5 死霊術師の瞳(連載中)

    死霊術師の瞳 2-4

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    「わたしの……」

     二、三秒の間、なにをいわれているのかわからなかった。

     理解した瞬間、わたしは首を振った。

    「わたしのせいじゃない」

    「そりゃそうだろうよ」

     坂元開次は疲れたようにいった。

    「お前がこの時期に釈放されたことも偶然で、福嶋医師がお前の大学の同期だったことも偶然、遥美奈がこうなっちまったのも偶然だろうな。そして偶然、おれが日本に帰国したタイミングで、遥美奈のつてで福嶋医師が連絡を取ってきたのは偶然以外の何物でもない。ほんと、なんて偶然だ、だ」

     坂元開次は頭を振った。

    「あいにくとシンクロニシティなんてもんは信じないクチだ。福嶋医師と遥美奈とおれとお前、これをつなぐ軸はおれかお前かのどちらかになる。おれには身に覚えはない。お前にも身に覚えはないだろう。そうすると、蓋然性の問題になるわな。こういう異常な事態により多く遭遇しているのはどっちか、ということだ」

     坂元開次は首筋をぼりぼりとかいた。

    「ベトコンのいちばん無学な兵士でも、どっちに責任がある方に賭けるか、と聞いたら、桐野、お前、と答えるんじゃないのかな」

     わたしはいい返せなかった。なんとも、それがつらい。

    「……だが」

     わたしは言葉を喉の奥から努力して押し出した。

    「いったい、わたしに、彼女を助けるためのどういうことができるというんだ」

     坂元開次は憐れむような目になった。

    「変わったな」

    「なに?」

    「昔のお前だったら、そう考える前に、『とりあえず話は聞いてみよう』と考えたはずだぞ」

     これはこたえた。

    「……買い被りだ」

    「どうもそうらしいな。惚れた女を撃ち殺すと、偉大なる最後の騎士ドン・キホーテも、もとの郷士のアロンソ・キハーノに戻っちまう、というわけだ」

     従業員がお盆を持ってやってきた。

     目の前に、飯と味噌汁の椀が置かれ、わたしと坂元開次との間に、フライの皿がどかんと置かれた。

     坂元開次はテーブルに備え付けの箸箱から箸を取った。

    「まあ、よくある話だ。さほど気に病むものでもない」

     坂元開次はフライにソースをかけた。

    「どうした桐野、食わんのか?」

     いちばん理にかなった対応は、箸を置いてあの墓場に帰り、墓守を続けることだったろう。だが、平然とそれができるようなやつは、最初から医者になんかなりゃしない。
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    ~ Comment ~

    Re: 早雲さん

    いたらわたしがルール教えてほしいです(翻訳絶賛挫折中)

    茨城歴史ゲームの会と、ちはら会につきあってくれるようなオールドファンがいなければ、誰かルールを知っている人がいるかどうかすらもわたしには……。

    剣と魔法の国

    剣と魔法の国をやってみたいです。
    どなたか関東でできる人をお教えいただけませんか?

    Re: ミドリノマッキーさん

    過去作品がいろいろと影を落としてきますので、このシリーズの過去の作品を読んでからのほうがいいかもしれません、といちおうご忠告しておきます。

    なにせシリーズ完結編ですし、わたしミステリファンですし(^^)

    Re: blackoutさん

    小説だからことごとくに意味はあるんですけどね(笑)

    「原因のないことは起きない」とは思うけど、「すべての起きることに意味はない」とも思いますねわたし……。

    Re: 山西 サキさん

    今のところ頭の中で計画はできているので、原稿に起こすだけなのですが、それがしんどくなってきて……(^^;)

    それにいろいろと凝りすぎたかな、と、今回の八少女さんの企画参加作品をもう一度読んで反省中です(^^;)

    わかりやすく作らないとなあ……(原稿を書き直しつつ)

    NoTitle

    ますます目が離せなくなりました。
    これからの展開が楽しみです。

    NoTitle

    偶然は必然のカモフラージュかなって、自分は考えますね
    シンクロニシティとか虫の知らせとか第6感もあるあるだと思ってます

    生きる上で、意味のないことが起こるってことはないかなって

    まぁ、自分はこれまで、偶然にしては出来過ぎなタイミングだなって思うようなことが多々降りかかってきたので、なおさらそう思うのかもですが

    NoTitle

    いよいよ謎だらけになってきましたよ。
    ちゃんとついていかなきゃ・・・。
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