映画の感想

    「東への道」見る

     ←海外ミステリ80位 ナヴァロンの要塞 アリステア・マクリーン  →そのむかし
    ブログDEロードショー「感涙映画祭」3作目。「グッド・モーニング・バビロン!」を見てからグリフィス監督作品がやたらと見たくなり、この「東への道」もグリフィス監督作品である。

    この作品、気になっていなかったわけではないが、135分のサイレント、ということでこれまで手出しをしていなかった。「散り行く花」でのリリアン・ギッシュの演技が衝撃的だったので、思い切って図書館で借りて見ることにした。ほんとうは、フランス革命を舞台にした「嵐の孤児」を見たかったのだが、渋い映画をやたらと揃えているわが図書館にも「嵐の孤児」はなかったのである。

    で、見た。

    ムチャクチャ面白い映画だった。よくあるパターンの波乱万丈のメロドラマにすぎないのだが、エンターテインメントとしてはこれまで見たグリフィス監督作品では最高。ラストシーンではやっぱり目に涙がにじんだ。自分で考えるより人情家なのかもしれない自分。

    二部構成で、第一部では、貧しい家に生まれた娘が、富豪の叔母を頼った先で(ここで叔母にドレスアップされるリリアン・ギッシュの美しいこと!)プレイボーイの悪い男に引っかかり、偽装結婚させられて、子供ができたところで男に捨てられ、その心労で母親も死に、逃れていった村で子供を何とか生むのだがその子供も病で失い、当時のアメリカのモラルとして「結婚もしていない若い女が私生児を生むなんて!」とその村も追い出され、行く当てもなくボロボロの状態で農場主の家に拾われ、小間使いとして雇われるまでの、「キャンディ・キャンディ」もハダシで逃げ出すような不幸のどん底への転落が描かれる。

    正直この第一部でおなかがいっぱいだったのだが、第二部の、その農場主の家での生活が描かれると、監督がほんとに描きたかったのはこっちではないかと思われるサービス満点の展開になるのだ。

    聖書を固く信じる頑固な農場主をはじめ善人ぞろいのこの家でよく働く小間使いとして気に入られた娘だったが、その家には客人としてあのプレイボーイの男も出入りしていたのだった。この家の次女を毒牙にかけんと狙っているのである。むろん娘にも気づくが「過去をばらされたくなければ黙っていろ」と、まあコテコテのひどい奴なわけだ。聖書を信じる頑固なモラルをもつ農場主に私生児を生んで死なせたことがバレたら、この家を追い出されてしまうのである。そんな娘に、農場主の長男が一目ぼれしてしまっていた。長男は切々と胸の内を娘に訴えるが、娘は「わたしは結婚してはいけない女なんです」と、その求愛を拒むのであった。なぜ拒まれるのかわからず悲痛に苦しむ長男と、運命に泣くことしかできない娘。そしてとうとうある冬の日、地元のキルティングクラブに、娘を追い出した村の共同住宅の管理人がやってきて、「あれは私生児を生んだ女です。家に置いていてはいけないわ」と村一番のおしゃべりに話す。そのニュースはまたたく間に農場主の耳にも入り、会食の席で、娘に「出ていけ!」と。外は猛吹雪。たまらず娘は真相をすべて語り、家から出ていく。娘が荷物を取りに部屋に戻ったと思った長男は、娘の部屋を執拗にノックして、思いとどまるように叫ぶのだが、ドアをたたき破ったとき、そこには誰もいなかった。娘は身ひとつで吹雪の中に行ったことに長男は気づく。ここからサスペンスフルな命がけの追跡が始まる。「国民の創生」でも見せたあのスリル満点の、カットバックを魔術のように操る追跡劇。聞いた話だが、なんでもマジで雪の日撮ったらしい。娘は当てもなく、吹雪にあおられながらよろけるように進む。追う長男。娘の名前を叫ぶ声が、サイレント映画なのにわたしにははっきり聞こえた。娘は氷の張った河にさしかかる。渡ろうとする娘。割れる氷。アメリカの河だからバカみたいにでかい。娘を載せた氷が、流氷となって川を流れる。気を失って、力尽きて倒れる娘。聞いた話だが、なんでもマジで流氷の上にリリアン・ギッシュを載せて撮ったらしい。グリフィス監督、やっぱり頭がおかしい(^^;) 流れる氷。見つける長男。長男は氷の上を跳ぶように渡り、何とか娘に近づこうとする。滝がどんどん迫ってくる。もうだめか、と思ったところで長男は娘を抱き留め、また流氷を跳ぶようにして岸に上がる。聞いた話だが、リリアン・ギッシュはこのシーンで、「助けに来るのがあと1分遅れたら死んでいた」と述懐しているそうな(笑) 氷の冷たさと川の水の冷たさで、リリアン・ギッシュはマジで凍傷になって一時的に手の指が動かなくなっていたそうである。グリフィス監督、ほんと頭がおかしい(^^;) 助け出されて手当てを受けた娘に、農場主は自分の狭量を詫びるのだった。あの悪党のプレイボーイは家から追い出される。そして最後は、登場人物たちの幸せな結婚式で終わり。135分もこの波乱万丈につきあうと、娘に感情移入して泣くなというほうが無理だ(^^)

    いやー、面白かった面白かった。やっぱりすごいなグリフィス監督。わたしが見たのは無着色フィルムで音楽もないバージョンだったが、これで音楽があったら迫力は段違いだろう。

    それにしてもリリアン・ギッシュという人はほんと素敵だ。「イントレランス」や「国民の創生」よりも、リリアン・ギッシュの魅力を味わうのなら「散り行く花」と「東への道」のほうがいい。

    ちなみに「イントレランス」で大借金をこしらえてしまったグリフィス監督は、すでにハリウッドの押しも押されもせぬスターになっていたリリアン・ギッシュを使うだけのギャラが用意できず、以降はリリアン抜きの映画しか撮れなくなる。どうも監督は、「リリアン・ギッシュを美しく撮る」ことに映画の情熱とエネルギーを得ていたらしく、一気にパワーダウンし、トーキーの波にも乗れず、アルコールに溺れ、最後はただひとり場末のホテルで看取るものもなく死んだそうだ。

    対してリリアン・ギッシュは、遺作となった「八月の鯨」に主演したとき90歳。

    ……「映画の父」グリフィス監督も化け物だったが、リリアン・ギッシュさん、あなたこそほんとのとんでもない化け物だよ。
    関連記事
    スポンサーサイト



    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    【海外ミステリ80位 ナヴァロンの要塞 アリステア・マクリーン 】へ  【そのむかし】へ

    ~ Comment ~

    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【海外ミステリ80位 ナヴァロンの要塞 アリステア・マクリーン 】へ
    • 【そのむかし】へ