ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1983年(12)

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     「スター・ウォーズ」は正式にはタイトルを「デススター」といい、その名の通り、映画のクライマックスであるXウイングとYウイング編隊総計30機によるデス・スター破壊作戦と、それを阻止しようとする帝国軍のTIEファイター部隊20機の攻防をシミュレートした、小部隊同士の戦闘を扱う「戦術級」、もしくは一台一台の兵器同士の激突を扱う「戦闘級」に分類されるゲームである。プレイヤー数は2~8人。

     このゲームをおもちゃ売り場で見たとき、修也は、「8人まで遊べるなんてお得だ!」と思った。世を知らぬ浅はかな小学生が陥りがちな罠である。

     ツクダホビーの戦術級ゲームは、基本的にシンプルなルールを、恐ろしいほどの特殊ルールでモンスター級に膨れ上がらせてしまう、という傾向がよく見られた。

     このゲームもそれと同様だったらしい。正確には、こう考えるべきだったのだ。

    「なんでたかだかそれだけのゲームでプレイヤーが8人も参加する必要があるのか?」

     その答えは、このゲームに付属していた分厚い「記録表」の束が雄弁に語っていた。

     そう。このゲームは、基本的に反乱軍と帝国軍が交互に戦闘機を動かすオーソドックスなものであったが、直前の速度やマニューバーにより、機体の動きにさまざまな影響があり、すべてのルールを使用すれば、たかだか30機の戦闘機の管理をするのにプレイヤー4人が必要になりかねない、という凄まじいゲームだったのである。

     選択特殊ルールに、「R2-D2による機体の応急修理」という項目があったことからも、その緻密さと、「一見さんお断り」感が見えてくるだろう。

     小学生の修也が理解できるレベルの代物ではなかった。なにしろ、「加速度」というものがなんなのかもよくわかっていない小学生が、加速と慣性が支配する宇宙空間での戦闘を普通に処理できるか、考えなくともわかりそうなものである。

     かくして修也は「スター・ウォーズ」をあきらめた。

     残った選択肢は2つである。どちらも、ゲームの難易度を示す値は同じ、初心者向きゲームだった。

     「ウルトラマン」と「モスラ対ゴジラ」どっちを買うべきか?

     修也はどっちも欲しかったが、両方買うことは予算的に無理だった。

     考えに考え、悩みに悩んだ末、修也は「モスラ対ゴジラ」の箱を手に取った。

    「これください!」

     修也の始めて手に入れた大人向けゲーム。箱には「GAME for ADULT」と書いてある。修也はどこか身長が伸びた気分と、不安に押しつぶされそうな感覚を味わいながら、店員さんがレジでゲームを梱包してくれるのを見守るのであった。
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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    もともとマニアックになりがちなホビーですから(笑)。

    「モスラ対ゴジラ」を選んでほんとによかったと思ってます。なにせ放課後は怪獣のどつき合い大会になってましたから(笑)。モスラ対ゴジラ対ラドン対アンギラス対メカゴジラ対キングギドラ対ガイガン(笑)。流星人間ゾーンかよ(笑)。

    NoTitle

    あー、やっぱりそういう(^-^;
    もし買ってもらって自分がルールを把握できたとしても、一緒にやってくれる人が見つからないパターンだ……

    モスラ対ゴジラはこの前リプレイを載せてらっしゃったゲームですか?
    あれは楽しそうでした(^O^)

    NoTitle

    関ケ原は戦国ものでは最も人気があるタイトルで、バンダイもツクダホビーもエポック社も出していますね。

    もしかしたらそれは、磁石でコマがマップに張り付くものではありませんでしたか? (ほかのゲームは小学生が遊ぶにはかなり骨なのである) エポック社のEWEシリーズでも最良の作品と言われている名ゲームで、つい最近も専門誌の付録として再版されました。

    小学生ができそうなゲームでは、ほかにバンダイ関ケ原が、未見ですが、調べてみるとけっこうプレイしやすいゲームだったようですね。カードを使って戦闘をしたり、小早川秀秋の帰趨の決め方とかバンダイらしいアイデアです。

    中にはゲームの勝利条件が「小早川秀秋を味方に付けた側の勝ち」というお前それは割り切りすぎだろう、というゲームもあるようで……見たことはないですが(笑)

    まあ高校生が小学生相手に本気出してねじ伏せようとするのが悪い!(笑)

    Re: ECMさん

    「デススター」は、ツクダホビーのデザイナーがあまりにマニアックすぎたんです(^^;) ツクダホビーのゲームには、そういう、「細かくルールを作りすぎてデザイナーの自己満足にしかなっていないというか、ほんとにこれテストプレイしたのか?」と思えるゲームがけっこうあり、それがまた「味」になっていたという、くどいくらいにテストプレイしたゲームしか売らないアメリカのアバロンヒルという会社の社長が見たら卒倒するような代物すらありました。

    「モスラ対ゴジラ」と「ウルトラマン」はバンダイの製品で、特徴は「スケールがいいかげんでルールが荒っぽく、どこがどうシミュレーションしているのかすら謎なのに、モチーフとなった戦いの雰囲気を実感するという意味での再現性はものすごく高い」というものでした。初心者が選ぶのには最適だった、と今から考えても思います。その特徴ゆえにシミュレーション性のみを重視するゴリゴリのマニアからは嫌われたのか、比較的早くに撤退してしまったのが残念です。

    Re: LandMさん

    このころ、アダルトゲームといえば、女の子が脱ぐパソコンゲームではなく、チェスやドミノ、チェッカーといった、「大人が真剣になって遊ぶ、主に運より経験や技術がものをいうゲーム」のことを指していました。

    具体的なイメージとしては、国際犯罪組織の秘密基地で囚われの身になってしまった007ジェームス・ボンド(もちろんタキシード)が、犯罪組織のボスの部屋に連れてこられ、

    「ふふふボンドくん。君を処刑する前に、一度ゲームを手合わせしたいと思っていたのだよ。まあヘネシーでも飲んでくつろいでくれたまえ」

    などと不気味に笑う背後で、マホガニーのテーブルの天板が開き、下からウイーンという音とともに駒が並べられたゲーム盤がせりあがってきたときに、サマになるタイプのゲームです(わかりにくい……(笑))

    このころは、シミュレーションゲーム自体も、そうした、タキシード姿のジェームズ・ボンドがやってぴったりくるような、渋い大人のゲームとして売り出そうとしていたみたいです。

    今では大人のゲームというよりも一部の好事家、マニアのゲームになってしまいましたが(笑)

    NoTitle

    こんばんは(*'ω')

    実家に兄が高校生の時に買った「関ヶ原」というゲームがあります。
    ルールはそこまで複雑ではありません。
    小学生でも遊べます。
    実際自分も兄の対戦相手として散々付き合わされました。
    兄に勝った記憶はほとんどありません。

    NoTitle

     小学生には難しいゲームなんだろうなぁ。
     ルールブック読むだけでも大変で、プレイヤー同士が理解ルールを理解しなければならないし、地雷を踏んだかな。

    NoTitle

    ほう。
    この時代でもGAME for ADULTがあったのですね。
    難易度的に難しいということなのでしょうか。
    考えてみれば、昔のゲームは難易度が高いですから、
    そういうのも付け加えするのも優しさですね。
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