東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ95位 中途の家 エラリー・クイーン

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     早川の「途中の家」バージョンを再読。読むのはこれで三度目になるが、面白くてまたも一気読みしてしまった。このミステリの魅力をいうのは難しい。まず、この小説がクイーンらしくよくできた謎解きミステリだということと、次に、この小説がクイーンにしては人間ドラマになかなか凝ってるじゃないか、ということの二点に共感できないと、この作品がクイーンの自薦ベスト3に入っている理由がわからないだろうからだ。

     この小説の魅力は、二重生活を送っていた男が、その身分を取り換えるための「中途の家」で殺された、というシチュエーションの面白さが第一に上がるだろう。「読者への挑戦」も入り、いかにもクイーンらしい「犯人を指し示す手がかりとは何か? また、その手がかりが犯人を指し示していることが分かるには、その手がかりをどう解釈するべきなのか?」という「手がかり探し」が謎の焦点となる。

     しかし、この小説の面白さ、魅力というのは、これまでの神のごときエラリー・クイーンならひと目で見破っていたはずのパターンを崩し、推理が未完成なうちに「小説上あきらかに無実なヒロイン」の裁判シーンに移り、その法廷での弁護側検察側双方の丁々発止のやりとりや、なにがなんでもそのヒロインを有罪にしてやらねばならん、とする相手側陣営の心根の醜さを細大漏らさず書き込み、「極限状態に置かれた人間のドラマ」として読者に提供しているところだろう。その部分が、今読んでも迫真性があって非常に面白い。この小説は手に汗握る法廷ドラマなのである。

     クイーン作品についてはいろいろとあるだろうが、やはり「ベストセラー作家」だったんだな、と思わせるリーダビリティの高い作品。

     それにしてもこの文春のベスト100、エラリー・クイーンが7作も入っているのか。みんな好きだったんだなクイーン。クリスティやカーよりも多いもんなあ。やっぱり80年代以前のファンのことだけあるなあ。

     しかし現在本屋で早川文庫の棚に行けば、目につくのは真っ赤な一団をなしているクリスティのコーナーであって、まあこれはなんだ、ポアロのドラマをがんがん流しまくったNHKやCS諸局といったテレビ局のパワーはやはりあなどれない、というか、デビッド・スーシェさんみたいな「絵に描いたようなポアロ」という役者に巡り合わなかった名探偵エラリーは気の毒、というか、まあなんだかんだいってもエラリー・クイーンの本って基礎的教養というよりは、人間の持つミステリ力を鍛えるための「ミステリマニア養成ギプス」だよね、というか……。
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    ~ Comment ~

    Re: miriさん

    自分のおすすめ作品を見てくれると嬉しいですね。うーむ、ケチらないでデジタルリマスター版があったらそれを買うべきだった……。

    Re: 面白半分さん

    まあ、エラリーの出てくる小説って、たぶん映画にしてもそれほど面白くもないだろうと思いますし(笑) いや、ファイロ・ヴァンスの「カナリヤ殺人事件」とか映画になっているからそうもいえないのか?

    前に神津恭介の「刺青殺人事件」が2時間ドラマになっていたときは、あまりの神津の情けなさに開始5分でテレビのチャンネルを変えた覚えがあります。ひどいにもほどがある代物で、誰が神津をやっていたか忘れた(笑)

    こんばんは☆

    take51さんが「アフリカの女王」の記事を
    書いてくださいました、お知らせいたします☆


    .

    NoTitle

    エラリー・クイーンと神津恭介は
    名探偵たちの中ではイメージが固定しにくいですね。
    はまり役の俳優や映像作品があまりなかった(かどうかはわかりませんが)んでしょうかね
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