5 死霊術師の瞳(連載中)

    死霊術師の瞳 4-2

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     福島清親は化石のように身を硬直させていたが、ようやくいった。

    「ぼくにとって、きみは生きている家具なんかじゃ」

     林看護師の視線は小ゆるぎもしなかった。受け止め続けていられなくなったのか、福島清親は目をそらした。

    「家具じゃなかったら……なんなんですか! わたしは……黙っていればそれでいい、そんな女にすぎなかったんでしょう! わたしが生きていて、感情もあるだなんて、思ってもいなかったんでしょう! そうでしょう! そういってくださいよ!」

     福島清親はうつむいた。やがて、その口からひとことの言葉が漏れた。

    「……すまない」

     その謝罪は果たして林看護師を満足させたのだろうか、とわたしは思った。吐き出したいことを全部吐き出したのか、林看護師は肩を上下させて激しく息をついていた。

     わたしはそんな林看護師に指摘した。

    「失礼だが、わたしが質問したいことはまだある。答えてはくれませんか?」

     林看護師は、瞳にぎらっとした光を映していった。

    「何が聞きたいの?」

    「簡単なことだ。林さん、そんなあなたに接近してきた集団の話を聞かせてくれれば、それでいい」

     福島清親が顔を上げた。

    「接近? 集団?」

     林看護師はわずかに口を開けた。

    「何のこと。知りません」

     わたしは刺激を続けるつもりだった。怒らせないと口を割るまい。

    「さっきも見たが、美奈夫人はこうしてひと目でわかるほどに獣化している。普通の人間にできるようなことじゃない。アメリカやロシアの最先端科学でも駄目だろう。だが、わたしにはこういうことができる集団をふたつばかり知ってるんだ。そのひとつは十年も前に壊滅してしまったから、事実上残りはひとつ」

     林看護師はわずかにたじろいだように見えた。

    「林さん、あなたに『ユニオン』が接触してきたのはいったいいつのことなんだ」

     林看護師は、首をわずかに左右に振った。だが、わたしは逃げを許すつもりはまったくなかった。

    「『ユニオン』が、わたしの出所に合わせて、美奈夫人をこのような目に遭わせてしまえと、あなたに焚き付けたのはいったいいつのことだったんだ? そして接近してきたエージェントはいったいどんな人物だったんだ? そして、そいつは美奈夫人を獣と変える以外に、いったいどんな超常能力をあなたに与えたんだ? わたしはそれを知りたい」

     林看護師はかすれた声でいった。

    「聞いてどうなるというの」
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