「残念な男(二次創作シリーズ)」
    残念な男の事件簿(二次創作シリーズ)

    テリー・レノックスって柄じゃない

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     頭が痛かった。うっすらとした光を感じた。目を開けると、知らない天井が見えた。

     わたしは知らない部屋の知らないベッドで、着の身着のまま眠っていたのだ。起き上がり、どうして自分はここにいるのかを考えた。ダウンしたボクサーのように、カウント8でようやくまともに頭が動き出した。

     のろのろと起き上がり、わたしはベッドをセットしなおした。ベッドひとつとテーブルと鏡しかないところを見ると、客間ではないかと推測できた。テーブルの上には、わたしのサングラスが置いてあった。

     鏡を見た。日本人の肌の色と青い目を持った、あからさまに不審な中年男が、タキシードを着て突っ立っていた。

     わたしはサングラスをポケットに収めると、扉を開けて外へ出た。

     見も知らぬ男をベッドに寝かせて外出するような人間もいるまい。この家の主に会わなくては。

     何やら音がしていた。水道から水が激しく流れる音だと気づいた。金属がぶつかる音もしていた。長い人生でホテルの裏方をやっていた経験のあるわたしにはわかった。あれは設備の整ったキッチンで、誰かが鍋を洗っている音だ。

     わたしは音が漏れてくる扉の手前で立ち止まり、ノックした。

     音が止まった。

    「誰だ」

    「昨晩拾っていただいたものです」

    「ちょっと待ってろ」

     扉が開いた。白い服を着た男が立っていた。

    「右手のドアを開けろ。食堂がある。そこでテレビでも見てな」

     わたしはいわれたとおりにドアを開け、そのテーブルの末席に座った。

     リモコンがあったので、テレビをつけた。芸人が出ていた。わたしはチャンネルを変えた。芸人が出ていた。わたしはチャンネルを変えた。芸人が出ていた。

     わたしはテレビを消した。

     二日酔いの鈍痛が、まだ脳細胞をいじめている。わたしにとってはそのほうがよかった。失ったものが大きすぎたからだ。

    「待たせたな」

     男が部屋に入ってきた。その手には、食器が乗ったトレイがあった。

    「食いな」

     蜂蜜をかけたプレーンヨーグルトと、市販のスポーツドリンクだった。 

    「いただきます」

     わたしは頭を下げ、スプーンを取った。

    「夜道をサングラスかけて歩くなんて自殺するようなもんだ。なにがあったんだ。幽鬼のような面しやがって」

    「二十年連れ添った相手をなくしました」

     蜂蜜とヨーグルトはのどにするすると入った。

    「それだけであんな面になるのか」

    「わたしが殺したんです」

    「ずいぶんとわけありの人のようだな。名前は?」

     スポーツドリンクを飲み干し、わたしは名を名乗った。

    「あなたは?」

    「カイでいい」

    「食事をありがとうございます。お礼はあらためて」

    「気にするな」

     わたしは立ち上がった。

    「また来ます」

    「好きにしな」

     わたしは食堂を出た。そのとき、どこが玄関でどこにわたしの靴がしまってあるのかわからない、ということに気づいた。

     食堂に戻ってその旨を告げたわたしに、カイとかいうその男は、かぶりを振った。

    「残念なやつだな、お前……」
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    ~ Comment ~

    Re: ミズマ。さん

    ロビンがああいう最後を迎えることは細部を詰めたときから決めていまして、あとは「きっかけ」だけだったんです。

    この間のホワイトデーが、実に「絶好機」で。

    書いてみたら止まらなくなって。

    もうこの際だから救いと新展開をカイさんに求めよう、と。

    作者のわたしが何を書いても鬱になる精神状態でもう。

    というわけでこの男が天羅に属しているのか地祇に属しているのかそれともほかの血族なのか、もし天羅だったらカイさんもこの男も互いに相手の顔を見て「どこかで見たことあるぞ」と思わなかったのはなぜなのか、そこらへんを丸投げしたいと思います。

    今のわたしが設定するとこの残念なやつ、カイさんの家からも「敵や」いうて追い出されそうなんです(汗)

    NoTitle

    うわっ、うわわ、うわわわわ!!??

    え、いや、なんと言いますが、さっきまで(前回分読み終わったときまで)「ロビンちゃーーーん!!(;_:) ポールさんひどいよぉぉぉ!!」となってたのですが、まさかのコック降臨に私は右往左往して…いいんだすよね? え、だってカイさんでコックっつったら弊社のあのコックですよね、ねっ!?(錯乱)


    いやー、最近めっきりブログに顔を出していなかったらこんなことになっていて、ちょっとびっくり嬉しいにやにやが止まらず、狙い撃ちされて狙撃されてたのにかかわらず撃ち落とされたのがほぼ一か月後になってしまって、ポールさんには「ごめんなさい」としか言えません。ごめんなさい。
    いやー、でも、残念さん、もっと幸せでいいと思うんですけど! なんで、ロビンちゃん、なんでさ! ひどいよ!
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