5 死霊術師の瞳(連載中)

    死霊術師の瞳 5-1

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     5



     余目はどこからどう見ても疲れ切ったサラリーマンに見えた。誰も、その貧相な体躯の下には鋼のような肉体があり、その気になったら胡桃でも指で割れるような人間だとは思いはすまい。初めてこの男と出会ったとき、どてっ腹に拳銃を突き付けられたわたしがそう思うのだからほんとうだ。

    「桐野。お前というやつはどうして、こういつもいつも厄介ごとばかり持ち込んでくるんだ」

     わたしは遥美奈だった肉体が運び出され、今はがらんとなった病室を見た。

    「坂元は、あんたに遥美奈の画像を見せなかったのか」

     余目は歯ぎしりした。

    「おれも見たよ。ひどいものだった。そうでもなければ、誰がお前をあの墓場から引っ張り出すことに賛成なんかするもんか」

     余目はわたしに向き直った。

    「だがな、おれはお前に、精神障害者をあとふたりばかりこしらえろ、などといった覚えはないぞ」

     わたしは目をそらせた。

    「わたしのせいじゃない」

     余目は許してはくれなかった。

    「誰もお前が直接の原因だとはいっていない。だが、お前の出所と、一人の女性が巨大なドブネズミに変わり、ふたりの人間が精神を病んで病院送りになったこととは正の相関関係がある。違うか?」

    「サンプルが少なすぎて相関関係を見出すのは不当だ」

    「なにいってやがる。最初に大野先生にお前を引き合わせた時から、ほぼ百パーセントの率で、尋常じゃない事件が起きているじゃないか。おれとしては、それ以上の証拠はいらん」

    「証拠がいらないとしたら、どうするつもりだ」

    「山火事の防火をする」

    「なんだよそれ」

    「破壊消防だ。直接の消火にはつながらなくても、これ以上の被害だけは防げる」

     わたしはかすかに笑った。

    「わたしを殺したってどうにもならないさ」

     余目はにこりともしなかった。

    「おれが破壊消防策をとらない最大の理由がそれだ」

     余目はスマホを取り出した。

     ちらっと見て、首を振った。

    「お前に頼まれていた例の件だが、空振りだったそうだ」

     わたしは舌打ちをした。

    「見つからなかったのか」

     余目はうなずいた。

    「七年の歳月が流れている。事務所を探したが出てこなかったそうだ。『闇は千の目をもつ』は誰かに盗まれてしまったらしい」
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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    整理整頓が苦手なので七年前に設定した資料が全部散逸してしまい、いま必死に善後策を考えているというウワサがごく一部で流れていますが、デマです。たぶん。

    NoTitle

    あの本も関係してくるのか……。いや、今思うとあの本が急に世に出たのもユニオンの仕業だったのかも?
    今までの物語がどうつながっていくのか楽しみにしています。
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