東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ74位 闇からの声 イーデン・フィルポッツ

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     最初に読んだのは浪人中のとき。松戸の図書館にあったので読んでみたが、なんだこんなものか、というはぐらかされたような感覚があった。それもそうだ。「大トリックの炸裂する謎解き物に違いない」と思い込んでいたからである。冷静に考えれば、フィルポッツがそんな作品書くわけないじゃないか!

     創元推理文庫版を古本屋で見つけたので買ってみたが、マークも「スリラー・サスペンス」を意味する猫さんマークであった。しかし巻末の広告では「本格推理小説」のおじさんマークだったので、編集部でも混乱があったのかもしれない。

     というわけで、ある程度のことは理解したうえで、二十年ぶりに再読。感想だが、序盤こそイライラするものの、中盤以降、犯人が明確になってきてからの面白さはさすが古典、というだけあった。神のごとき名探偵ではないが行動力があるタイプのもと刑事と、狡猾極まりない犯人(まあまるわかりであるわけだが)が、チェスのような読み合い、心理戦を繰り広げるのが楽しくてたまらない。こちらがこうする、すると相手はこうくるだろう。それを避けるためにこちらはこうする。すると相手はこうくるに違いない。うむむ何と恐ろしい相手だ、というやつである。そして主人公である引退した名刑事のジョン・リングローズという男が、犯人と目したやつに対して地味に外堀から埋めていき、じわじわと真綿で首を締めるように迫っていくという実に恐ろしいやつなのであった。警察力を使うのではなく、たったひとりで、自分の経験と知識と推理から、相手に対して揺さぶりをかけて行くのである。犯人の恐怖はいかなるものか。

     個人的には、犯人と探偵の心理戦では、特に双方の相手に対するイヤミのかましかたに限ると、メイスンの「矢の家」のほうが凄まじさにおいて本作よりも上ではないかと思うのだが、「闇からの声」は「闇からの声」で、探偵の肉声を聞けるというところが「矢の家」よりもいくぶんフレンドリーであろう。こちらの手の内がわかっているだけ、安心して読める。

     タイトルにもなっている「闇からの声」だが……まあ最後には真相が明らかになるが……昔の人はそう細かいことにはこだわらなかったのだろう、きっと。だからそういうおおらかな気持ちで読むのが一番だろうと思われる。しかしまさかああいう形で本筋にからんでくるとは(ヒント:からまない(笑))。

     74位というのは少々評価しすぎのきらいがあるが、読んで損はないサスペンスの古典である。こういう文化は誰かが継承しなくてはならない、そんな気がする。
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    ~ Comment ~

    Re: 鍵コメCさん

    息子さんの合格おめでとうございます。

    受験生の時のことを思い出すと他人事とは思えなくて(^^)

    たぶんキャンパスの周囲には天才しかいないのではないかと思いますが、通れたということは息子さんもまたどこかに天才的なセンスを持っていたのだと思います。それを信じて悔いのない大学生活を過ごしてもらいたいものです。

    Re: 面白半分さん

    本格というよりは、味わいを楽しむサスペンスですね。

    じわじわと相手の首を絞めにかかるかのように捜査する名探偵がかっこいいですよ。こういうサスペンスを日本的かつ現代的にすると松本清張になるんじゃないかと思います。

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    NoTitle

    創元推理文庫で読んでいる筈です
    かつて持っていましたが売ってしまいました。
    全く覚えていません。

    でも継承すべき要素もあるんですね。

    そういわれると読みたくなってきますねえ
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