5 死霊術師の瞳(連載中)
死霊術師の瞳 2-3
「勉強はできて真面目でも、教授はプラスアルファを重視したってことか」
坂元開次は右手を挙げた。
「あのうすいません!」
「はい、ただ今参ります!」
従業員が注文を取りに来た。
「ビールを」
坂元開次の視線に、わたしは首を振った。
「わたしはいい」
「ビールはいらない。ウーロン茶ふたつ。今日のおすすめは?」
「今日は揚げ物がサービス価格になっております」
「じゃあ、フライの盛り合わせ二人前。それにご飯と味噌汁」
「かしこまりました」
従業員が去った後、わたしはつぶやいた。
「やっぱりフライになるのか」
「不満だったか、桐野?」
「いや。かまわない。こっちの話だ」
「こっちの話に戻ると、福嶋医師はもとは精神科希望だったのか?」
「本人はそのつもりだった。対して実家が求めていたのは、外科と内科と胃腸科をまんべんなく診ることができる、ごく普通の町医者だった。そこがやつの悲劇だ」
坂元開次は宙を見てため息をついた。
「犬猿の仲の割には相手をよく知っているじゃないか、桐野」
「世の中には、転換点というものがある。ゼミの合否がわかる前までは、わたしとやつは互いを変なやつだとは思っていたが、そこまで最悪な間柄というわけでもなかったのさ」
わたしはお茶をさらにもうひと口飲んだ。
「わたしとやつの関係についてはそれくらいでいいだろう。本題に入れよ。遥美奈が、いったいどうなったんだ。福嶋のやつは、ナイトメア・ハンターの力を失ったわたしにいったいなにをやらせたいというんだ」
坂元開次はポケットからスマホを取り出し、操作した。
「これが今の美奈さんだ」
わたしは坂元開次からスマホを受け取り、画面を見た。
見たものが信じられなかった。
「冗談はよせ」
「冗談なんていってない。よく見ろ。ところどころに、人間だったころのあの女性の面影が残っているはずだ」
わたしは見た。食い入るように見た。
画像に移っているのは、毛むくじゃらで、齧歯類のような鋭い前歯を持った生物だった。家具と部屋のサイズからして、大きさは人間程度だろうと思われた。
そして、坂元開次がいまいましくも説明したように、その生物には、遥美奈の面影があった。
「おれはよく知らないが、ゾアントロピーとかいうそうだな。お前の出所とほぼ同時に、遥美奈はこうなってしまったそうなんだ」
坂元開次は右手を挙げた。
「あのうすいません!」
「はい、ただ今参ります!」
従業員が注文を取りに来た。
「ビールを」
坂元開次の視線に、わたしは首を振った。
「わたしはいい」
「ビールはいらない。ウーロン茶ふたつ。今日のおすすめは?」
「今日は揚げ物がサービス価格になっております」
「じゃあ、フライの盛り合わせ二人前。それにご飯と味噌汁」
「かしこまりました」
従業員が去った後、わたしはつぶやいた。
「やっぱりフライになるのか」
「不満だったか、桐野?」
「いや。かまわない。こっちの話だ」
「こっちの話に戻ると、福嶋医師はもとは精神科希望だったのか?」
「本人はそのつもりだった。対して実家が求めていたのは、外科と内科と胃腸科をまんべんなく診ることができる、ごく普通の町医者だった。そこがやつの悲劇だ」
坂元開次は宙を見てため息をついた。
「犬猿の仲の割には相手をよく知っているじゃないか、桐野」
「世の中には、転換点というものがある。ゼミの合否がわかる前までは、わたしとやつは互いを変なやつだとは思っていたが、そこまで最悪な間柄というわけでもなかったのさ」
わたしはお茶をさらにもうひと口飲んだ。
「わたしとやつの関係についてはそれくらいでいいだろう。本題に入れよ。遥美奈が、いったいどうなったんだ。福嶋のやつは、ナイトメア・ハンターの力を失ったわたしにいったいなにをやらせたいというんだ」
坂元開次はポケットからスマホを取り出し、操作した。
「これが今の美奈さんだ」
わたしは坂元開次からスマホを受け取り、画面を見た。
見たものが信じられなかった。
「冗談はよせ」
「冗談なんていってない。よく見ろ。ところどころに、人間だったころのあの女性の面影が残っているはずだ」
わたしは見た。食い入るように見た。
画像に移っているのは、毛むくじゃらで、齧歯類のような鋭い前歯を持った生物だった。家具と部屋のサイズからして、大きさは人間程度だろうと思われた。
そして、坂元開次がいまいましくも説明したように、その生物には、遥美奈の面影があった。
「おれはよく知らないが、ゾアントロピーとかいうそうだな。お前の出所とほぼ同時に、遥美奈はこうなってしまったそうなんだ」
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こんばんは(*'ω')
自分はお酒が飲めないので、
会社の飲み会の時もお酒は最初の乾杯の時のビール一杯のみで、
その後はひたすら烏龍茶かコーラを注文するので周りが白けてしまいます (^_^;)
自分はお酒が飲めないので、
会社の飲み会の時もお酒は最初の乾杯の時のビール一杯のみで、
その後はひたすら烏龍茶かコーラを注文するので周りが白けてしまいます (^_^;)
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Re: らすさん
とはいっても日本酒一合くらいで出来上がってしまうんですけどね。我ながら弱い(^^;)