映画の感想
「散り行く花」見た
ブログDEロードショー「感涙映画祭」2作目。あの「イントレランス」のグリフィス監督の作品である。
「恋愛もの」の「悲劇」で「泣ける」作品と聞いていたので図書館で借りたのだが、うーむ、これはなんというか、「悲劇」ではあるが「恋愛もの」ではないのではないか。広義の恋愛ものではあるが、「仲むつまじい恋人たちが」という映画では断じてない。どちらかといえば、フェリーニの「道」を彷彿とさせる、社会的に問題がある三人の男女が織りなす人間ドラマである。いや、フェリーニがこの映画からアイデアを得たんだろうな、きっと。
主人公は三人。ひとりは、中国から非暴力と愛に満ちた仏教の教えを伝えるための伝道師としてアメリカにやってきたものの、夢やぶれて今では阿片を吸い無気力な生活をしている雑貨屋の店員の東洋人。
もうひとりは、粗暴な性格で女と酒が大好きで中国人に差別意識丸出しのボクサー。
最後の一人は、ボクサーが取り巻きをしていた女のひとりに産ませた娘で、しじゅう虐待を受けていて笑い方さえも知らない少女(演じるのはリリアン・ギッシュだ、もちろん)。
この少女を演じるリリアン・ギッシュの演技が神懸かり的である。無声映画ならではのオーバーアクションなのだが、怯えることしか知らず、いつも父に殴られて、恐怖に満ち満ちた表情を、こんなに生き生きと演じる女優なんてリリアン・ギッシュくらいだろう。その恐怖をグリフィス監督は監督ならではのアップの多用で強烈なまでに描く。
あまりのボクサーの折檻から逃げ出した少女は、たまたま扉に鍵をかけ忘れていた東洋人の店に転がり込んで意識を失う。かねてから少女の美しさに気づいており、同情していた東洋人青年は必死で看護し、美しい衣服を着せ、食事を取らせる。このとき鏡を見せられた少女の「わたし……これがわたし?」という感じの表情の演技がまたすばらしい。リリアン・ギッシュ、妖精のように美しい。
生まれて初めて親切にされ、安らいだ顔で眠る少女を見て、青年が必死で理性を保ち、悪しき欲望と戦っていたりするころ、ボクサーのもとに密告者がやってきて、
「あんたの娘は中国人の家にいるぜ」
「なんだと! 許しちゃおかねえ。試合が終わったらそいつの家へ殴り込みだ!」
その後の壮絶きわまる展開についてはあえてここでは書かない。毛穴まで見えるようなグリフィス監督の過激なまでのクローズアップの演出といい、恐怖に駆られて泣き叫ぶリリアン・ギッシュの恐るべき演技といい、たしかにこれは百年先まで残してしかるべき作品だ。
とまあ、この映画は「恋愛」というよりは「DV」と「コミュニケーション不全」と「移民問題」という、百年前からアメリカ社会が直面している問題を正面から取り扱っているのだ。
「泣ける」映画というよりは、静かに、じわじわ、「現代社会ってこれでいいのか」と悲しくなってくる映画。
そういうのが嫌いなかたは、素直に本作における天使のようなリリアン・ギッシュを愛でましょう(^_^)
どうでもいいけど「シャイニング」で斧を握って襲ってくる狂気の父親の元ネタは、絶対この映画だ(笑)
「恋愛もの」の「悲劇」で「泣ける」作品と聞いていたので図書館で借りたのだが、うーむ、これはなんというか、「悲劇」ではあるが「恋愛もの」ではないのではないか。広義の恋愛ものではあるが、「仲むつまじい恋人たちが」という映画では断じてない。どちらかといえば、フェリーニの「道」を彷彿とさせる、社会的に問題がある三人の男女が織りなす人間ドラマである。いや、フェリーニがこの映画からアイデアを得たんだろうな、きっと。
主人公は三人。ひとりは、中国から非暴力と愛に満ちた仏教の教えを伝えるための伝道師としてアメリカにやってきたものの、夢やぶれて今では阿片を吸い無気力な生活をしている雑貨屋の店員の東洋人。
もうひとりは、粗暴な性格で女と酒が大好きで中国人に差別意識丸出しのボクサー。
最後の一人は、ボクサーが取り巻きをしていた女のひとりに産ませた娘で、しじゅう虐待を受けていて笑い方さえも知らない少女(演じるのはリリアン・ギッシュだ、もちろん)。
この少女を演じるリリアン・ギッシュの演技が神懸かり的である。無声映画ならではのオーバーアクションなのだが、怯えることしか知らず、いつも父に殴られて、恐怖に満ち満ちた表情を、こんなに生き生きと演じる女優なんてリリアン・ギッシュくらいだろう。その恐怖をグリフィス監督は監督ならではのアップの多用で強烈なまでに描く。
あまりのボクサーの折檻から逃げ出した少女は、たまたま扉に鍵をかけ忘れていた東洋人の店に転がり込んで意識を失う。かねてから少女の美しさに気づいており、同情していた東洋人青年は必死で看護し、美しい衣服を着せ、食事を取らせる。このとき鏡を見せられた少女の「わたし……これがわたし?」という感じの表情の演技がまたすばらしい。リリアン・ギッシュ、妖精のように美しい。
