5 死霊術師の瞳(連載中)

    死霊術師の瞳 1-2

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     七年ぶりになる再会は、事務的なトーンで始まった。涙もなければ、殴り合いもなかった。ののしる言葉もなければ、皮肉のひとつふたつもなかった。

     ただ、膨大な「時間」だけが、その場を支配していた。

     わたしはあごをしゃくった。

    「外は寒い。小屋に入れよ。客をもてなせるようなものはなにもないが、風が遮れるだけまだましだ」

     坂元開次は、わたしもプレハブ小屋も見ていなかった。その先にある、わたしがパトロールしている仕事場を見ていた。

    「……ひでえ仕事だな」

    「小屋に入れよ」

     わたしは坂元開次に背を向け、小屋の扉に手をかけた。その場でいくらかなりとも主導権を握ろうとしたのだ。

     だが、そんな小細工はするだけ無駄だった。坂元開次は、わたしの肩に手をかけると、鋭い声でいった。

    「乗れ」

     わたしは首を振った。

    「仕事がある」

    「こんなものが仕事か」

     わたしは肩をすくめることさえ億劫だった。これが仕事だ。ほかに何の仕事があるというのか?

    「お気楽な身分だな。物盗りが来るわけもない場所を見回って、空いた時間はネット三昧。電気もガスも水道も来ているから、コタツに入ってパソコンの画面を見ていられるというわけだ。食料はもちろん、洗濯物やゴミまでも、週一で来てくれるトラックがすべて面倒を見てくれる」

    「軽トラが来るのは月に二回だ」

     わたしは訂正した。

    「大した差じゃない。お前の小屋とやらには鏡はないのか。ひどい姿だ。とにかく、お前に必要なのは床屋と銭湯だ。その間におれは紳士服店で着られるものを調達してくる」

     わたしは自分の衣服を見た。厚手のセーター二枚の上にダウンジャケット。分厚い靴下。帽子。手袋。股引の上の作業ズボン。

    「変な格好はしていないつもりだが」

    「いいから乗れ。話はその後だ。余目には話はつけてある」

     あの余目にどう話をつけたのか。わたしにはわからなかった。正面突破をはかるにせよ、迂回して搦め手から攻めるにせよ、坂元とは違った意味で全身が鋼鉄のようなあの男を説得するとは。

     観念した方がよさそうだった。わたしは名残惜し気に職場を見やった。一度このような形で職場を離れた人間を、余目が許すとは思えなかった。

     さらば平凡な日常。さらば静かな日々。

    「何を考えているのか知らないが、自己憐憫にひたっている暇があるなら現在を考えろ」

     坂元開次は苦々しげにいった。
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    ~ Comment ~

    Re: ミドリノマッキーさん

    明けましておめでとうございます。

    本年もよろしくお願いいたします。

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    新年明けましておめでとうございます。
    今年もよろしくお願いいたします。
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