東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ73位 大穴 ディック・フランシス

     ←1983年(14) →プロローグ
     この企画で48位「利腕」を読む前に一度読んでからの再読。うーむ、何度読んでも面白い。扱っているのはイギリスの競馬界というローカルにもほどがある内容なのに、この本を読んでいる間、幸福でたまらなかった。ページを繰っている間、わたしは知性がありユーモアを解する不屈の元チャンピオン騎手、調査員シッド・ハレーだった。それだけでほかに何が入用だというのか。

     とはいえ、それにしてもシッド・ハレーという男は精神的にも肉体的にもよく痛めつけられる男である。まあ読んでいるとそれがこたえられんわけではあるが。何しろこのシッド・ハレーという男は(ハレーにとどまらずディック・フランシスの小説の主人公はみんなそうだが)、身体全体がショックアブソーバーではないかというぐらいに打たれ強い。花崗岩みたいな男なのである。

     これは作者が障害レースのチャンピオン騎手だったことも影響しているだろう。本書「大穴」に従うと、障害レースの騎手というものは、骨折したままでもレースに参加したがり、鎖骨、肋骨、腕など馬主や調教師に見つからない限りの骨折ならば喜んで馬に乗るような輩なのだそうである。お前は元プロ野球の金本か! といいたくもなるが、実体験らしいからウソではあるまい。

     こんなやつらに追われる悪役というのもある意味気の毒というかなんというか。一度食いついたら首を斬っても離れないようなタフな男って、そりゃあ始末に悪いだろうなあ。読者はハレーの不屈の闘志に感情移入するからいいのだが、悪党にはたまったものではあるまい。

     このシッド・ハレーものをテレビドラマにした会社が英国にあるそうだが、撮影は難しかったんじゃないかな、と思う。なにしろもと騎手という設定である。肉体的にいくら頑健でも、身体が大きかったらやっていけない。よってハレーの身長は、五フィート六インチ。メートル法に直すと165センチなのである。そしてこの身長も、物語の中に生かされているため、動かすわけにはいかない。本当に、あの大柄なイギリス人の中で、誰がハレー役をやったんだろう。

     ちなみにハレーがハードボイルド探偵でいちばん小男かというとそうでもなく、ジョージ・C・チェスブロに「小人探偵モンゴ」という、小人症患者の犯罪学者で、普段は趣味でサーカスに出ている、江戸川コナン君よりちょっと大きいくらいのタフな探偵がいる。世の中は広いのである。まあ日本にも渋柿伸介という掟破りにすごいやつがいるが。
    関連記事
    スポンサーサイト



    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    【1983年(14)】へ  【プロローグ】へ

    ~ Comment ~

    Re: マウントエレファントさん

    少なくとも「公」の部分で忙しいのはいいことですよ。

    まあのんびり気楽にいきましょう~。

    ご無沙汰です。

    ご無沙汰です。
    公私とも多忙で、ブログに向かえる時間がなく、長い留守になってしまいました。
    今後もよろしくお願いします。
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【1983年(14)】へ
    • 【プロローグ】へ