東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ81位 A-10奪還チーム出動せよ S・L・トンプスン

     ←1984年(3) →哲人
     再版された早川版を四半世紀ぶりに再読。高校生のころに新潮文庫版を最初に読んだとき、それほど感銘も受けなかったので正直あまり期待はしていなかったのだが、読んでみると、もうこれが正統派B級冒険小説というか、やたらと面白いことにびっくりしてしまった。

     冷戦期、ソ連の影響下にある東ドイツのポツダムに置かれたアメリカ軍事連絡部から、ソ連側の妨害電波により誤誘導され不時着したパイロットをソ連側より早く回収するために東ドイツ国内を縦横無尽に自動車で走る「奪還チーム」という、「ただただカーチェイスがやりたいために書きました」と宣言しているかのような開き直った設定、フォード・フェアモント・四ドア・セダンのくせにターボチャージャーはじめこれでもかとばかりにフルチューンされている「奪還チーム」の専用車両と、当然のごとく追いかけてくるソ連側のBMW2002、メルセデス450SEL、そして攻撃ヘリMi-24ハインド。本格的にカーチェイスが始まる後半三分の一からはもうページをめくる手が止まらない。下手なアクション映画よりよほどスリルとサスペンスに満ち満ちており、「手に汗握る」という言葉がぴったりくる。そしてまったく重くならない。アクションまたアクション、危機また危機の連続をジェットコースターのように味わっているうちに小説は終わる。畢竟、エンターテインメント小説というのは、それだけでいいのではあるまいか?

     ときおり、無性にそういう小説が書きたいと思うときがある。ドラマも人物もなにもかもすっ飛ばし、荒野を猛スピードで車が突っ走り、興奮のうちに読み終えて後には爽快感だけが残るような小説。しかし、よくよく考えてみると、興奮と爽快感を味わうためには小説の代わりに「マッドマックス怒りのデスロード」のDVDが一枚あればそれでじゅうぶんなような気がしてきて、小説は夢のまた夢に終わる。

     なお、本書には、「サムソン奪還指令」「鉄血作戦を阻止せよ」「上空からの脅迫」と続編が出ている。のだが……浪人生時代に「サムソン奪還指令」と「鉄血作戦を阻止せよ」を読んだのだが……「サムソン」で「これは違うのではないか」となり、「鉄血作戦」でもうどうでもよくなって、「上空からの脅迫」は読まないでいいか、となってしまったのだが……今読めば違うのかもしれないなあ。もしかしたら早川文庫で続編の再版がされないのもごにょごにょ……。

     この本を読み直して、景山民夫のカーチェイス冒険小説の名作「虎口からの脱出」を再読したくなったけど、これ以上積読の本を増やしてどうする! やめろアマゾン! これ以上本を増やしたらアパートの床が抜ける!
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    ~ Comment ~

    Re: blackoutさん

    小説には小説で、映画だと1秒で終わってしまうシーンを、スピード感を保ったまま濃密にじっくりと描き出すこともできる利点もあり、まあどっちもどっちですね(^^)

    とはいえ、それを実行するには小説が神がかりにうまい必要がありますが。

    NoTitle

    見ている側に爽快感や興奮を与えるのは、やはり映像の方が長けているかなと思う今日この頃

    なので、そういうのを求めるなら、小説じゃなくて映像作品でも見てください、っていうスタンスで自分は小説を書いてますね
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