生まれて初めて親切にされ、安らいだ顔で眠る少女を見て、青年が必死で理性を保ち、悪しき欲望と戦っていたりするころ、ボクサーのもとに密告者がやってきて、
「あんたの娘は中国人の家にいるぜ」
「なんだと! 許しちゃおかねえ。試合が終わったらそいつの家へ殴り込みだ!」
その後の壮絶きわまる展開についてはあえてここでは書かない。毛穴まで見えるようなグリフィス監督の過激なまでのクローズアップの演出といい、恐怖に駆られて泣き叫ぶリリアン・ギッシュの恐るべき演技といい、たしかにこれは百年先まで残してしかるべき作品だ。
とまあ、この映画は「恋愛」というよりは「DV」と「コミュニケーション不全」と「移民問題」という、百年前からアメリカ社会が直面している問題を正面から取り扱っているのだ。
「泣ける」映画というよりは、静かに、じわじわ、「現代社会ってこれでいいのか」と悲しくなってくる映画。
そういうのが嫌いなかたは、素直に本作における天使のようなリリアン・ギッシュを愛でましょう(^_^)
どうでもいいけど「シャイニング」で斧を握って襲ってくる狂気の父親の元ネタは、絶対この映画だ(笑)
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- 「東への道」見る
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Re: blackoutさん
あの作品見てないんですよ……(^^;)
この映画は、どちらかといえば天童荒太の小説が扱うようなテーマですね。
恋愛よりもドメスティック・バイオレンスと、コミュニケーションの断絶のほうを強く感じた映画でした(^^)
この映画は、どちらかといえば天童荒太の小説が扱うようなテーマですね。
恋愛よりもドメスティック・バイオレンスと、コミュニケーションの断絶のほうを強く感じた映画でした(^^)
NoTitle
ネットで検索をかけてYouTubeでもみてみました。ネタバレも…
なんとも悲劇というか悲しい映画ですね。
リリアン・ギッシュ、なんとも演技が素晴らしい!
最近知った台湾映画「クーリンチェ」も何とも言えない映画です。
実際に起きた少年事件を題材にしたものですが
これも恋愛が絡んだ悲しい事件を引き起こすところは
「散りゆく花」に似たものがあります。
シャイニングは映画そのものより
ジャックニコルソンの斧を持って追っかけて来る顔が怖かった~(ーー;)
なんとも悲劇というか悲しい映画ですね。
リリアン・ギッシュ、なんとも演技が素晴らしい!
最近知った台湾映画「クーリンチェ」も何とも言えない映画です。
実際に起きた少年事件を題材にしたものですが
これも恋愛が絡んだ悲しい事件を引き起こすところは
「散りゆく花」に似たものがあります。
シャイニングは映画そのものより
ジャックニコルソンの斧を持って追っかけて来る顔が怖かった~(ーー;)
- #18564 えぐ
- URL
- 2017.04/14 21:36
- ▲EntryTop
NoTitle
この記事を見て、レオンを思い出しました
ええ、ナタリー・ポートマンとジャン・レノです
あれも恋愛といえば恋愛な気がしますが、ジャン・レノはナタリー・ポートマンの想いを受け取れてないですし、ゲイリー・オールドマンはむしろ犯罪者でしょ?的な感じですし、あれも、これでいいわけ?…いや、こんなもんだ、これでいいんだ、って思ったりします
※続き更新しました
自分の視点は、汚染された世界で生きる3人の人間たちを俯瞰している感じです
まぁ、ギャグや笑いをつけるのは映画やアニメに委ねればいんじゃない?って思ってるので、気の済むように、神への復讐と刺し違えを描くことにします
ええ、ナタリー・ポートマンとジャン・レノです
あれも恋愛といえば恋愛な気がしますが、ジャン・レノはナタリー・ポートマンの想いを受け取れてないですし、ゲイリー・オールドマンはむしろ犯罪者でしょ?的な感じですし、あれも、これでいいわけ?…いや、こんなもんだ、これでいいんだ、って思ったりします
※続き更新しました
自分の視点は、汚染された世界で生きる3人の人間たちを俯瞰している感じです
まぁ、ギャグや笑いをつけるのは映画やアニメに委ねればいんじゃない?って思ってるので、気の済むように、神への復讐と刺し違えを描くことにします
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Re: えぐさん
13歳の女の子を演じているリリアン・ギッシュが当時26歳で、さらにそれが違和感がない、というものすごさ(^^) 15年後、この映画のリメイクを作ることになったグリフィス監督は、役者選びの時、当時40代のリリアン・ギッシュに電話をかけ、制作会社からクビといわれたそうな。
今日は「東への道」を見ましたが、リリアン・ギッシュ、グリフィス監督にとっては「運命の女」だったんでしょうなあ。それが監督の悲劇のもとだったんだと思います。