東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ82位 酔いどれ探偵街を行く カート・キャノン

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     おれか? おれは、なにもかも、書けなくなった、ブログ作家くずれの男だ。うしなうことができるものは、もうアカウントくらいしか、残っていない。

     もちろん、この書き出しは、都築道夫先生の訳した、この短編集の、イントロダクションを、もじったものだ。そして、この短編集には、人間に、そうしたもじりをやらせてしまう力が、ほんとうに、ある。

     この本には、新婚四カ月で、新妻に裏切られ、暴力沙汰を起こし、アル中の、ルンペンになった、もと探偵のはなしが、八編、収められている。アル中だが、頭が切れ、腕っぷしが強い、ハードボイルド小説にふさわしい男なのだ。どれもこれも、短いが、読み終えた後は、ずしりとくるような、重い話で、忘れ去られたのが、ふしぎでならない。

     高校からこのかた、何度読み直したか、わからない。おれは、この本は、もっと、上位にきても、いいのではないかと、おもう。82位というのは、どう考えても、不当だろう。

     都築先生が、この本を、訳したのは、1963年だ。だからもう、文章が古すぎて、時代に、あわないと、読者は、おもっているのかもしれない。

     だが、ちょっと待て、だ。作者の、カート・キャノン、87分署シリーズで有名な、エド・マクベインの、山ほどあるペンネームのひとつだけど、その、詠嘆調を、ここまで、哀愁をそそる、日本語として、訳しきったのは、おせじでもなんでもなく、日本の、翻訳史上に残る、偉業だと思う。鷗外訳の「即興詩人」が、単なるアンデルセンの原作の翻訳という枠組みを、踏み越えて、森鷗外の「即興詩人」という、作品としか、いえなくなっているのと、同様に、この、「酔いどれ探偵街を行く」も、都築道夫の「酔いどれ探偵街を行く」、という、古典として、永遠に、残すべきだと、おれは、思う。

     ついさっきも、場末の、サイゼリヤで、安いポテトを食べながら、ドリンクバーを、狂ったように飲んで、おれは、カート・キャノンの、身を焼くような、苦悩を、たっぷりと、感じた。がちがちの、ハードボイルドでありながら、意外と、ミステリとしての、基本は、忠実に、まもっているのだ。第一作の、「幽霊は死なず」から、きちんきちんと、「意外な犯人」を、読者の前に用意してくれる。その真相の、ひとつ、ひとつに、おれは、涙が出るような、思いだった。出会えた読者にとっては、発表年代も、作者も、どうでもいいだろう。これは、いまでも傑作なのだ。ミステリ界でも指折りの、こわもてのする、ハードボイルドなのだ。
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