる技を使いこなせるよりも、強力な技をひとつ持っていた方が、有効な場合も多いと言った人がいましたねぇ。
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