東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ90位 ジェゼベルの死 クリスチアナ・ブランド

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     高校に入ってしばらくの後、新刊本屋で平積みになっているのを見つけて迷わず買った。そりゃそうである。ミステリ渉猟のバイブルであるこの「東西ミステリーベスト100」において、そのトリックが「怖さ」の「極限」にあると絶賛されていたからだ。純朴な半可通の人間にそんなことをいったら期待するに決まっている。

     で、わくわくしながら読んでみた。読後の感想が、「え? クリスチアナ・ブランドって、『ジェゼベルの死』って、こういう話だったの?」という、正直いって「期待はずれ」なものだったのは自分でも意外だった。これが怖さの極限であったら、夢野久作「ドグラ・マグラ」のメイントリックなんかどうなるんだ、あっちのほうが千倍怖いぞ、と思ってしまったのである。

     今ここで二十五年ぶりに読み直して思った。クリスチアナ・ブランドのコックリル警部ものは、「恐怖」を書こうとしているのではないのではないか。ブランドはあくまでも「ブラック・ユーモア」でどこまで笑いを取れるかを挑戦しているのであり、この「ジェゼベルの死」では、その笑いのとり方が中途半端だったので「ブラック」の部分が強烈に思えるだけなのではないか。

     そう考えると、この作品は人の悪いジョークで溢れ返っている。伝説となっている、クライマックスでの「容疑者が全員、『自分が単独でやりました』と自白する」なんてシーン、笑う以外にどうしろというのだ。メイントリックなんて、これは怖がるより、「ブランド先生、あんたも好きねえ」とニヤニヤ笑うべきではないのか。

     前に38位「はなれわざ」のところでも書いたが、日本では、この「ジェゼベルの死」のメイントリックの持つまがまがしさが不当に高く評価されすぎていると思う。その観点から見ると、この「ジェゼベルの死」の90位という評価は、わたしには妥当なものではないかと思えるのだが。

     もっとも、九〇年代以降の新本格の台頭は、むしろ「ジェゼベルの死」的なものを追求しているのかもしれない。そうだとしたら、「ジェゼベルの死」は日本の風土に合った日本人好みのミステリなのだろう。「はなれわざ」の異国情緒は日本人にはピンとこないのかもしれないなあ。短編ミステリの名作「ジェミニイ・クリケット事件」も、一分の隙のない謎解きよりも、あの背筋が寒くなる結末のほうが高評価の原因なのかもしれないし、これは晩年の作品である「暗闇の薔薇」を読まなければならないだろうなあ。「クリスチアナ・ブランドらしくない」と評判の作品だけれど……。
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